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- ★フラメンコnews☆
昨年のメジャーデビューアルバム発売を記念するコンサートホールツアーを先日完走した、フラメンコギター・デュオ徳永兄弟がさらにパワーアップしたフラメンコライブを東京・大阪の2都市で開催します。 共演には注目の若手フラメンコダンサーや、各ジャンルで活躍する実力派アーティストらを迎え、音とリズムの白熱したバトルを繰り広げます。 魂ゆさぶる情熱的なフラメンコギターと、凄腕パフォーマーたちによる夢の競演をぜひライブでお楽しみください! 【徳永兄弟OCTET -NEO FLAMENCO-】 [日時]2023年6月23日(金) 18時開場/18:30開演 [場所]東京・紀尾井ホール [出演] 徳永健太郎(フラメンコギター) 徳永康次郎(フラメンコギター) 森田悠介(ベース) ラファエル・モイセ・エレディア(パーカッション) KAN(パーカッション) SARO(タップダンス) 中原潤(パルマ&ダンス) 鈴木時丹(パルマ&ダンス) [料金]全席指定 6,500円(税込) [予約]ローソンチケット、イープラス、CNプレイガイド、MITT TICKET [問]Mitt TEL:03-6265-3201(平日12~17時) ※コンサート情報はこちらへ 【徳永兄弟 NEO FLAMENCOⅡ】 [日時]2023年6月30日(金) 18:30開場/19時開演 [場所]大阪・あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール [出演] 徳永健太郎(フラメンコギター) 徳永康次郎(フラメンコギター) ラファエル・モイセ・エレディア(パーカッション) 中原潤(パルマ&ダンス) 鈴木時丹(パルマ&ダンス) [料金]全席指定 5,500円(税込)/ザ・フェニックスホール友の会価格5,000円(税込) [予約] イープラス、ローソンチケット、チケットぴあ、ザ・フェニックスホールチケットセンター、MITT TICKET [問]Mitt TEL:03-6265-3201(平日12~17時) ※コンサート情報はこちらへ
- 新・フラメンコのあした vol.2
(lunes, 3 de abril 2023) 文/東敬子 Texto por Keiko Higashi Foto por Merche Burgos Vídeo por Ballet Nacional de España https://youtu.be/7sICQWr3zeA 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は、去る3月8日の国際女性デーに公開されたスペイン国立バレエ団の動画作品についてご紹介します。 スペイン国立バレエ団 国際女性デー2023 『センブラモス・イグアルダ』 Ballet Nacional de España “Sembramos igualdad” Día Internacional de la Mujer 2023 先日3月8日、スペイン国立バレエ団より、一通のメールが届きました。 しかしそこには、特に何か説明があるでもなく、動画へのリンクと出演者の名前、作中に読まれるナレーションが記述してあるだけ。そしてその動画を見て、私はさすがだなと思いました。3分半ほどの短い作品でしたが、非常に意義のある、そしてある意味、予想を裏切る構成に、非常に心惹かれました。 皆さん、3月8日が「国際女性デー」と呼ばれていることを、知っていましたか。 1910年、デンマークのコペンハーゲンで行われた国際社会主義女性会議によって提唱されたこの「国際女性デー」は、1977年に国連によって3月8日と定められ、現在も毎年、世界各国で祝われています。 その一環として制作された今回の動画は、ステージに現れた同バレエ団現監督ルベン・オルモ扮するひとりの男性が、一輪の花を床に突き刺す場面から始まります。それに続く女性たちが、それぞれ手にした花を、想いを込め力強く床に突き刺し、その刺した花が風に揺れ、たおやかに咲き乱れるように空気を愛撫します。 「同等の権利、地位、尊厳をまもりたい」ならば一緒にと、皆が歩き出します。一輪の風に揺れる花も、集まれば美しい庭になるように。女性だけではなく、男性も入り混じり、それぞれが飾らない普段着で、様々な色やスタイルの靴で、同じステップを踏みます。そして最後に、男性と女性が手を取り合い、一輪の花を床に突き刺します。彼女は言います。「私たちに平等を」。そして男性が言います。「私たちはあなたの側に」。 短くシンプルですが、分かり易く的確に表現された作品だと思います。女性の権利をテーマにした作品の場合、往々にして女性だけが登場するものですが、予想に反し、ここでは男性も一緒に登場する。女性だけがその権利を主張するのではなく、男性も彼女たちの権利を守るために、その主張を共有していくべきであると言うメッセージが織り込まれていたこと、それは新しい着眼点であると共感しました。 また、女性・男性を超えた、1人の人間としての権利・尊厳をも訴えるそれは、ルベン・オルモ監督の問題意識の高さであり、鋭さだと感心しました。多様性を尊重しようとする現代のよりリアルな問題定義を感じさせました。そう、これは女性だけの問題ではない。それは私たち全ての人間が一緒に解決していく、変えていく、発展させていく問題なのです。 こういったメッセージ性の強いものは、深刻な表現に陥りがちですが、この作品は非常に美しく、強い芯を保ちつつも、最後には軽やかな味わいが残ります。そこも、非常にセンスが良いと感じました。 日本では、舞踊団は踊りというパフォーミング・アートを表現するだけのもの、という考えが一般的な世間の認識なのかなと思うのですが、ヨーロッパでは、アートを通して社会問題に取り組む・貢献する事は、その活動の一部だと考える文化があります。