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「」に対する検索結果が312件見つかりました

  • LOS 4 FLAMENCOS "LUZ Y SOMBRA"

    中原潤×JITAN.フラメンコライブ   (viernes, 30 de agosto 2024)   2024年3月8日(金)  銀座 王子ホール(東京)   写真/飯田利教 Fotos por Toshinori Iida 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko   フラメンコダンサーの持つ「光と影」という二つの側面をテーマとした、中原潤によるフラメンコ公演『LOS 4 FLAMENCOS "LUZ Y SOMBRA"』が上演された。  主役は4人の若手ダンサーたち。各々の個性や生きてきた背景は異なるが、それぞれに磨き上げてきた舞踊技術を武器に、群舞にソロにと素晴らしい舞踊を披露した。  オープニングは4人の群舞から。薄暗い舞台にエフェクトがかかったギターの音色が響き、幻想的な空間を演出する。  舞台の下手側に置かれた長椅子に 、片足を伸ばして座り込む鈴木。  そして客席の後方から、左右の客席通路を通って土方と中原が登場する。それぞれ手にしたハンドライトで壁や天井を照らしながら、舞台へ向かってゆっくりと歩いていく。舞台に上がるとそこに出水も登場、見守るかのように3人で鈴木を囲む。  4人の衣装は白黒のモノトーン基調で、照明の陰影の効果をより際立たせる。製作を担当したのは、自身も踊り手として活躍する河島ティヤナ。作品の世界観をより良く表現できるようデザインしたという。  有田が舞台に登場、力強い歌声が場内に響き渡る。そして3拍子、4拍子、5拍子と変化する音楽のリズムとともにボルテージも高まり、4人の踊り手の秘めた熱量が沸々と湧き出るような群舞として昇華される。  続いて中原のソロはティエント。有田の熱唱を全身で受け止め、感情が肉体を越えて溢れてくるような踊りに目を奪われる。  今回の舞台にギタリストとして出演した閑喜は、演奏のみならず編曲や作曲家としても活躍する新進気鋭のアーティストだ。軽やかにらららと口ずさみながら、斬新でいてどこか清涼感のあるギターソロを演奏。フラメンコの熱い空気を整えるような一曲となった。  土方のソロのガロティンは、ギター3人の伴奏のみの作品。上品でいながら色香も感じられ、華やかさの中に哀愁が漂うような踊りを魅せた。  下手側の長椅子に徳永兄弟とKANが座ると、ギターとカホンで熱いグルーヴの演奏を披露。場内から大きな拍手が起こる。続く出水のタンゴは、これぞ「タンゴの王道」とうれしくなるような溜めとノリの良い踊りを楽しませてくれた。  徳永兄弟のオリジナル曲「共鳴~resonancia~」では、閑喜の音や歌も加わり三人三様のギターの化学反応が起こる。KANのパーカッションソロも、完璧なリズム感で様々な音色を叩き出すプレイは圧巻の一言。  続く中原のソレアは、深い苦悩を湛えながらも美しかった。  中原と入れ替わりで登場した出水と鈴木によるブレリアは、フラメンコの醍醐味が詰まったワンシーン。それぞれのひと振りがまた見応えがあって楽しい。  徳永兄弟のオリジナル曲のロンデーニャから始まる、白の衣装の土方と黒の衣装の中原による、光と影の共演。土方から白木のバストンを中原が受け取る場面は、互いの想いが受け継がれるようで胸が熱くなった。  そして鈴木のソロはシギリージャ。その渾身の踊りは、壊れそうなくらいに全力を捧げていた。  最後の群舞はアレグリアス。中原と土方が左右から登場。二人の踊りはまるで会話しているみたいで、鏡写しのように息が合っている。そこに出水と鈴木も加わり、次々とフォーメーションを変えながらも阿吽の呼吸で踊り続ける。  人はこんなに自由に踊れるのか。もちろんこの本番までは、人知れず地道な努力の積み重ねがあったことだろう。その長い道のりの先に大きく花開いたこの一瞬に、静かな感動を覚えた。  ラストは仲間の愛を感じるシーン。鈴木を支えるようにハンドライトを手にした3人がその道筋を照らしながら、有田の歌に見送られて歩きだしていく。その場面は、仲間を見守り思いやるあたたかい優しさに満ちていた。  スポットライトに照らされて踊るダンサーの華やかな「光」の部分と、その裏側で自分自身の踊りを模索し葛藤する「影」の部分を表現したという今回の作品。この作品を通して、ミュージシャンとダンサーが互いにコミュニケーションを取り合いながら作り上げていく「フラメンコ」ならではの「人と人とのつながり」や「暖かさ」を感じてもらいたい、と中原はプログラムのあいさつ文で語った。彼のフラメンコに対する誠実な情熱は、確かに観客の心に伝わったことだろう。 [出演] ダンス:中原潤 JITAN.(鈴木時丹) 出水宏輝(Farolito) 土方憲人 ギター:徳永兄弟 閑喜弦介 歌:有田圭輔 パーカッション:KAN   >>>>>

