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第8回森山みえフラメンコ舞踊団公演

『シンデレラ・コンプレックス』

~一度だけ本当の恋をした 最後の恋にはならなかったけど~


(viernes, 27 de diciembre 2024)


2024年5月12日(日)

東部フレンドホール(東京・瑞江)


文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko


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©佐藤尚久

 歴史上の人物にまつわる物語や映画作品のストーリーを題材に、毎回創意工夫に富んだ舞台作品を上演する森山みえフラメンコ舞踊団公演も、今回で第8回を迎えた。

 今作のテーマは、19世紀半ばに出版されたイギリスの小説家シャーロット・ブロンテによる長編小説「ジェーン・エア」を主軸として、主人公ジェーンの視点から世界各国の有名な物語のヒロインたちに焦点を当て、森山独自の解釈と演出を加えて一つの大きなストーリーが仕立てられた。


 第1部は、不遇の境遇に耐えていた少女時代のジェーンが、本の世界の中で空想を巡らせながら、それぞれの物語に登場するヒロインの心情を自由に想像していくという展開。カルメンが実は死ななかったとか、ジュリエットがロミオに振られたとか、白雪姫の物語では悪役の鏡の女王も実は寂しい女性だったなど、設定がなかなかユニーク。

 ヒロイン役はそれぞれ舞踊団員が務め、「いつか王子様(=男性)に幸せにしてもらうのを待つ」という受け身のヒロインたちが、裏切りや嫉妬、執着といった困難に立ち向かう中で自分の幸せとは何なのかを見出していく姿を、ソロや男役とのパレハで踊り表現していく。


 ひとつ気になったのは、ストーリーを理解しやすくするために各エピソードでナレーションが入っていたが、それぞれ役を演じた本人による声だったのか、やや早口だったり声が曇っていたりで聞き取りにくい部分が所々にあり、そこは少し残念だった。


 白鳥の湖では、オデット役の富松がジークフリート役の山本とソロンゴをパレハで披露。カンテの有田が歌だけでなく、オデットを監禁する漁師役を演じたのも興味深かった。

 妖しい魅力で男たちを虜にする黒鳥オディールは、今作ではオデットの姉という設定。奥濱が黒のバタ・デ・コーラとアバニコで妖艶な黒鳥の舞いを魅せ、その貫禄や凄みに満ちた踊りは圧巻だった。


 第2部はジェーン・エア自身の物語を中心に構成。これもまた原作とはやや展開をアレンジして、家や世間体に縛られている愛するエドワードと、精神を病んで屋敷に閉じ込められていたその妻バーサを解放するために、ジェーン自らが屋敷に火を放つという設定に変えたのは、なかなか思い切った演出。

 三枝が演技と歌で活躍。役を演じる場合は踊り手が担当することが多いが、歌い手が演じるのも十分効果的だ。森山がソロで踊るシギリージャやグアヒーラを歌い、二人の役柄と歌がうまく溶け合っていた。


 今回もオリジナリティに富んだ演出で観客を楽しませた森山の公演。次はどのようなストーリーが取り上げられるのか、密かに楽しみにしている。

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©山本裕

[プログラム]

カルメン(ソレア・ポル・ブレリア)

ジュリエット(ティエントス)

かぐや姫(ペテネーラ)

白雪姫(アレグリアス・デ・カディス)

鏡の女王(アレグリアス・デ・コルドバ)

白鳥オデット(ソロンゴ)

白鳥の湖(アンダハレオ)

黒鳥オディール(«Danza del fuego» del Acto II de "Benamor")


ジェーンはシンデレラ(ガロティン)

バーサ(カーニャ)

ジェーン・エア(シギリージャ)

ジェーンが作り出したヒロインたち(ブレリア)

ハッピーエンドの後を生きるシンデレラ(グアヒーラ)


[出演]

バイレ:森山みえ、奥濱春彦(特別ゲスト)、山本海、ドミンゴ

森山みえフラメンコ舞踊団(富松真佑子、冨田英子、丹羽みずき、吉平梓、田村史子、村山涼子、小山優)


カンテ:有田圭輔、三枝雄輔

ギター:エミリオ・マジャ

パーカッション:橋本容昌


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