この舞踊団のような国立の団体であれば、そうする事に尚さら意義がある。 昨今ではSNSの普及で、より多くの人々にその活動を知ってもらう手段が増えました。今回の作品は、ただ皆んなが集まって動画を作ったわけではないのです。ちゃんと構成し、振付し、リハーサルもやって、完璧に演じ撮影された作品なのです。そうやって、利益に直結しなくても、社会の一員としての活動に、手間を惜しまない。それは必要なことであると思うし、日本の舞踊団やアーティストの方々にも、ぜひやって欲しい。そういう意識が門戸を広げ、また、世界とつながる、世界と想いを分かち合う術になると思うのです。 別に社会性が無くても良いんです。例えば国際ダンスデーでも良いし、フラメンコの日でも、何でもいい。芸術は個人的な表現手段にとどまらない、人々の心を一つに出来る素晴らしいものである。それをぜひ、実感し、共有して欲しいと思うのです。 【筆者プロフィール】 東 敬子 (ひがし けいこ) フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com を主宰。 >>>>>
- ★フラメンコnews☆
今年のプリメラ・フェスティバルは、カンテ&バタ・デ・コーラ祭り! 「カンテの一曲入魂」では、日本各地からカンタオール43名が集結。「バイレの一曲入魂」ではバタ・デ・コーラの達人と名高い踊り手8名による華麗な競演が楽しめます。 チケットは現在発売中で、出演者またはプリメラギター社よりお求めください。 聴いて楽しい&観て楽しい、ボリューム満点の2日間です! 【プリメラ・フラメンコ・フェスティバル2023】 『カンテの一曲入魂』 [日時] 2023年6月15日(木) 16:30開場/17時開演 [出演者43名] 阿部真 有田圭輔 石塚隆充 市川えり 井上泉 今枝友加 遠藤郷子 エンリケ坂井 大沢玉紀 大橋範子 大渕博光 織田洋美 柏山美穂 川崎さとみ 川島桂子 鞍掛和子 小松美保 近藤裕美子 齊藤綾子 三枝雄輔 佐々木紀子 佐野三晴 須田隆久 高岸弘樹 高橋愛夜 ダニエル・リコ チャチャ手塚 土井康子 永井正由美 永潟三貴生 濱田吾愛 笛田剛史 福田加弥子 許有廷 松橋早苗 マヌエラ・ナランヒータ 三澤敦子 水落麻理 室田恵 元井祥雄 森薫里 吉田光一 レイコ・シミズ・サンギット 『バイレの一曲入魂 バタ・デ・コーラ夢の競演』 [日時] 2023年6月16日(金) 18:30開場/19時開演 [バイレ]井口裕香里 石井智子 井上圭子 EL CAYO池本佳代 片桐美恵 公家千彰 里有光子 林順子 [ギター]鈴木淳弘 尾藤大介 山﨑まさし [カンテ]大渕博光 川島桂子 永潟三貴生 笛田剛史 水落麻理 [パルマ]伊集院史郎 [バイオリン]三木重人 [会場]こくみん共済coopホール/スペース・ゼロ(東京・新宿) [問・予約]プリメラギター社 Tel.090-8948-3449 Email:primera-chico@navy.plala.or.jp
- 特集:第27回ヘレスのフェスティバル/フラメンコの多様性
(domingo, 26 de marzo 2023) 文/志風恭子 texto por Kyoko Shikaze 今年も2月24日から3月11日までの16日間、ヘレスのフェスティバルが開催されました。2020年のフェスティバルの頃から感染拡大が話題になり終了後すぐにスペインは外出禁止になりました。翌年は開催時期を2月から5月に変更して開催したものの、海外からの参加は、あっても欧州内で、それでも帰国時にはPCR検査が義務だったりしました。21年は2月開催に戻りましたが、まだ日本は渡航自粛を呼びかけていたこともあって、日本をはじめとするアジア、そして南北アメリカからの参加はほとんどありませんでした。感染状況も落ち着き、スペインの入国制限も撤廃、公共機関でのマスク義務も無くなった今年、ようやく世界中からフラメンコを愛する人々がヘレスに再び集うことができるようになったのです。 開幕は国立バレエ 開幕はスペイン国立バレエ団『エル・ロコ』、2004年に初演された作品で昨年12月マドリードにて再演されたもので、フェスティバルの初代監督パコ・ロペスの原案、台本、演出、ハビエル・ラトーレの振付。ハビエルは関係者限定だった第1回から今まで毎回欠かさず短期クラスの講師を務めている唯一の存在。ということもあってか、初演時にもヘレスで上演されたこの作品がまたビジャマルタ劇場に帰ってきたのも当然のことかもしれません。ダンサーたちの技術レベルの向上、また構成や振付の見直しの成果もあって、よりわかりやすく、より完成された作品となっていたと思います。 © Festival de Jerez/Esteban Abión ビジャマルタ劇場公演 40人以上が舞台に立つ、国立バレエのような大所帯の翌日は、踊り手はたった一人というヘマ・モネオの公演でした。踊り手一人という作品は他にもあって、ビジャマルタ劇場公演ではエドゥアルド・ゲレーロ、オルガ・ペリセ、マリア・ホセ・フランコ、マリア・ホセ・フランコがそうでした。さらに言えばパウラ・コミトレとエバ・ジェルバブエナの共演者はコンテンポラリーダンサーだし、ピニョーナとイスラエル・ガルバン、マリア・デル・マルの共演ダンサーは一人だけだし、少人数で、主役が踊りまくる公演が多かったように思います。コロナ禍で人との交わりが減ったせい? 経費削減? 実際問題、大人数は移動等の経費もかかるし、地方公演も行いにくいという点があるのだろう。それでもラファエラ・カラスコ、マリア・パヘス、パトリシア・ゲレーロが舞踊団での公演を続けているのは素晴らしいと思います。 © Festival de Jerez/Tamara Pastora 中でも作品のクオリティという点で、ラファエラの作品『ノクトゥルナ』は群を抜いていました。