  • Las tres fantasías

    《Flamenco fan LIVE》   (martes, 27 de agosto 2024)   長年のフラメンコ・アフィシオナード(愛好家)から、フラメンコまだ観たことない!という人まで、ライブの楽しさをリアルに体感してもらいたい――。 そんな思いから《Flamenco fan LIVE》を企画しました。 今回のライブは、元気いっぱいのGuapa(=美人さん)な3人の踊り手が登場! 劇場公演やタブラオ・ライブでも活躍する、今注目の若手ダンサー鬼頭幸穂さん、荒濱早絵さん、脇川愛さんと、素晴らしいギター演奏で踊りを彩るMasa el Brujoさん、伸びやかな歌声が魅力の根本めぐみさんが出演します。 若さ溢れるメンバーが繰り広げるワクワクするようなフラメンコの時間を、どうぞお楽しみください☆   なお、遠方にお住まいの方や当日来店が難しい方は、配信視聴で1週間お楽しみいただけます。 ◇ご予約サイトは こちらから https://tablaoesperanza.jp/live/20241025/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   Flamenco fan LIVE 「Las tres fantasías」  【エスペランサ presents Flamenco fan企画】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2024年10月25日(金) Open 19:00 Start 19:30 ショーチャージ ¥5,500 (1ドリンク+タパス付き) 配信視聴料¥2,000~ カンテ:根本 めぐみ ギター:Masa el Brujo バイレ:鬼頭 幸穂・荒濱 早絵・脇川 愛 ◎お申し込みメールアドレス↓   reserva@tablaoesperanza.jp   ご希望のライブの日・お名前・人数・電話番号 をメールにてご予約ください。 ※受付にて、現金でのお会計をお願い致します。 ※キャンセルのご連絡は前日までにお願いします。 ※当日キャンセルの場合は、チャージ代全額をキャンセル料として頂戴しております。 ご理解の程よろしくお願い申し上げます。 ◎ライブ配信申し込みURL ↓ https://tablaoesperanza.jp/esperanza-live/57077/ アーカイブ視聴は一週間後の11/1(金)の23:59 までとなります。 >>>>>

  • アーティスト名鑑 vol.2

    (miércoles, 16 de agosto 2023) スペイン在住30年以上、多数の一流フラメンコ・アーティストらとも親交のあるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子が、歌・踊り・ギターそれぞれの代表的アーティストらのプロフィールをピックアップ。過去の取材で撮影した写真や、チェックしておきたい動画などもご紹介します。 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze アントニオ・マイレーナ(カンテ) サビーカス(ギター) カルメン・アマジャ(バイレ) Antonio Ceuz García “Antonio Mairena” Mairena del Alcor, Sevilla 7-9-1909 - Sevilla 5-9-1983 アントニオ・マイレーナ 本名アントニオ・クルス・ガルシア 1909年9月7日セビージャ県マイレーナ・デル・アルコール生、1983年9月5日セビージャ没 深い知識、広いレパートリー。多くの歌い手たちのお手本とされ、現在に至るまで多くの信奉者を持つ。セビージャから東に21キロ、マイレーナ村の鍛冶屋の息子として生まれる。子供の頃から歌い始め、やがてプロとして各地で歌うようになりカルメン・アマジャの伴唱も務める。内戦後1941年初録音。まだSP盤の時代だった。タブラオや舞踊団で活躍しつつ、録音したレコードがラジオで流れるなどして名声が広まり、1962年“カンテの黄金の鍵”を受賞。以後、各地のフェスティバルなどで活躍するとともに、カンテについての本を共著で発表するなどした。弟二人(クーロとマノロ)も歌い手。 [動画] https://youtu.be/2hhrKnJZDmc カナルスール局の短いドキュメンタリー(スペイン語)。簡単にまとめてあります。 https://www.rtve.es/play/videos/rito-y-geografia-del-cante/rito-geografia-del-cante-antonio-mairena/1786710/ 伝説的フラメンコ番組『リト・イ・へオグラフィア・デル・カンテ』のマイレーナの回。ソレアやブレリアなど歌っている様子もあるのでおすすめ。 (写真)Programa de mano de gira por Japón 1967 日本公演プログラムより Agustín Castellón Campos “Sabicas” Pamplona, Navarra, 16-3-1912 - Nueva York, E.E.U.U. 4-4-1990 サビーカス 1912年3月16日パンプローナ生、1990年4月4日ニューヨーク没 ラモン・モントージャにはじまったフラメンコギターのソロ分野を発展させ、ニューヨークに長く住みフラメンコの国際化にも多大な貢献をしたギタリスト。芸名は幼い頃、空豆アバスを冠詞と縮小辞でラス・アビカスというのをサビカスと言ったことから。5歳からギターを弾き、2年後には地元の劇場で公演。10歳でマドリードに移り、フラメンコ専門店や録音などで活躍。内戦時に大西洋を渡り、中南米を経てニューヨークに。数多くの録音や公演活動で活躍。超絶技巧で世界的な名声を獲得。1967年6月に初来日、同年9月には30年ぶりにスペインへ。以後何度かスペインでも公演している。 [動画] https://youtu.be/ZdqBlQS11fQ 1986年のビエナルでの演奏。70代のはずだがしっかりとした演奏で聴かせる。 Carmen Amaya Barcelona 2-11-1918 - Bagur, Girona 19-11-1963 カルメン・アマジャ 1918年11月2日バルセロナ生、1963年11月19日ジローナ県バグール没 フラメンコの女王ともいわれる不世出の踊り手。力強い足技だけでなく歌も歌い、カスタネットもバタ・デ・コーラも得意とする。バルセロナで生まれ子供の時から父のギターで踊り一家を支え、劇場公演や映画にも出演するように。スペイン内戦時にアルゼンチンに渡り、その後メキシコなどを経てアメリカへ。ハリウッド映画に出演し、ホワイトハウスに招かれるなどもした。1947年スペインに帰国後もイギリス、イタリア、ドイツなどでも公演。1963年には映画『バルセロナ物語(Los Tarantos)』に出演。しかしその後まもなく腎不全のため亡くなった。妹たちも踊り手で歌い手やギタリストらと結婚し、踊り手カリメ・アマジャは妹の孫に当たる。 [動画] https://www.rtve.es/play/videos/imprescindibles/imprescindibles-carmen-capitana-carmen-amaya/3520017/ 彼女の動画はもちろん、肉声もふんだんに使われたドキュメンタリー(スペイン語) 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>

