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特別エッセイ:石川慶子

「コンクールでしか伸びないものがある」

 

(miércoles, 11 de diciembre 2024)


名古屋を拠点として舞踊・教授活動を行うフラメンコダンサー石川慶子さんが主催する『名古屋未来のフラメンココンクール』が、この度10回目の開催を迎えます。その立ち上げの動機や10年間の経緯、そしてコンクールの開催に込めた想いなどを綴っていただきました。


文・写真/石川慶子

Foto y Texto por Keiko Ishikawa

 

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(写真)2019年の臨月コンクールの写真


 「名古屋未来のフラメンココンクール」も、とうとう10回目を迎える。

 タブラオに出たり、劇場でソロを踊ったり、芸の道はどう進んでも学び多いものだが、「コンクールでしか伸びないものがある」と実感して、でも既存のコンクールにはなかなか出場機会がない層、プロになるわけではないが本気でフラメンコに取り組んでいる生徒さんたちに向けて2016年に発足した。参加費もできるだけ安く、オフィシャルアーティストをつけて、負担が少ないようにした。その代わり賞金などはなく、先生方の講評が賞品といった感じだ。

 各賞は第1回から今までずっと「独断と偏見で選ぶ」と謳っている。また審査員の先生方によるエキシビションも必ず行ってきた。評価だけするのではなく、その先生方が大事にしているものを見てもらおうという観点だ。


 そんなコンクールに、第6回にして異変が起こる。2021年コロナ禍のせいでフアン・ポルビージョ審査委員長が来日できず、会場にもお客様を集められなくなってしまった。でもこのコンクールだけは何があっても毎年開催すると決めていたので(2019年には臨月でエキシビションし、陣痛中に講評を書いた)、映像を録画し、オンラインで開催。そのおかげで遠方の方にもたくさん参加してもらえた。また、助成金をいただいたので審査員の先生方とオフィシャルアーティストはすべてスペイン人という豪華な回にもなった。

 ところが、そこでまた新たな異変が起きた。審査員の先生方の採点が非常に辛(から)いのだ。講評以外にも点数をつけてもらっていて、その合計で優勝を決めるのだが、その点数が低すぎる。「本当はこんな風に思っていたんだ」と焦った。もっと本音を聞き出したいと思って、別日に3人の審査員の先生方とオンライン会議をしたが、その時は煙に巻かれてしまって本当のところは分からないままだ(実はまだ気になっている)。


 翌年からはコロナに特化した会場の有観客ライブと配信のハイブリッド形式での開催にした。配信は抵抗感ある出場者もいたと思うが、格安で(初回は500円だった)、フラメンコ関係以外の人にもたくさん応援していただけた。この年から参加者多数のため2日間の開催となった。10代の若い生徒さんたちも出てくれるようになり、新しい風を感じた。この年は初めてイベリアさん(*東京の衣装製作・販売会社)が協賛に入ってくださった。

 そして2023年アデラ・カンパージョ、2024年ラ・モネタという超一流の先生方が審査を引き受けてくれたおかげで、「日本で一番審査されたいコンクール」と言っていただけるようになってきた(来年はマリア・モレーノとアンヘレス・ガバルドン)。この年からアルディージャさん(*愛知の衣装・雑貨・アクセサリー販売ショップ)が協賛に入ってくださり、賞品を毎年提供してくださっている。本当にありがたい。


 出場者の方はリピーターが多く、最多は6回。お子さんが手を離れ、「お母さん卒業記念に」と出場してくれた方もいる。下は10代から上は〇〇代、でも年齢にこだわらず青春している。

 来年の第10回は募集が早かったからか、既に15名の方がエントリーしてくれていて、2/8分は募集締め切り、2/7分をオフィシャルアーティストを増やして対応しようかと思っている。

 プロになるわけではない、でもコンクールに出ると決めたからには「勝つために」、ありとあらゆる思いつく限りの練習をしていくはずだ。その中で、きっといつもとは違った学びを得るはず。それが出場者にとって一番の賞になる。

 

 私が主催ということにはなっているが創設当初から多くの先生方や生徒さんに協力してもらって、全名古屋で取り組んでいる。特にコロナ以降、会場を貸してくださった上、録画まで手を貸してくださる礒村崇史先生には感謝してもしきれない。現在、「名古屋フラメンコ協会(仮)」を作るために会議を重ねている。11回目からは主催をそちらに引き継ぎ、本当の意味で「名古屋未来の~」となるのを楽しみにしている。

B_2412_石川慶子エッセイimage2_c©︎isadelacalle

(写真)2024年フアン・ポルビージョ審査員長とヘレスフェスティバル並行プログラムにて/©︎isadelacalle


*第10回『名古屋未来のフラメンココンクール』についての記事はこちらから



C_2412_石川慶子エッセイ_プロフィール©︎carlos chinesta
2020年 ©carlos chinesta

【プロフィール】

石川慶子(Keiko Ishikawa)/早稲田大学でフラメンコと出会う。フラメンコ協会新人公演にてソロ・群舞ともに奨励賞を受賞。豊田文化振興財団「文化新人賞」受賞。「カンテ・デ・ラス・ミナス」日本予選を通過し、本国の準決勝に出場。全日本フラメンココンクール2度の準優勝。「芸能人格付けチェック」、スペイン版「ゴットタレント」に出演。元高校教員。


【公式サイト】


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