昨年のビエナルでの初演よりパワーアップし、とにかく美しいのです。動きも、静止も、音楽も、照明も、コンパスとのやりとりも、レマーテも。振付家としてのラファエラは語彙が豊かで一つとして同じ振りがないという感じ。ニュアンスの付け方やちょっとした身体づかいでより雄弁に語りかけてきます。イスラエル・ガルバンとはマリオ・マジャ舞踊団仲間ですが、最先端のイスラエルとはまた違うアプローチで、フラメンコの地平を拓いていっているという気がします。 白髪をそのままにしたマリアはマリア・パヘスを演じているというか、かつての自分をなぞっている感じ。自らのスタイルを確立したからこそ、なのではありますが、かつての勢いや新しい試みなどは影を潜めているような気がしました。作品としての完成度で目を引いたのはエドゥアルド・ゲレーロ。コンテンポラリーのダンサーを共同演出に迎え、照明で作る空間の見事さや音楽の素晴らしさは特筆ものでした。またオルガ・ペリセもコンテンポラリーぽいオープニングには賛否両論あったようですが、男装でのファルーカが絶品だっただけでなく、カスタネットやボレーラのパソなども見せ、舞踊家としての実力をナチュラルに、改めて感じさせてくれました。 © Festival de Jerez/Tamara Pastora © Festival de Jerez/Esteban Abión フラメンコの自由、自由なフラメンコを常に指し示すイスラエルの『セイセス』はイスラエルによる生まれ故郷セビージャへの愛憎入り乱れたオマージュ。最高傑作ではないが、彼ならではのコンパス感、ユーモアで楽しませてくれました。一方、伝統派というのか、ヘレスの二人、マリア・ホセ・フランコとマリア・デル・マル・モレーノは、共演者で新味を出そうとするものの、踊り自体は今まで通り。見慣れたものが見たい人にはいいのかもしれません。 © Festival de Jerez/Tamara Pastora そのほかの公演 ビジャマルタ劇場以外での公演は今回、あまり見ることができなかったのですが、日本公演が好評だったヘスス・カルモナ『ゲーム』、ダビ・コリア『ロス・バイレス・ロバードス/ワーク・イン・プログレス』が印象に残りました。二人とも抜群の身体能力! 国立やラファエラ・カラスコ舞踊団などの若手たちも彼らに続くようなテクニックなのですが、そこから自分のスタイルを、個性を発揮して、ヘススやダビのような存在になるには時間がかかるかもしれません。そういえば二人とも国立バレエ出身ですね。 © Festival de Jerez/Esteban Abión 日本人の活躍 2011年『ラ・セレスティーナ』でヘレスのフェスティバルに初登場した小島章司。その後、『ファトゥム』、「中国人には歌わない」、『フラメンコナウタ』、『ロルカxバッハ』とビジャマルタ劇場での公演を続けてきましたが、今回はスペイン以外の国出身のアーティストが主役となる公演シリーズ『デ・ラ・フロンテーラ』の一環としてアタラジャ博物館での公演。『フラメンコナウタ』で共演したメキシコやブラジル出身らの踊り手たちとタイトル通り『トダ・ウナ・ビダ(一生)』をフラメンコに捧げた小島へのオマージュのような公演でした。長年の仲間であるギタリスト、チクエロや歌い手ロンドロ、そして今回は踊りのソロも披露した今枝友加らのサポートも万全で、80歳を超えたとは思えないサパテアードを聞かせ、最後は観客全員でのスタンディングオベーションとなりました。 © Festival de Jerez/Esteban Abión またフェスティバルに先駆け行われたイタリア、トリノから始まったフラメンコ・プーロ国際舞踊コンクールでは、ソリスト/ノンプロ/シニア部門で相坂直美が優勝、押野由紀子が準優勝、ソリスト/プロ/アダルト部門で瀬戸口琴葉が優勝、土方憲人が3位、ソリスト/プロ/シニア部門で宇根由佳が優勝するなど大躍進。相坂、瀬戸口、宇根はフェスティバルのプログラムとして行われたガラ公演にも出演しました。また公式プログラムではないですが、ライブハウスで行われたオフ・フェスティバルやタバンコと呼ばれるバルでの公演にも多くの日本人が出演しました。またオフ・フェスティバルやタバンコには他にもスペイン以外の国出身のアーティストが出演していました。 ©︎ Concurso Internacional de Baile Flamenco Puro Enrico Manzana 伝統、古典、ネオクラシコ、モダン、コンテンポラリー、前衛…フラメンコにはさまざまなスタイルがあり、フラメンコはさまざまなバックグラウンドを持った人が自由に自らを表現できる、無限の可能性を持ったアートだということを改めて感じさせてくれたフェスティバルでした。それにしても、こんなにたくさんの全く違った個性を持った才能が、百花繚乱、咲き乱れているフラメンコ舞踊、そしてスペイン舞踊はまさに黄金時代なのではないでしょうか。来年のフェスティバルも楽しみです。 【各公演のダイジェスト動画】 国立バレエ『エル・ロコ』 https://vimeo.com/802157433 ラファエラ・カラスコ『ノクトゥルナ』 https://vimeo.com/802499367 小島章司フラメンコ国際舞踊団『トダ・ウナ・ビダ』 https://vimeo.com/803638411 オルガ・ペリセ『ラ・レオナ』 https://vimeo.com/804936245 イスラエル・ガルバン『セイセス』 https://vimeo.com/806135111 マリア・デル・マル・モレーノ https://vimeo.com/807141660 【筆者プロフィール】 志風恭子/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>
- クラス訪問:第1回 スタジオ・カスコーロ/カンテ・クラス