  • 新連載:アーティスト名鑑 vol.1

    (miércoles, 19 de julio 2023) スペイン在住30年以上、多数の一流フラメンコ・アーティストらとも親交のあるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子が、歌・踊り・ギターそれぞれの代表的アーティストらのプロフィールをピックアップ。過去の取材で撮影した写真や、チェックしておきたい動画などもご紹介します。 文・写真/志風恭子 Texto y fotos por Kyoko Shikaze カマロン・デ・ラ・イスラ(カンテ) パコ・デ・ルシア(ギター) アントニオ・ガデス(バイレ) (写真)Camarón en Marbella, 1987 ©︎Kyoko Shikaze José Monje Cruz “CAMARÓN DE LA ISLA” San Fernando, Cádiz 5-12-1950 - Badalona, Barcelona, 2-7-1992 カマロン・デ・ラ・イスラ 本名ホセ・モンヘ・クルス 1950年12月5日カディス県サン・フェルナンド生、1992年7月2日バルセロナ県バダローナ没 20世紀後半を代表する歌い手、カマロン。芸名は小海老という意味で、幼い頃金髪で色白だったため。イスラは誕生地サン・フェルナンドの昔の呼び名イスラ・デ・レオンから。鍛冶屋だった父を早くに亡くし子供の頃から歌って稼ぐようになり、1968年マドリードのタブラオ出演中にパコ・デ・ルシアと出会い、多くのアルバムを録音。伝統的なフラメンコから、現代的な要素が加わったものまで、声質、音程、リズム、深み、センス、何をとっても天才の名にふさわしい唯一無二の存在で、現代フラメンコの規範と言ってもいいだろう。 (写真)Camarón en Cádiz, 1989 ©Kyoko Shikaze [動画] アンダルシアの放送局、カナルスールが没後25周年に制作したドキュメンタリー(スペイン語)。初期の伴奏者でもあったギタリスト、パコ・セペーロや闘牛士クーロ・ロメーロらの証言のほか、ブレリアを踊っているところなど貴重な映像もたくさん収録されている。 カナルスールの開局記念番組のフィン・デ・フィエスタで、ブレリアを歌うカマロン。踊るはマヌエラ・カラスコ。後ろにはフェルナンダ、パケーラらの顔も見えるという豪華版。 https://youtu.be/3QplFMvUVCU 全編はこちらで視聴可能。 (写真)Paco en Málaga, 2007 ©︎Kyoko Shikaze Francisco Sánchez Gómez “Paco de Lucía” Algeciras, Cádiz, 21-12-1947 - Playa del Carmen, Quintana Roo, México 25-2-2014 パコ・デ・ルシア 本名フランシスコ・サンチェス・ゴメス 1947年12月21日カディス県アルヘシラス生、2014年2月25日メキシコ、プラジャ・デル・カルメン没 アマチュア・ギタリストの父の元、幼い頃から厳しくギターを学ばされ、14歳で2歳上の兄である歌い手のペペとともに初録音。舞踊団伴奏や歌伴奏と並行して、長兄ラモン・デ・アルヘシラスらとのギター・デュオでの多くのアルバム録音を経て、20歳でソロアルバムを発表。『二筋の川』のヒット、75年の王立劇場でのリサイタルを経てその名声は不動のものとなる。さらにジャズとの共演、フルートやベースなども取り入れたグループでの活動、ペルーの楽器カホンの導入(これにより世界的に普及)など現代フラメンコの礎を築き、神とも呼ばれる。芸名はフランシスコの愛称にポルトガル人の母ルシアの名前をつけて「ルシアのパコ」という意味。 http://www.pacodelucia.org (写真)Paco con septet en Vienne, Francia, 2000 ©︎Kyoko Shikaze [動画] https://youtu.be/IGHZMtTyIsQ 1993年セクステットとのテレビ番組出演時のもの。セクステットは当初パコを入れての6人だったが、のち、舞踊/カホンが加わりパコと6人、またギターや歌の人数が複数になる編成もあるが、便宜上セクステットといわれることが多い。 https://youtu.be/DepowTx0rdw 同じ番組でのアレグリアスのソロ。 (写真)Antonio Gades con Elvira Andrés en Teatro Maestranza, Sevilla 2001 ©︎Kyoko Shikaze Antonio Esteve Ródenas “Antonio Gades” Elda, Alicante, 14-11-1936 - Playa del Madrid 20-7-2004 アントニオ・ガデス 本名アントニオ・エステべ・ロデナス 1936年11月14日アリカンテ県エルダ生、2004年7月20日マドリード没 スペイン内戦後マドリードに移り、11歳から家計を助けるため働き始める。稼ぐ手段として舞踊を習い、高名な舞踊家ピラール・ロペスに見そめられ同舞踊団で活躍。1961年退団後は自らのグループ/舞踊団で公演、また映画『バルセロナ物語』にも出演するなどした。1974年に初演した『血の婚礼』は後にカルロス・サウラ監督の手により映画化され、『カルメン』『恋は魔術師』のフラメンコ三部作につながる。78年スペイン国立バレエ団初代監督を務めるが81年辞任。1986年『カルメン』来日公演で日本フラメンコブームを起こし、以後、没後に至るまでたびたび来日。寡作だが、細部に足るまで考え抜かれた名作の数々はガデス舞踊団だけでなく、クラシックのバレエ団などでも上演されている。 https://antoniogades.com (写真)2016年来日公演プログラム [動画] https://www.rtve.es/play/videos/imprescindibles/imprescindibles-antonio-gades-etica-danza/3042642/ ドキュメンタリー『舞踊の倫理』 https://youtu.be/5IS042DeGaA   https://youtu.be/FMeT0zJAhOs ドキュメンタリー『肖像』 いずれも貴重な映像が豊富で、舞踊家としてのガデスが俯瞰できるはず。 【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>

