¿Dónde está la princesa?
~王女様はどこに行った?~
(viernes, 21 de julio 2023)
2022年12月3日(土)
小岩アーバンプラザホール(東京)
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko
写真/荻久保次郎
Foto por Jiro Ogikubo
今回で7作目となった舞踊団公演は、昨年10月に上演された前作から約1か月強という実に短い期間で準備が進められた。原作はオードリー・ヘプバーン主演による不朽の名作として知られる映画『ローマの休日』。そこにフラメンコ舞踊作品としてオリジナルのアレンジを加え、原作の設定にとらわれないユニークなストーリーに仕立てた。曲の前後にナレーションを取り入れることで、観客が分かりやすく舞台を楽しめる工夫も施されていた。
物語の舞台となったのは、原作のイタリア・ローマに代わってフラメンコの本場であるスペイン・アンダルシア。王女の行き先は欧州の親善旅行からスペイン留学へと変わり、新たに王女の婚約者という配役も設定した。さらにロマンスのお相手となるアメリカ人新聞記者は、日本人フラメンコダンサーへとキャラクターも変更。また、スペインで現地レポートを行う女子アナ役をキャスティングすることで、芝居の中で首尾よくナレーションとしての役割を担当させた。
作品の内容としては、物語の場面に沿ってソロやパレハ(ペア)、群舞で様々な曲種のフラメンコ舞踊を取り揃えた。主役のアン王女を演じる森山は舞台の1曲目でペテネーラをソロで披露し、赤のバタデコーラと黒のマントン(ショール)で王女の存在感と気高さ、そして国を救うための政略結婚を憂う苦悩を表現。王女の相手役である永田は、配役も地のままフラメンコダンサーというだけあり、バストン(杖)を使ったキレのあるシギリージャを踊り、正確なコンパスと巧みな足技を魅せつけた。二人はセビジャーナスやアレグリアス、ファルーカをパレハで舞い、出逢いから別れまでのロマンス・シーンを好演した。
群舞では、春祭り会場のシーンで女性団員によるセビジャーナスが繰り広げられ、華やかな場面を演出。祭りはそのままカジェ(小道)でのブレリアへと続き、舞台中央へと移動したミュージシャンたちによるギターとカホンの伴奏に合わせて歌う者あり踊る者あり、山本(将)も生き生きとしたパフォーマンスを披露した。また、行方不明になった王女を探すシーンではソレアポルブレリアで騒然とした雰囲気を表現し、効果的な演出を図った。婚約披露パーティーの場面では、ルンバの歌や演奏にハレオ(掛け声)も掛かり楽しそうなセッションが盛り上がり、続くグワヒーラの曲ではパーティーの主役である山本(海)を招き華やかな舞いで婚約を祝福した。
踊りの場面以外にも、随所に音楽を生かした創作的な演出に好感が持てた。舞台セットを切り替える場面ではギターソロのグラナイーナで演奏を楽しませ、王女が行方不明になったシーンではカホンのソロで不安を誘うようなグルーブ感溢れるブレリアを披露。また、森山と永田のパレハによるアレグリアスでは、始まりにダニエルが弾き語りで名曲「テネシー・ワルツ」を歌い、恋する二人のシーンをさらに盛り上げた。
有名な作品をベースとして物語の展開も分かりやすく、ストーリーと合わせてフラメンコ舞踊や音楽も楽しめる作品となった今回の舞台。終演後には、休憩時間をはさんで教室の発表会も予定されていて、そのため発表会を観に来場した人が舞台作品も同時に観ることができる良い機会となった。普段はあまり馴染みのないフラメンコの舞台をより多くの人に観てもらう機会をこのような形で設けることで、新たにフラメンコに興味を持ってくれる人が増えてほしいという、森山の思いがその企画内容に表れている。今作のように親しみやすいテーマでカジュアルに楽しめる作品が少しずつでも増えていったら、フラメンコの認知度も上がっていくのではないかと期待している。
【プログラム】
1. とあるヨーロッパの小国の王女・アン(ペテネーラ)
2. 脱走(グラナイーナ)
3. ケン・ナガタ(シギリージャ)
4. 出逢い(セビジャーナス)
5. 祭りはまだ終わらない(ブレリア)
6. 言葉はいらないアンとケン(アレグリアス)
7. 王女様はどこに行った?(ソレアポルブレリア)
8. 婚約披露パーティー①(ルンバ)
9. 婚約披露パーティー②(グワヒーラ)
10. 王女様はどこに行った?(ファルーカ)
【出演】
主演・脚本・演出:森山みえ
ギター:尾藤大介
カンテ:永潟三貴夫、ダニエル・アスカラテ
パーカッション:朱雀はるな
バイレ:永田健、山本将光、山本海、ドミンゴ、篠崎麻由美、富松真佑子、森山みえフラメンコ舞踊団
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