(martes, 21 de marzo 2023) 文・写真/金子功子 Texto y fotos por Noriko Kaneko 世界第2位のフラメンコ人口を誇るといわれる日本には、実にたくさんのフラメンコ教室があります。でも、教室で習ったことがない人や、また習っていても自分が通う教室以外では、クラスの雰囲気やどんなレッスンが行われているとか、未知の部分も多いのではないでしょうか。 そこで、ちょっと気になるアノ教室におじゃまして、実際にクラスの見学取材をさせていただこう!とこの企画を立ち上げました。 記念すべき第1回目は、東京は池袋の1駅先、要町にあるスタジオ・カスコーロ。カンタオール(歌い手)でギタリストのエンリケ坂井さんと、奥様のバイラオーラ(踊り手)佐藤佑子さんが指導する老舗のフラメンコ教室です。 今回取材させていただいたのは、月曜の夜に行われているカンテ(歌)のクラス。レッスンは月2回で、生徒さんたちはクラス歴20年以上というベテラン揃い。本当にカンテが好きな人たちが、ずっと続けて習っているといいます。 クラスが始まると、自然にみんなでパルマを叩き始めます。曲はタンゴからスタート。パルマの輪の中で、まず一人目の生徒さんが1曲歌います。何を歌うかはお任せ、でも次の生徒さんは同じ曲がかぶらないように違う歌を選んでいきます。もちろん、エンリケさんも歌います。ひとり歌い終わる毎にパルマもきちんと締め、でもコンパスはずっと回り続けパルマも続いていきます。コントラやレマーテも、ここぞというポイントでしっかり入ってくるので、そこはさすが専科のカンテ・クラス。授業なのになんだかフィエスタみたいで、楽しい。 タンゴで全員が一巡すると、次はブレリアでのカンテ・リレー。同じ順番でまた一人ずつ歌っていきます。でも、だいたいの曲が皆さんご存じで一緒に歌っているので、ずっとほぼ合唱のよう。そして歌いながら足も打ち、パルマも低音(ソルド)から高音(セコ)へと自在に打ち分け、そして歌が抜けたらまた低音に戻って、とずっと曲が続いていきます。 カンテ・リレーはその後セビジャーナス、ファンダンゴ・デ・ウエルバと続き、さらにカンティーニャ系、ソレア系のカンテも同じように歌い繋いでいきます。ここまでで40分くらい。カンテ入門者にとってはなかなか濃密な時間ですが、生徒さんたちにとっては喉慣らしのウオームアップといった感じでしょうか。にしても、皆さん本当にレパートリーが豊富です。 ウオームアップが終わると、レッスンの時間となります。前回のクラスでもらった楽譜を元に、全員で斉唱します。この日の最初の曲はロマンセ。クラスで配られる楽譜は、エンリケさんが耳コピして五線譜に自ら書き起こしたものです。エンリケさんは伴奏しつつ、歌い方を説明したり改善点を指摘してくれたりします。この日は他にも、セビジャーナスやカンパニジェロの歌をレッスンしました。 クラスが1時間くらい過ぎたあたりで、休憩タイムに。取材に伺ったのがちょうどバレンタインデーの前日だったので、プレゼントやお土産を配り合ったりおしゃべりしたりと和やかに過ぎていきます。 クラス後半が始まると、昔の音源のルンバを聴かせてくれるということで、約半世紀前の1970年代、その頃からルンバ専門のグループが出てきたという時代の音源を聴き、それを録音させてくれました。エンリケさんは、カンテを学ぶには「当時の質の良い音源を聴かないといけない」と強調します。 そして、その日の「当番」として選ばれていた生徒さんが前に出て、エンリケさんの伴奏でカンテ・ソロを歌います。曲は、古くから歌われる有名なブレリア『Camino de Jerez』。ソロの歌唱にも、エンリケさんの細やかな指導が入ります。 クラスは引き続きレッスンへ。歌い方が難しい箇所を指導してもらいながら、ギター伴奏に合わせて全員で歌います。ルンバ、ブレリア、ソレア、タンゴ・デ・ハエンと、様々な曲が続きます。また、最近始めた曲だというカナレーハのファンダンゴは、歌詞の訳や意味を解説したり、メロディーを1音ずつギターで弾きながらレッスンしていきます。フラメンコのカンテは音の動きが細かいし、音程も全音や半音で割り切れない難しさがあるけれど、大切なのは「メロディーを覚えること」だと教えていただきました。 たくさんの曲種を聴いて歌ってパルマも叩いて、本当にたっぷりカンテを浴びた2時間のクラスでした。入門者レベルの私では、クラスに参加する前に「予備校とかないのかな…」とひるんでしまいますが、すでにカンテを楽しんでいたりもっと深めたい!という方にはぜひオススメのクラスです。 満足度はきっと100%超えでしょう。 【教室データ】 スタジオ・カスコーロ [フラメンコ舞踊] 佐藤佑子 [ギター・カンテ・カンテ伴奏] エンリケ坂井 東京都豊島区要町2-1-19 Tel.03-3959-4471 >>>>>
- 東北" 2 Mi amada tierra TOHOGU 2
中田佳代子フラメンコ舞踊公演2022 (domingo,19 de marzo 2023) [大阪公演] 2022年10月2日(日) 世界館 [東京公演] 2022年10月7日(金) 野方区民ホール 文/金子功子 Texto por Noriko Kaneko 写真/Takahiro Fujiwara Foto por Takahiro Fujiwara 2021年暮れに岩手と東京で上演され好評を博した、中田佳代子フラメンコ舞踊公演『東北゛』。今回はその再演として、大阪・東京の2か所で開催された。 日本人として東北の地に生まれ、現在はスペイン人フォトジャーナリストの夫と息子と共に家族でバルセロナに暮らし、2つの文化とともにフラメンコダンサーとして生きる中田。その自身の人生での体験を通して生まれたさまざまな想いと、それぞれのルーツへの敬意や愛情をこの舞台作品に込めたという。 プロローグでは、舞台上のスクリーンに現れる「TOHOGU」の文字。続いて、険しい岸壁で一心に踊る中田の映像が映し出される。