  • Manuela Carrasco -日本ファイナル公演2024-

    (viernes, 23 de agosto 2024)   2024年6月24日(月) ・25日(火) 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール 写真/北澤壯太 Fotos por Sohta Kitazawa 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko  圧倒的。それ以外に形容し得る表現があるだろうか。  2009年にイベリアが招聘して以来の、15年振りの来日公演。座席数700を超える東京・渋谷のさくらホールが、ほぼ満席に近い数の観客で埋め尽くされた。  子供のころから踊り始め、「バイレフラメンコの女王」として認められるまでに踊り手としての風格と存在感を備えたマヌエラ・カラスコの日本ファイナル公演が、2日間に渡り上演された。  昨年5月に最愛の夫であるギタリストのホアキン・アマドールが亡くなり失意と悲しみに暮れていたが、今年3月のフェスティバル・デ・ヘレスで素晴らしい舞台を見せ、観客から大絶賛を浴びた。  オープニングは、マヌエラのモノローグとともにスクリーンに映される過去の映像によるプロローグ。  そして始まりの曲はブレリア・アル・ゴルぺ。ペドロ・シエラの研ぎ澄まされたギターの響きが、一瞬で会場を包み込む。そこに公演直前に出演が決まった森川の美しいバイオリンが加わり、豊かなハーモニーを醸し出す。 紫のマントンをまとったマヌエラが登場、会場の全員が待ちに待った瞬間。その風格ある佇まいに、感動とともに魅入ってしまう。タニェの熱い思いが込められた歌を受け止め踊る場面は、まさにフラメンコに満ち溢れている。  特別ゲストとして出演したエンリケ "エル・エストレメーニョ”は、マラゲーニャを披露。慈愛に満ちた深く力強い歌声が場内に響き渡る。  ブレリア・フェステーラではルイス・ペーニャと、マヌエラの娘サマラ・カラスコがそれぞれの持ち味を楽しませてくれた。サマラは歌も踊りも素晴らしいがパフォーマンスも見事で、客席に向けての掛け合いがとても生き生きとして、彼女のエンターテイナーとしての素質も一級品だ。  もう一人の娘マヌエラ・カラスコ・イハは、凛としたアレグリアスを披露。踊る前に母マヌエラが娘にジャケットを羽織らせるシーンは、親から子へと伝統が受け継がれるセレモニーのようで、優しさに満ちていた。  最後の曲はソレア。大輪の花の刺繍が鮮やかなマントンを高く掲げ、舞台の奥からゆっくりと一歩ずつ踏み締めるように登場する。誇り高く堂々とした姿。エンリケが全身全霊を込めてマヌエラに歌いかける。華奢な足で刻むサパテアードは軽やかでいて力強く、万感の思いが込められているように思えた。  人の一生は長い。そしていつまでも同じままではあり得ない。移り変わる現実を引き受けながら、気高く舞台の中心に立つ姿には踊り手としての覚悟が見られ、それはマヌエラの生き様を写し出しているかに見えた。  カーテンコールは両日とも、観客のスタンディングオベーションで迎えられた。  フラメンコへの愛と敬意を大切に踊り続け、世界中のファンから愛される「バイレの女王」。その精神は娘たちに受け継がれ、それぞれの大輪の花を咲かせることになるだろう。 【出演】 バイレ: Manuela Carrasco (マヌエラ・カラスコ) Manuela Carrasco Hija (マヌエラ・カラスコ・イハ)   カンテ: Manuel Tañé  (マヌエル・タニェ) Zamara Carrasco (サマラ・カラスコ) ギター: Pedro Sierra (ペドロ・シエラ) パーカッション: José Carrasco (ホセ・カラスコ) フェステーロ: Luis Peña(ルイス・ペーニャ) バイオリン: 森川拓哉(恭敬出演) 特別ゲスト: Enrique “El Extremeño” (エンリケ "エル・エストレメーニョ”) 【プログラム】 Prólogo Bulería al Golpe Malagueña Bulería Festera Fandango Caña Alegría Bulería Festera Soleá   >>>>>

