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棘の多い薔薇たち 〜Rosas Espinosas~ vol.8

"Aflamencamiento  フラメンコは深化する"


(sábado, 17 de agosto 2024)

 

2024年2月11日(日祝)

Showレストラン ガルロチ(東京・新宿)

※公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団の令和5年度助成対象公演


写真/近藤佳奈

Fotos por Kana Kondo

文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko


A_2402棘ばら_ガロティン

 

 棘の多い薔薇たち――、なんともユニークなタイトルに惹きつけられた。

 今回で8回目となるこの公演。12年前の初演から回数を重ね、その間にはコロナ禍に見舞われ舞台活動もままならない時期もあった。そうした苦しい経験をしたからこその強い想いが、この舞台に込められているという。

 キーワードは「時代の*徒花(あだばな)」。ソロでは各自のコンセプトを大事にした作品作りに努めた。


 オープニングは4人の群舞のガロティン。棘のある赤い薔薇をあしらった白の帽子に、衣装は赤・白・茶系のトーンで統一。本来ガロティンは明るい曲だが、物憂げなバイオリン前奏から始まり、息の合った群舞を披露するものの、どこか影のある空気を漂わせながら踊りは展開していく。

 音楽はそのまま途切れることなく、次のミュージシャンソロへ。曲は、"Yo soy Maria…"の歌い出しで始まるアルゼンチンタンゴの名曲、アストル・ピアソラ作曲の「Maria de Buenos Aires」をフラメンコアレンジ。水落のカンテが曲の世界観を豊かに表現。バイオリン、バンドネオン、ギターとつながれていくそれぞれのソロも、美しい音色を楽しませてくれる。


C_2402棘ばら_荻村真知子

 荻村のソロはカンティーニャ。ミニー・リパートンの往年の名曲「Lovin' you」のモチーフが、音楽の随所に盛り込まれる。優雅で柔らかい踊りに、ちょっと小粋で強気な一面が表れているのも魅力的だ。


D_2402棘ばら_塩川朋子

 甘美なギターサリーダから深みのある曲の世界に包まれていく、塩川のタラント。有田の熱唱が踊り手の感情を高揚させる。品のある力強さや芯の強さを感じさせる踊りに、彼女の持ち味がよく出ている。


E_2402棘ばら_松田知也

 松田はボリュームあるバタ・デ・コーラで踊るグアヒーラ。大小のアバニコを巧みに操り、青年の凛々しさと繊細な身のこなしに目を奪われる。「星に願いを」や「シンデレラ」などディズニーの人気曲をアレンジした音楽が、踊りとともに夢の国へと誘ってくれる。


F_2402棘ばら_本田恵美

 本田は気迫に溢れるシギリージャを披露。リベルタンゴをアレンジしたファルセータや、踊りにバストン使いを取り入れるなど、バリエーションに富んだ演出に引き込まれた。


G_2402棘ばら_カーニャ

 エンディングはカーニャ。ジブリアニメ映画「ハウルの動く城」の挿入曲「人生のメリーゴーランド」をモチーフに、バンドネオンの金子主導で楽曲をアレンジ。紫の衣装で揃え、人生をメリーゴーランドに例えドラマティックな舞踊を展開。ラストは自分たちが生きている証を象徴する心臓の鼓動音とともに、舞台を締めくくった。


 コロナ禍による逆境を創作のエネルギーに変え、自分たちだけのオリジナリティを追求した作品として昇華させた今回の舞台。どんな困難に見舞われようともくじけることなく、ひたむきに前へと進むしかない、そんなポジティブな強さも伝わってきた。

 転んでもただでは起きない――、美しい薔薇も伊達に棘多めに咲いているわけではないようだ。


[出演]

バイレ 荻村真知子、塩川朋子、本田恵美、松田知也

カンテ 有田圭輔、水落麻理 

ギター 徳永康次郎

バイオリン 森川拓哉 

バンドネオン 金子舞音(まいと)


*徒花(あだばな)/①咲いても実を結ばない花。むだ花。②はかなく散りゆく花。③季節はずれに咲く花。など(出典:新村出 編「広辞苑 第五版」岩波書店)


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