その踊りに合わせて力強く叩く和太鼓の音が、魂の鼓動のように会場に響き渡る。 映像が終わると、尺八や箏、三味線の演奏の中で中田が舞台に立つ。白のジャケットに黒のパンツスタイルで踊るのは、2011年の東日本大震災で犠牲となった人々へ捧げる「Requiemレクイエム -祈り-」。岩手の三陸海岸と同じリアス式海岸の地形を持つスペイン・ガリシア地方発祥の曲であるファルーカを元に、岩手民謡奏者らと時間をかけて作り上げたという。歌詞も今回の作品用にアレンジし、演奏もオール岩手民謡奏者で編成された。和楽器が奏でる深い旋律を、万感の思いを込めて踊る。その姿は凛として潔く、観ていると勇気や希望が自然と湧いてくる。 シギリージャのリズムによる「Orgullo -誇り-」は、子供の頃によく聞いた民謡でフラメンコを踊りたい、という純粋な望みから生まれ、10年以上熟成させてきたという作品だ。自身のルーツ、そして自分は自分であることの誇りを胸に、この地に生まれた感謝を込めて中田は踊る。井上のカンテと民謡唄の吉田、二人の熱唱を全身で受け止め舞踊に昇華していく姿は、堂々として気迫に満ちていた。 「無 -No soy nadie-」では、真紅のバタデコーラとマントンで燃えさかる炎のようにソレアの旋律を舞う。世界から見ると自分は本当に小さな存在だけど、東北とスペインという2つの根っこからたくさんの愛と栄養をもらって生かされている、強く生きる名もない花だと中田は言う。曲の終盤のブレリアでは全員が舞台に登場。みんなの手拍子と共に繰り返される「Viva! mi tierra amada(ビバ・ミ・ティエラ・アマダ) 東北!」の大合唱は、たくさんの小さな存在たちの生命の輝きに満ちていた。 東北への愛に溢れていたのは、共演者らのパフォーマンスも同様だ。青森県新郷村周辺に伝わる日本最古の盆踊り「ナニャドヤラ」をガロティンで演出した曲では、フラメンコギターとピアノの演奏にカンテと民謡の唄が調和し、花笠姿の三人娘が祭りの雰囲気たっぷりの踊りを楽しませてくれた。 ブレリアのリズムでアレンジした美空ひばりの名曲「リンゴ追分」は、中田がスペインで新型コロナウイルスによるロックダウンを経験したことで、より強くなったという祖国の家族や故郷への恋しさが込められていた。母との辛い別れを悲しむ娘の切なさを井上が歌い上げ、それを大切に踊る三枝の存在感が印象的だった。 最後の曲は「Dodarebachi -津軽じょんがら節-」。東北の美しい雪景色と、厳しい自然。そうした環境で育まれた力強い伝統文化から生まれたとうほぐの祭りを讃え、謳歌する一曲となった。横笛の旋律を白のマントンで踊る姿は雪女のように神秘的で、タンゴの音楽になると生き生きとした躍動感を見せた。演奏も岩手民謡奏者とフラメンコ・ミュージシャンらの協演で熱く盛り上がり、ジャンルや文化の違いを越えた一体感が広がる。ラストは黒のアバニコを使って三枝と島崎と3人で、たくましさや希望の象徴である東日本大震災で残った陸前高田市の奇跡の一本松を表現した。 東北への愛、そしてスペインへの愛を惜しみなく表現した今回の公演。最後のあいさつで中田は、日本の文化や自然を継承してこれからも活動を続けていきたい、という思いを語った。 フィナーレでは、出演者らが公演オリジナルの半被を羽織って登場。その背中にプリントされた「東北゛」の文字が、誇らしげに輝いていた。 【プログラム】 1. Requiemレクイエム -祈り- 2. ナニャドヤラヨ! -伝説- 3. Orgullo -誇り- 4. Ringo Oiwake -母へ- 5. 無 -No soy nadie- 6. Dodarebachi -津軽じょんがら節- 【出演】 中田佳代子(踊り) 三枝雄輔(踊り・唄) 島崎リノ(踊り) 井上 泉(踊り・唄) 佐藤真知子(踊り) 石井奏碧(ギター) 北田了一(ピアノ) 藤沢東清(尺八・横笛) 二代目 井上成美(津軽三味線) 三代目 井上成美(津軽三味線) 吉田やす子(民謡唄) 髙橋美香(十七絃箏) 佐比内金山太鼓 高橋 環(和太鼓) 佐比内金山太鼓 高橋 徹(和太鼓) 【プロフィール】 中田佳代子(KAYOKO NAKATA) フラメンコダンサー 希望郷いわて文化大使 学生時代にバルセロナオリンピック閉会式でのフラメンコを見て感激したのがきっかけで単身スペインへフラメンコ留学し、極寒のマドリッドでフラメンコ人生をスタートさせる。 2001年現代舞踊協会河上鈴子スペイン舞踊新人賞 。 2002年日本フラメンコ協会新人公演奨励賞。文化庁在外芸術家派遣員として2年間スペイン・セビージャへフラメンコ留学。数々の著名なアーティストのもとで研鑽を積み、帰国後は日本各地で舞踊活動および教授活動を行う。 2007年地元岩手県盛岡市にカヨコフラメンコスタジオを設立と同時に、スペイン人フォトジャーナリストとの国際結婚しバルセロナに拠点を移す。 2008年スペイン・カディスの「アレグリアス舞踊コンクール」で外国人初の第二位を受賞。 現在、国籍、国境問わず舞台・教授活動しながら、自身のフラメンコを追求している。 (※HPより抜粋) >>>>>
- スペイン発☆志風恭子のフラメンコ・ホットライン