  • アーティスト名鑑vol.14

    (miércoles, 21 de agosto 2024)   スペイン在住30年以上、多数の一流フラメンコ・アーティストらとも親交のあるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子が、歌・踊り・ギターそれぞれの代表的アーティストらのプロフィールをピックアップ。過去の取材で撮影した写真や、チェックしておきたい動画などもご紹介します。   文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze *名鑑登場アーティスト一覧は こちらから ラファエル・ロメーロ(カンテ) ピラール・ロペス(バイレ) カルロス・モントージャ(ギター)   Rafael Romero Romero “El Gallina” Andujar Jaén9-10-1910 a Madrid 4-1-1991   ラファエル・ロメーロ 本名ラファエル・ロメーロ・ロメーロ 1910年10月9日ハエン県アンドゥハル生、1991年1月4日マドリード没 日本公演録音   一度聴いたら忘れない独特の味わい深い、渋い声を持った歌い手。地元で歌い始めたが主にマドリードで活躍。古いカンテを熟知し、ペリーコ・デル・ルナールの編んだ、フラメンコに携わる者必携の通称『ペリーコのアンソロジー』にも参加している。1955年フラメンコ舞踊団の一員として来日した最初のカンタオール。1988年4月には舞踊伴唱ではなく、純粋なカンテリサイタルのため来日、と日本のフラメンコにとっては重要な意味を持つ。そのカンテリサイタルは2枚のCD、およびVHSビデオで発売された。没後、日本のアフィシオナードによる募金で堀越千秋制作の記念像がアンドゥハルに建立された。 1955年フラメンコ舞踊団公演のプログラムから。 1986年12月マドリードで。左からチャト・デ・ラ・イスラ、ラファエル、ペリーコ・デル・ルナールII世、オスカル・エレーロ。エンリケ坂井氏率いるパルマ教室のツアーで行われた宴で。悠然かつ毅然とした佇まい、暖かな歌声を至近距離で聴くことができたことは本当に幸せだった。©︎ Kyoko Shikaze 堀越千秋によるラファエル・ロメーロの記念碑。今はコレデーラ・デ・カプチーノ、サン・ラサロ通りの向かい側。パブリージョ通りと交わるところの植え込みに設置されている。©︎ www.radioandujar.com   【ビデオ】 スペイン国営放送の歴史的フラメンコ番組『フラメンコの祭儀と地理』でのラファエル。ロンデーニャ、シギリージャ、カーニャ、ハレオなど広いレパートリーのごく一部だが、じっくり聞かせてくれる。 https://www.rtve.es/play/videos/musica-en-el-archivo-de-rtve/rito-geografia-del-cante-rafael-romero/5328278/#   東京公演のライブビデオ https://youtu.be/u5MSGfbZB2U?si=c2oiGTGXZTRMgnqL Pilar López Júlvez “Pilar López” San Sebastián 4-6-1912 Madrid 25-3-2008   ピラール・ロペス 1912年6月4日サン・セバスティアン生、2008年3月25日マドリード没 14歳上の姉でやはり舞踊家のラ・アルヘンティニータのもと、5歳ですでに舞台に立ったという早熟のスペイン舞踊家は姉と共にスペインだけでなくフランス、アメリカなどで踊り、1945年に姉が亡くなると自分の舞踊団で活躍。アントニオ・ガデスをはじめ多くの後進たちがそこから巣立っていった。1960年来日。その公演を観たことが小松原庸子や岡田昌己らがフラメンコを志すきっかけとなったというから、日本のフラメンコの歴史にとっても重要な一人。代表作にはスペイン国立バレエ団でも再演された『アランフェス交響曲』などがある。フラメンコでは映画『フラメンコの魔性と神秘』でのカーニャをあげておこう。 1960年日本公演プログラムの表紙。この公演には元スペイン国立バレエ団監督のナナ・ロルカやアントニオ・ガデスも参加していた。   【動画】 スペイン国立バレエ団によるピラール・ロペス振付のアランフェス。 https://youtu.be/I7JKrwGubh0?si=L-f6OxM73tgAi745   カーニャといえば、の『フラメンコの魔性と神秘』での舞踊。必見。 https://youtu.be/nVFQajZ6HoE?si=GETPtn7uGpjNpM9h 1970年のスペイン国営放送の動画。14分ごろからシギリージャを踊っています。全盛期ではないのが残念ですが貴重なビデオです。 https://www.rtve.es/play/videos/esta-noche-con/pilar-lopez/7052400/ Carlos García Montoya “Carlos Montoya”  Madrid13-12-1903 a Wainscott, Nueva York, Estados Unidos 3-3-1993   カルロス・モントージャ 本名カルロス・ガルシア・モントージャ 1903年12月13日マドリード生、1993年3月3日アメリカ、ニューヨーク州ウェインスコット没   ラモン・モントージャを伯父に持ち幼い頃からギターを弾き、最初は主に舞踊伴奏で活躍し、ラ・アルヘンティーナやビセンテ・エスクデーロ、ラ・アルヘンティニータといった歴史的な舞踊家たちも伴奏している。1933年にはパリで活躍した舞踊家テレジーナと初来日。最初に日本を訪れたフラメンコギタリストである。第二次世界大戦勃発でニューヨーク滞在が長引き、そこが安住の地となった。50年代からは主にソロで活躍。数多くの録音がある。1959年には2度目、62年には3度目の来日を果たしている。長年米国在住でソロ演奏をしていたせいかその演奏、リズム感覚には一種独特なところがあるが、フラメンコギターを世界に広めた功績は大きい。 1962年来日公演時のプログラム   【ビデオ】 1957年の演奏だそう。 https://youtu.be/NVBL7DtU3Cs?si=EtbTjPa3w3aYrmrg   【筆者プロフィール】 志風恭子(Kyoko Shikaze) /1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。   >>>>>