(miércoles,1 de marzo 2023) 文/志風恭子 Texto por Kyoko Shikaze 【フラメンコ・フェスティバルが再開】 2月8日に、公共交通機関でのマスク着用義務が解除され、今やマスク必須なのは医療機関や薬局、老人施設のみ、ということになったスペイン。すっかりパンデミック前の日常が帰ってきたようです。とはいえ、ウクライナのこともあり、物価は上がったし、パンデミックの間になくなってしまったお店なども多く、全く一緒かというとそうではないような。フラメンコで言えば、パンデミック下で閉店したタブラオもあれば、その後に新しく開店したところもあり観光客で賑わっているようです。 また、ビエナルやヘレスのような大規模フェスティバルなども以前と同じように開催されています。2023年も、1月にはフランスのニームで、そして2月にはオランダのビエナルという、欧州の重要なフェスティバルが開催されています。イスラエル・ガルバン、ロシオ・モリーナ、トレメンディータらコンテンポラリー系中心のニームで閉幕を飾ったのはラファエル・リケーニのギターリサイタル。モダンと伝統が交差するオランダのビエナルでは、マリア・モレーノのコンテンポラリーっぽい新作(昨年セビージャのビエナルで初演)もあれば、ファルキートや歌い手イスラエル・フェルナンデスも登場するという具合。なお、この二つのフェスティバル両方に出演したのはアルフォンソ・ロサとコンチャ・ハレーニョの素晴らしい『フラメンコ。エスパシオ・クレアティーボ』。昨年ヘレスとビエナルでも上演されたものですが、フラメンコの伝統と今を感じさせてくれます。日本で上演されたらうれしいのですが。 なお、スペイン国内でもカタルーニャのフラメンコ・オン、ムルシアのフェスティバルなどが行われています。かつては、フラメンコ祭というと夏、冬はペーニャというイメージでしたが、今や1年中いつでも行われているように思います。2月24日に始まったヘレスのフェスティバルの様子は、また追ってお知らせできると思います。昨年は欧州からの参加者は戻っていたものの、アメリカや日本、中国からの参加はほとんどなく寂しかったのですが、今年はだいぶ戻ってきているのではないかと期待しています。 (写真:ラファエル・リケーニのギターリサイタル) © Sandy Korzekwa festival de nimes 【訃報】 パンデミックの嵐の中でもまたその後も、多くのアルティスタたちが亡くなりました。その流れはまだ続いているようで、2月もフラメンコを支えてきた人たちが惜しまれながら世を去りました。 アントニオ・ソレーラ(1952Madrid-2023.2.5Madrid) アントニオ・ガデス舞踊団で長らく活躍したギタリスト、アントニオ・ソレーラが亡くなったのは2月5日。70歳でした。2022年秋の日本公演に同行していなかったのであれ、と思っていた人もいることでしょう。1972年からガデス舞踊団に在籍というから半世紀に渡り、ガデスその人とその後継者たちを支えてきた名手です。生地はマドリードとなっていますが、出身はグラナダ、サクロモンテというヒターノ。ガデスの作品『カルメン』や『フエゴ』の音楽も手掛けています。(『血の婚礼』はエミリオ・デ・ディエゴですが)クリスティーナ・オヨスが退団後、ガデスの相手役に抜擢されたエステラ・アラウソ(現在、ガデス舞踊団芸術監督)と結婚しています。2007年の来日公演の時には、終演後に渋谷で火事に遭遇、避難を助けて表彰されニュースになり、スペインでも伝えられました。あまり表に出たがるタイプではないので、ちょっと困ったような顔をしていたように覚えています。 (撮影)©Lucrecia Díaz Fundación Antonio Gades カルロス・サウラ(1932.1.4Huesca-2023.2.10Madrid) 2月10日には映画監督カルロス・サウラが亡くなりました。91歳の誕生日を迎えたばかりでした。カンヌやベルリンの映画祭で受賞した、スペインを代表する映画監督の一人として有名ですが、フラメンコ好きにとってはアントニオ・ガデスとのフラメンコ三部作(『血の婚礼』『カルメン』『恋は魔術師』)、その後の音楽映画(『フラメンコ』『フラメンコ・フラメンコ』『ビヨンド・フラメンコ』)でおなじみでしょう。世界中どんなところでも見ることができる“映画”という形でフラメンコの魅力を世界中に改めて知らしめた功績は偉大です。かくいう私も、二本立てでお目当てじゃなく観た映画『カルメン』でフラメンコを知った一人です。夢中になったのはガデスの公演を観てですが、映画を観ていたから劇場公演に足を伸ばしたので、サウラは恩人の一人です。他にもアイーダ・ゴメスの『サロメ』や『イベリア』なども忘れられませんが、映画『フラメンコ』の撮影現場に毎日のように通い、アーティストのアテンドをしたりエキストラで出演したり、また監督にカメラまで覗かせてもらったのもいい思い出です。 (写真は映画『フラメンコ』撮影時のもの。志風撮影) パンセキート(1945La Linea de la Concepción-2023.2.17Sevilla) 2月17日朝、Facebookで訃報を見つけた時のショックは大きかったです。78歳、ベテランの歌い手。でも今年の夏の公演の予定などもあったし、最近も元気な様子をそれこそFacebookの投稿で見かけていたので信じられませんでした。他の誰とも違う響き、歌いっぷり。フラメンコで大切と言われる独自の個性、*セージョ・プロピオを持っている人。洒脱でダンディ。70年代にはスペインのヒットチャートに出るほどのヒットを飛ばしたそう。フアン・ビジャールやランカピーノ、パコ・セペーロなどが活躍していた時代。今頃、天国で子どもの頃から仲が良かったというカマロンとフィエスタ三昧でしょうか。歌い手アウロラ・バルガスとセビージャ郊外に暮らし、一緒に舞台を務めることも多く、その仲の良さはよく知られていました。ご冥福をお祈りします。 (写真:1992年パンセキート、伴奏はモライート。志風撮影) *セージョ・プロピオ/sello は「切手、スタンプ」の意味もあり、「自身の」という意味の形容詞propioがついて「その人ならではのしるし、独自の個性」ということになる。(筆者解説) 【筆者プロフィール】 志風恭子/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。 >>>>>
- ★フラメンコnews ☆
シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルで フラメンコとスペイン料理を堪能! 千葉県浦安にある東京ディズニーリゾート®の公式ホテルでもあるシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルで、「ヨーロピアンフードフェア」の第1弾として3月31日まで「スペインフェア」が開催中です。 ブッフェレストラン「グランカフェ」にて、海や山の幸にあふれた美味しい食材を使った伝統的なスペイン料理を日替わりメニューで提供しています。 そしてランチタイムとディナータイムには、日本フラメンコ協会(anif)所属のアーティストらによる本格的なフラメンコショーも楽しめるといううれしい企画も(※開催日は要確認)。 この春のレジャーの予定として、家族で友人同士で、ぜひ計画してみてはいかがでしょうか? 【シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル/レストラン】 https://www.marriott.com/ja/hotels/tyosi-sheraton-grande-tokyo-bay-hotel/dining/ 【フラメンコショー開催スケジュール】 https://grandcafe.sheratontokyobay.com/resourcefiles/pdf/flamenco-schedule.pdf
- «新連載»「新・フラメンコのあした」 vol.1
(lunes, 6 de marzo 2023) 20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は、昨年暮れに上演されたスペイン国立バレエ団の劇場公演についてご紹介します。 文/東敬子 Texto por Keiko Higashi 写真/プロモーション宣材 Foto por promoción スペイン国立バレエ団『エル・ロコ』 サルスエラ劇場、マドリード(スペイン) 2022年12月18日 “El loco”, Ballet Nacional de España, Teatro de la Zarzuela, Madrid, 18 diciembre 2022. Director: Rubén Olmo フラメンコ作品が時を経て再演されるのは中々ない事なのですが、2022年末よりスペイン国立バレエが公演する『エル・ロコ』(2004) は、ほぼ20年の時を経て再演を果たした秀作の一つです。 同舞踊団でもソリストとして活躍した舞踊家・振付家のハビエル・ラトーレ(1963ー)が振付を務めたこの作品は、実在した舞踊家フェリス・フェルナンデス(1893ー1941)を題材に、彼の苦悩に満ちた人生を独自の視点で描き、初演当時も大きな話題を呼んだ意欲作でした。 20世紀初頭当時の「時代考証」を忠実に守りながらも、つまりは、古典的・伝統的なフラメンコを表現しながらも、観終わったとき観客に「これは現代のフラメンコ舞踊だ」と感じさせるその手腕は、さすが「鬼才」と称されるだけの事はある。ハビエル・ラトーレは、もっと評価されても良いアーティストであると、今更ながら感じさせてくれます。 フラメンコ界は、リーマンショックやコロナウイルスなどの影響で、10年以上経済的縮小を強いられていますが、2000年代は海外でもフラメンコブームで、かなり盛り上がっていたんですよね。この作品も色んな部分で、当時の勢いが感じられます。 抑えた色味のアバンギャルドなデザインの衣装や、凝った舞台美術なんか、やっぱりお金かかってるなあと感じるし、この作品は特に、フラメンコの演奏の他に、オーケストラの生演奏の部分もあるので、音楽も豪華。また、物語構成の中で内面の葛藤を表現するなど、本当に当時の「流行り」と言うか、「これぞ2000年代の作品」という感じで、当時の世界観を詰め込んだ作品の最高峰と言った感じでしょうか。 この作品を観終わって、今にない20年前のそれを新鮮に感じる部分、そしてもう古いなと思う部分、両方がありました。しかし、作品作りの丁寧さは現代でも見習ってほしい、それは強く感じます。それには十分な時間、すなわち十分な予算が必要なわけですが。ただ一つだけ、初演当初に観た時と、再び観た今も、同じ印象が残った部分がありました。それはこの作品の物語構成でした。 フラメンコの踊り手だったフェリスは、その才能を買われ当時第一線だったディアギレフとマシン率いるバレエ・リュスに引き抜かれ、スペインからイギリスに渡るわけですが、馴染めず葛藤を繰り返し、最後には狂気の世界に埋没してしまうと言うストーリー。 舞台はまず精神病棟で苦しみうごめく「晩年の」フェリスの場面から始まります。そして過去にフラッシュバックし、彼の栄光と転落の過程がつづられ、最後にまた精神病棟でのフェリスが描かれて幕を閉じます。 まるで映画のようなこの構成は、当時、新しい試みではありました。しかし、最初の精神病棟の場面は、必要なかったのではと、私は今も昔も同じ印象に着地しました。これが最初にあるせいで、フェリスがどれだけ素晴らしい踊り手だったのかと言う部分が駆け足になって実感できない。観客が素晴らしい未来をフェリスと一緒に期待出来なければ、その後に来る悲劇も薄味に感じてしまいますよね。 精神病院の部分がオープニングに来ると、その不気味な雰囲気に「何だろう」と引き込まれる、そういう効果はあるでしょう。でも、舞踊には言葉がありませんから、視覚で感情を揺さぶるには、もっとストレートなやり方の方が合うのではと思います。 例えば、クラシックバレエの『ジゼル』。一幕目では明るい幸せいっぱいのジゼルが描かれ、二幕目では彼の裏切りにショックを受け死んでしまったジゼルが亡霊として出てくる。何が起こったのかすぐ分かるし、この対比が観るものの目には面白い訳です。だから感情移入も出来る。 とはいえ、色々な意味で、『エル・ロコ』の再演は、フラメンコの未来を見る上で、とても意義あることだったと思います。スペイン国立バレエには、これからもどんどん秀作の再演に力を入れて欲しいと願っています。 【筆者プロフィール】 東 敬子(ひがし けいこ) フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.com を主宰。 >>>>>