  • スペイン国立バレエ団来日公演

    (martes, 20 de agosto 2024)   6年ぶりの来日となるスペイン国立バレエ団による劇場公演が、来たる11月に東京・名古屋・富山・兵庫の4都市で開催されます。 東京公演では2種類のプログラムが用意され、Aプログラムは様々な世代の振付作品を揃え、華やかでダイナミックな群舞から女性舞踊・男性舞踊の作品も楽しめる多彩なラインナップ。Bプログラムはフラメンコからスペイン舞踊まで、古典作品や現代フラメンコの魅力が詰まった内容になっています。 総勢80名超のカンパニーによる、華麗で迫力ある世界最高峰のフラメンコ・バレエの世界を、ぜひ劇場でお楽しみください! [公式サイト] スペイン国立バレエ団 ( spain-ballet.com ) *最新情報はこちらもチェック!  https://miy-com.co.jp/ *「スペイン国立バレエ団」東京公演では、「文化庁 劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業」の対象公演として、 合計355名の子供の無料招待と、同行の保護者(19歳以上・親族に限る)は半額 で鑑賞できます。 詳しくはこちら↓ https://miy-com.co.jp/bne_kodomo/ 【スペイン国立バレエ団 2024年日本公演】 芸術監督:ルベン・オルモ 会場:東京文化会館 大ホール ◎日時:2024年 11月20日(水) 19時開演      Aプログラム 11月21日(木) 15時開演      Aプログラム 11月21日(木) 18時30分開演 Aプログラム 11月23日(土祝)13時開演      Bプログラム 11月23日(土祝)16時30分開演  Bプログラム 11月24日(日) 13時開演      Bプログラム *計6公演(Aプロ3公演・Bプロ3公演) ◎演目: Aプログラム「世代を超えて」〜generación〜 『リトモス』振付:アルベルト・ロルカ 『ハカランダ』振付:ルベン・オルモ (11/20,21夜) 『パストレラ』振付:アントニオ・ルス(11/21昼) 『サパテアード』振付:アントニオ・ルイス・ソレール 『ボレロ』振付:ホセ・グラネーロ 『グリート』振付:アントニオ・カナーレス Bプログラム「祈り」〜INVOCACIÓN〜 『インボカシオン・ボレーラ』振付:ルベン・オルモ 『ハウレーニャ』振付:ルベン・オルモ 『イベリア賛歌』振付:アントニオ・ナハーロ 『フラメンコ組曲~マリオ・マジャに捧ぐ』振付:マリオ・マジャ、ミラグロス・メンヒバル、アスンシオン•ルエダ“ラ・トナ”、マノロ・マリン、イサベル•バジョン、ラファエラ・カラスコ ◎チケット料金:全席指定・税込 S席=18,000円 A席 =15,000円  B席 =12,000円 C席= 10,000円   D席= 8,000円 〔チケット取扱〕 ・イープラス https://eplus.jp/bne2024/ (ファミリーマート店内) ・チケットぴあ https://w.pia.jp/t/bne2024/ セブンイレブン店内(Pコード:527-723) ・ローソンチケット  https://l-tike.com/bne2024/ ローソン・ミニストップ店内Loppi(Lコード:34145) ・チケットサンライズ 0570-077-020 (平日10:00~18:00) https://sunrisetokyo.com/ticket/ ・東京文化会館チケットサービス  03-5685-0650(10:00〜18:00 休館日を除く)      http://www.t-bunka.jp/ ※未就学児童は入場不可 ※演目予定は2024年8月10日現在。演目変更に伴うチケット代の払い戻し、公演日や券種の変更はお受けできません。 主催:朝日新聞社 サンライズプロモーション東京 MIYAZAWA&Co. 後援:スペイン大使館 インスティトゥト・セルバンテス東京 日本フラメンコ協会 問合せ:サンライズプロモーション東京  0570-00-3337(平日12:00~15:00) *チケットの取扱はございません 【全国公演】 11/17(日)14:00 オーバード・ホール(富山) 11/27(水)  18:30 フォレストホール(名古屋) 11/29(金)  14:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール(兵庫) >>>>>

  • ArtistaЯ ~表現者☆~ ep.8

    ep.8 田倉 京  Miyako Takura (lunes, 19 de agosto 2024) 写真家・大森有起が、今を輝くフラメンコ・アーティストたちの真の姿を写す 京ちゃんの凛とした目。 緊張感ある背中がとても美しかった。 作品撮りで九十九里浜へ行ったときのこと。 強烈な浜風で飛ぶ砂に目も開けられない。 やりたいことは沢山あるのに砂まみれで、 僕らは一体何と闘っているのか、ただ笑うしかなく... 気合いで生まれた写真はある意味秀逸。 子育て等で今は現場を離れている彼女ですが、 どこかでフラメンコの気を感じながら、 今の生活環境がいい栄養源になっている様子。 再び表に現れる日は来るのか、楽しみです。 「フラメンコと私」 どこにいて何をしていても フラメンコはいつもそこにいて どこで何をするかはいつでも自分次第 振り返ったら 10年近く舞台から離れていました フラメンコにワクワクする気持ちは変わっていない上、 日々の暮らしの中にもOLEな瞬間がたくさんあって、 離れていたはずなのにそんなに遠く感じていないのは フラメンコが日常生活から自然発生したアルテだということを、 もしかしたらごくわずかでも実感できたからなのかな、 なんて思えたからかもしれません フラメンコってなんだろう? あの輪の中に立つとしたら自分はどうしたい?などと おばあちゃんになっても飽きることなく探し続けていきそうです >>>>>