- ★☆★ フラメンコnews ☆★☆
小松原庸子スペイン舞踊団による劇場公演が、小松原さんの地元である杉並区の文化芸術活動への助成を受け座・高円寺2で上演されます。 出演者には現在各地で活躍する舞踊団OGが顔を揃え、注目の若手ダンサーらも出演します。 舞踊団に縁のある気心の知れたメンバーらによる和やかで華やかな劇場フラメンコを、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか? 昼公演と夜公演があります。 『小松原庸子スペイン舞踊団 フラメンコ 神秘と情熱 -杉並にフラメンコを-』 [日時] 2023年3月14日(火)18時半開演/15日(水)15時開演(開場は開演30分前) [会場] 座・高円寺2(東京) [出演] 草野櫻子(14日のみ出演) 松浦広美 鈴木眞澄 中尾貴子 入交恒子 谷 淑江 玉沖朋子 藤川淳美 関真知子 横山さやか 平林夏々子 藤丸莉沙 石田久乃〈特別参加〉 鈴木眞澄スペイン舞踊団 坂口真子 阿部麻実 佐藤陽美 大塚美杉 本田孝子 松本ともこ 小池麻希子 武田智子 市川真美子 駒崎万里世 奥濱春彦 中原 潤 荘村清志(特別出演) ヴァイオリン:寺島貴恵 カンテ:ディエゴ・ゴメス 有田圭輔 水落麻理 ギター:高橋紀博 宇田川卓俊 カホン:山本将光 [チケット代]10,000円(全席指定、税込) [URL] http://komatubara.com/events/2023/mystery_top.html [主催・問]ソル・デ・エスパーニャ Tel.03-3314-2568
- ★☆★ フラメンコnews ☆★☆
東京を拠点に日本全国で舞踊活動や教授活動を続けるフラメンコ舞踊家、鈴木眞澄さんが今年活動50周年という節目を迎え、各地でフラメンコライブ・シリーズ公演を行います。 ご自身のソロライブや主宰するマジョール舞踊団のライブ、そして福島や長野、熊本など各地で指導するそれぞれの教室の生徒さんたちとの共演ライブが行われます。 フラメンコを愛し、人と人とのつながりを大切にする眞澄さんの温かさが伝わるような公演を、ぜひお楽しみください。 【鈴木眞澄フラメンコ50年 -愛するお仲間と共に-】 [日時] 2023年3月10日(金)18時半開場/19時開演 [会場] 福島・郡山公会堂 [出演] Ⓑ鈴木眞澄/及川いずみ/阿部早苗/ スタジオ・カリーニョ(遠藤浩美 国分正子 小松美智子 千葉和子 平井久美子 本田恵津子) Ⓒ大渕博光 Ⓖ小原覚/尾藤大介 [チケット] 3,000円 [申込・問合せ] 及川いずみ(lindalinda1668@icloud.com/080-5222-7631) 鈴木眞澄(mamimayor0115@gmail.com/090-5502-4439) 【今後のライブ情報】 4/23(日) 東京★鈴木眞澄フラメンコ50年記念ソロライブ/高円寺タブラオ・エスペランサ 5/29(月) 東京★マジョール舞踊団ライブ/高円寺タブラオ・エスペランサ 9/17(日) 長野★情熱のフラメンコ/ホテル国際21長野 12/16(土) 神奈川★フラメンコクリスマス/スペインクラブ茅ヶ崎 【鈴木眞澄フラメンコ50年シリーズ -愛するお仲間と共に-】 5月6日(土)鎌ヶ谷きらりホール(コラル、船橋クラス) 5月28日(日)高円寺タブラオ・エスペランサ(町田月曜クラス) 6月4日(日) 高円寺タブラオ・エスペランサ(長野アマポーラ) 7月9日(日) 高円寺タブラオ・エスペランサ(熊本マジョール) 7月23日(日) 高円寺タブラオ・エスペランサ(町田土曜クラス) 8月6日(日) 高円寺タブラオ・エスペランサ(横浜クラス) 9月9日(日)福島テルサホール(福島パシオン) 10月1日(日) 高円寺タブラオ・エスペランサ 10月15日(日) 高円寺タブラオ・エスペランサ >>>>>
- Flamencoライブ・リポート/渡部純子バイレソロライブ
現在東京や宇都宮を中心に日本各地で活躍するバイラオーラ、渡部純子さんのソロライブが、去る12月17日に東京・四谷のタブラオ、カサ・アルティスタで開催されました。会場は満員御礼の賑わいで、客席では開演を待ちながら、グラス片手に会話の花があちらこちらで咲いていました。 ライブが始まり、青いドレスに身を包んだ渡部さんが登場。風格と気高さが漂うタラントに、観客はすっかり引き込まれます。続いてプログラムは、三木さんが奏でる伸びやかな音色が美しいバイオリン・ソロ、そして2曲目のバイレソロとなる軽快で明るいアレグリアスへ。勝羽さんの張りのあるまぶしい歌声が、曲の世界観を鮮やかに彩ります。今田さんのギターソロはグアヒーラ。ゆったりとまどろむようなメロディーに三木さんのパルマがスパイスとなり、終盤はギターとバイオリンのデュオという贅沢な演奏を楽しめました。最後のバイレソロ曲は、美しくも気迫に満ちたソレアを披露。エスコビージャ(足技のパート)では、無伴奏で粒ぞろいの磨き抜かれた音色を聴かせてくれました。 アンコールでは、タンゴと季節的にビジャンシーコを取り入れ、「歌える人はぜひ歌ってください」と観客に呼びかける場面も。アットホームな雰囲気の中でライブを締めくくりました。 約70分ノンストップで、フラメンコの様々な魅力を楽しませてくれた今回のライブ。渡部さんのお人柄と共演者たちとの信頼関係の良さが感じられた、和やかな素晴らしいひとときでした。 [日時]2022年12月17日(土) [会場]カサ・アルティスタ(東京・四谷荒木町) [出演]渡部純子(バイレ)、勝羽ユキ(カンテ)、今田 央(ギター)、三木重人(バイオリン)