  • 棘の多い薔薇たち 〜Rosas Espinosas~ vol.8

    "Aflamencamiento  フラメンコは深化する" (sábado, 17 de agosto 2024)   2024年2月11日(日祝) Showレストラン ガルロチ(東京・新宿) ※公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団の令和5年度助成対象公演 写真/近藤佳奈 Fotos por Kana Kondo 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko    棘の多い薔薇たち――、なんともユニークなタイトルに惹きつけられた。  今回で8回目となるこの公演。12年前の初演から回数を重ね、その間にはコロナ禍に見舞われ舞台活動もままならない時期もあった。そうした苦しい経験をしたからこその強い想いが、この舞台に込められているという。  キーワードは「時代の*徒花(あだばな)」。ソロでは各自のコンセプトを大事にした作品作りに努めた。  オープニングは4人の群舞のガロティン。棘のある赤い薔薇をあしらった白の帽子に、衣装は赤・白・茶系のトーンで統一。本来ガロティンは明るい曲だが、物憂げなバイオリン前奏から始まり、息の合った群舞を披露するものの、どこか影のある空気を漂わせながら踊りは展開していく。  音楽はそのまま途切れることなく、次のミュージシャンソロへ。曲は、"Yo soy Maria…"の歌い出しで始まるアルゼンチンタンゴの名曲、アストル・ピアソラ作曲の「Maria de Buenos Aires」をフラメンコアレンジ。水落のカンテが曲の世界観を豊かに表現。バイオリン、バンドネオン、ギターとつながれていくそれぞれのソロも、美しい音色を楽しませてくれる。  荻村のソロはカンティーニャ。ミニー・リパートンの往年の名曲「Lovin' you」のモチーフが、音楽の随所に盛り込まれる。優雅で柔らかい踊りに、ちょっと小粋で強気な一面が表れているのも魅力的だ。  甘美なギターサリーダから深みのある曲の世界に包まれていく、塩川のタラント。有田の熱唱が踊り手の感情を高揚させる。品のある力強さや芯の強さを感じさせる踊りに、彼女の持ち味がよく出ている。  松田はボリュームあるバタ・デ・コーラで踊るグアヒーラ。大小のアバニコを巧みに操り、青年の凛々しさと繊細な身のこなしに目を奪われる。「星に願いを」や「シンデレラ」などディズニーの人気曲をアレンジした音楽が、踊りとともに夢の国へと誘ってくれる。  本田は気迫に溢れるシギリージャを披露。リベルタンゴをアレンジしたファルセータや、踊りにバストン使いを取り入れるなど、バリエーションに富んだ演出に引き込まれた。  エンディングはカーニャ。ジブリアニメ映画「ハウルの動く城」の挿入曲「人生のメリーゴーランド」をモチーフに、バンドネオンの金子主導で楽曲をアレンジ。紫の衣装で揃え、人生をメリーゴーランドに例えドラマティックな舞踊を展開。ラストは自分たちが生きている証を象徴する心臓の鼓動音とともに、舞台を締めくくった。  コロナ禍による逆境を創作のエネルギーに変え、自分たちだけのオリジナリティを追求した作品として昇華させた今回の舞台。どんな困難に見舞われようともくじけることなく、ひたむきに前へと進むしかない、そんなポジティブな強さも伝わってきた。  転んでもただでは起きない――、美しい薔薇も伊達に棘多めに咲いているわけではないようだ。 [出演] バイレ 荻村真知子、塩川朋子、本田恵美、松田知也 カンテ 有田圭輔、水落麻理  ギター 徳永康次郎 バイオリン 森川拓哉  バンドネオン 金子舞音(まいと) *徒花(あだばな)/①咲いても実を結ばない花。むだ花。②はかなく散りゆく花。③季節はずれに咲く花。など(出典:新村出 編「広辞苑 第五版」岩波書店) >>>>>

  • カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.39

    (lunes, 12 de agosto 2024) 文/エンリケ坂井 Texto por Enrique Sakai Joaquín el de la Paulaのソレアー②の別の例  今回もソレアー①の時にように、ソレアー②も別の例を取り上げます。  理由は前回書いたのですが、ひとつのエスティーロ(スタイル、型)が歌う人によって少しずつ、時にはかなり形を変える(フラメンコだから当然ですが)事で、ひとつの例を覚えるだけでなく他の例と聴き比べることで、そのスタイルのもとの姿がよりはっきり見えてくるからです。  スタイル②の別の例をあげると、ファン・タレーガのQué〈desgraciaíto〉soy(なんて不幸な俺!)、パストーラ・パボンのDile a tu〈mare〉que calle(あんたの母さんに黙れと言ってやりな)、アントニオ・マイレーナのHas de vivir con la pena(あんたは苦しみと共に生きなくちゃならない)、フェルナンダ・デ・ウトレーラのComo los judíos(ユダヤ人のように)、マノリート・デ・ラ・マリアの〈Desgraciaíto〉soy(不幸な俺)、あるいはA mí me sigue me sigue(俺のあとをついて来る)などなど…多くの例がありますが、マノリートのDesgraciaíto soyを例に取ります。  まずは歌詞から。 (Letra) Qué 〈desgraciaíto〉 soy, qué mala estrella me guía por donde quiera que voy.   (訳) なんて不幸な俺! どこへ行こうが悪い星が 俺についてまわるんだ。   ◎desgraciaíto ⇒ desgraciadito ⇒ desgraciado    詞の形は8音節から成る3行詩で、これは同じスタイルである限り変わらない。2行目の頭のquéは実際の録音からは聞こえてきませんが、本来はこれがないと8音節にならないので付けておきました。  直訳すると「どこへ行こうが俺には何て悪い星(運命)がついているんだ!」という事。    今回もプーロ系の歌い手なので2、3行目の繰り返しは無く簡潔にまとめています。  形を整えるよりは心の赴くままに本質となる部分を歌ったという感じですが、しかし誰にでも出来るというわけではありません。  前回と違うのは、1行目を1コンパスでまとめてしまわないで自由に伸ばして歌っている事で、歌い手の個性が強く出ています。 【筆者プロフィール】 エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール) 1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~34(以下続刊)。   ※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、 アクースティカ(https://acustica-shop.jp/) へお問い合わせください。(編集部)   >>>>>

  • 第33回フラメンコ・ルネサンス21「新人公演」

    (sábado, 10 de agosto 2024)   日本における新人フラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として1991年より始まった、一般社団法人日本フラメンコ協会が主催する「新人公演」。 33回目となる今年は、9月の平日3日間にわたり東京・中野にて開催されます。 バイレ(踊り)のソロ/群舞、カンテ(歌)、ギターと各部門に分かれ、この舞台のために技術や表現を磨いてきた出演者たちが一堂に会します。 会場での観覧チケットおよび収録映像の配信視聴チケットは、出演者からでも専用申込フォームからでも購入できます。 未来に活躍するフラメンコ・アーティストたちに、ぜひ大きなエールを届けてください! 《第33回/2024年フラメンコ・ルネサンス21「新人公演」》 【日程】 9月11日(水)開場18:00/開演18:30  カンテ部門  ギター・ソロ部門  バイレ・群舞部門 9月12日(木)開場17:30/開演18:00  バイレ・ソロ部門1日目 9月13日(金)開場17:30/開演18:00  バイレ・ソロ部門2日目 【会場】 なかのZERO 大ホール(東京、JR中野駅南口徒歩8分) 【チケット】 ◆会場観覧チケット  会員 4,000円/一般5,000円(自由席)・ 座席予約 2,000円 * チケット申し込みフォームはこちら *9/10(火) 15:00まで受付(以降のお求めは各日開演30分前より当日券を販売いたします) *出演者からは一般発売よりも早く、8月上旬~(予定)お求めいただけます。 *配信は9月21日(土)から10日程度を予定 ◆収録映像の配信チケット  会員2,000円/一般2,500円  (別途システム利用料がかかります) *9/6(金) 16:00 発売開始予定 *出演者からもお求めいただけます。 【第33回/2024年フラメンコ・ルネサンス21「新人公演」専用ページ】 https://www.anif.jp/event/shinjin/new_shinjin/33ticket.html >>>>>

  • 特集:立川フラメンコ2024

    (viernes, 9 de agosto 2024)   晴天に恵まれ初夏の陽気となったGW後半、今年で21回目となる立川フラメンコが開催されました。東京西部に位置するJR立川駅の南側地域の商店街振興組合らの主催・後援により開催され、毎年たくさんのフラメンコファンが集うこのフェスティバル。過去のコロナ禍では様々な困難を乗り越え、今年は4年ぶりにエリア内での飲食も解禁され、飲んで食べて踊って歌って、賑やかなイベントとなりました。 文・写真/金子功子 Texto y fotos por Noriko Kaneko ●イベントの華、路上セビジャーナス・パレード やはり注目は、毎年大勢のフラメンコ愛好家らが参加する、メインストリートすずらん通りでの路上セビジャーナス・パレード。フラメンコ教室やサークルなどの仲間たちと一緒に、色とりどりの衣装に身を包んで、ミュージシャンらによる生演奏を伴奏に、笑顔でセビジャーナスを楽しんでいました。 ◎セビジャーナス・パレードのファッションSnap特集はこちらから ●ライブのプログラムも充実 立川フラメンコでは、ライブステージの鑑賞は全て無料。セビジャーナス・パレードも行われるすずらん通りには特設ステージが設置され、そこでプロのアーティストらによるフラメンコライブや、実行委員会メンバーと子供たちによるオープニングライブが行われました。今年は全国フラメンコ学生連盟(FLESPON)によるライブステージも披露。大勢のお客様からはハレオ(掛け声)や拍手が上がり、熱い盛り上がりを見せました。 また、ライブハウスなど3か所の会場でも教室の生徒さんやサークルメンバーらによるフラメンコライブを開催。なかには入場するのに行列ができた会場もあるほどの盛況ぶりでした。 《スペシャルステージ「堀江朋子と仲間たち」》 踊り:福山奈穂美 島崎リノ 堀江朋子 高橋英子 歌:ダニエル・リコ ギター:尾藤大介 スペシャル・ステージ「堀江朋子と仲間たち」のフィン・デ・フィエスタ JRAウインズ立川A館でのライブステージ ライブハウスBABELでのライブ ●4年ぶりのカセタもオープン カセタ(Caseta)とはスペイン・セビージャの春祭りで並ぶ小屋のこと。 今年の立川フラメンコでは、エリア内の駐車場ビルの屋上にカセタ風の場所をオープン。ビールやドリンク、フード類を飲食してくつろぎながらライブを楽しむことができました。ステージエリアも自由参加で、生演奏でフエルガ(お祭り騒ぎ)を楽しんだり、あちこちのテーブルでは仲間同士で賑やかに談笑したりと、和やかな雰囲気に溢れていました。 【立川フラメンコ 2024】 [URL] https://flamenco-tachikawa.tokyo/ 主催:立川南口すずらん通り商店街振興組合 共催:立川南口いろは通り商店街振興組合 後援:立川市、立川市商店街連合会、立川商工会議所、(一社)日本フラメンコ協会、(一社)立川観光コンベンション協会、スペイン政府観光局、公益財団法人日本スペイン協会 協力:立川南口商店街連合会、JRAウインズ立川、東京都信用農業協同組合連合会、在日本大韓民国民団西東京地方本部、多摩都市モノレール(株)、大原簿記公務員医療福祉保育専門学校立川校、星槎国際高等学校立川学習センター、多摩信用金庫南口支店、立川フラメンコ倶楽部セビージャ、ほか >>>>>

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