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新・フラメンコのあした vol.19

(lunes, 2 de septiembre 2024)

 

20年以上にわたりスペインで活動するジャーナリスト東敬子が、今気になるスペインフラメンコのあれこれを毎月お届けします。今月は、この夏マドリード郊外の町で行われた夏祭りイベントから2つの公演についてのリポートです。

 

ダビス・ルイス・セプテット

『ジャズ・コン・ライセス』

 2024年7月20日

アレハンドラ・カステル・カンパニー

 2024年7月27日

「ノーチェス・デ・ベラーノ」フェスティバル

チンチョン、マドリード、スペイン

 

David Ruiz Septeto, “Jazz con raíces”

Festival “Noches de verano 2024”,

Calle Canteras 3, Chinchón  Madrid. 20 de julio 2024


Cía de Alejandra Castel,

Festival “Noches de verano 2024”,

 Calle Canteras 3, Chinchón  Madrid. 27 de julio 2024

 

文:東 敬子

画像:宣伝素材 / 東 敬子

Texto: Keiko Higashi

Fotos: Promoción/ Keiko Higashi


A_2409東_フライヤー画像

 

 夏と言えば夏祭り。それはスペインも例外ではありません。灼熱の太陽を逃れ、涼む夜に見るフラメンコの、なんと楽しいこと。プラスチックのカップに注いだ冷えたビールやティント・デ・ベラーノの程よい酔いが、室内では感じることのできない、心地よい風を届けてくれます。

 

 都市部でも夏のイベントは沢山催されますが、夏祭りを体験したかったら、やっぱり郊外の町。小さければ小さいほど良い。そんな所で出会うフラメンコは、大きなステージでは見れない特別な魅力に包まれています。


 そんな夏祭りのイベントから今回は、マドリードからバスで1時間、人口5千人ほどの小さい町、チンチョンで行われた2つの公演をレポートします。これらの公演では、才能あふれる若手に出会えて、大きな刺激を受けました。


*  *  *  *  *

 

 15世紀に創られたマヨール広場は世界遺産に認定され、また同時代に建てられた城跡も残るこの町は、マドリード市民が週末を過ごす憩いの場でもあります。今年7-8月の毎週土曜日に行われた「ノーチェス・デ・ベラーノ」シリーズでは、様々なジャンルの音楽が演奏されました。

 

 まずは7月20日に行われたジャズベーシスト、ダビス・ルイスによる「ジャズ・コン・ライセス」公演をご紹介。この公演では、キーボード、ドラム、ホーンセクションの他、フラメンコのバイラオール、ダニエル・カバジェーロも含むセプテット(7人編成)の構成で演奏されました。

B_2409東_daniel caballero (c) keiko higashi
©keiko higashi

 フラメンコギターの神様パコ・デ・ルシアがジャズとセッションしてからこちら、フラメンコとジャズの交流は今も続いています。今回はバイラオール、ダニエル・カバジェーロが、ジャズの味付けたっぷりのブレリアで見事な足捌きを見せてくれました。

 

 年齢は資料に出ていないので分かりませんが、20代後半ぐらいでしょうか。マドリードのフラメンコ地区カラバンチェルの出身で、その一挙一動がフラメンコの匂いを放つ彼は、最初は若干緊張気味ではありましたが、徐々に落ち着きを取り戻し、段々と熱を帯びていく様は、観客の目を釘付けにするのに十分でした。

 

 ジャズの演奏自体も、非常にタイトな音で本格派。公演のタイトルから、ホルヘ・パルドらの様に、もっとフラメンコの曲種を使ったものが多いのではと想像していましたが、そこの発展は余りなくて、若干物足りなかったのは正直なところです。しかしジャズとしては、色々な冒険を試みた楽曲が多く飽きさせません。自分で作ったと言うギターの音色も披露されて、中々興味深かったです。


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C_2409東_Alejandra Castel (c) keiko higashi
Alejandra Castel ©keiko higashi

 そして翌週の7月27日には踊り手アレハンドラ・カステルのグループが公演。彼女も、私は初めてでしたが、端正な踊りで好感が持てました。

 

 ステージにぱっと花が咲くような、いかにもスペイン女性らしい華やかな笑顔の美人で、カルロス・エレディアとのパレハでセビジャーナスなどを踊った後は、パンタロン姿でアレグリアス。扇風機が回るだけの小さな野外特設ステージは暑くて大変そうでしたが、十分楽しませてくれました。お客さんとの掛け合いも楽しかった。


 今回相棒を務めたカルロス・エレディアもソロでカーニャなどを披露。変わったことはしませんが、正統派で力強く、その真摯な踊りがとても良かった。若いけれど、ブレない芯があって、心に残りました。

 

D_2409東_Carlos heredia (c) keiko higashi
Carlos Heredia ©keiko higashi

 アレハンドラ、カルロスの両者とも、調べても経歴が全く出てこないので年齢なども分かりませんが、20代半ばから後半でしょうか。ともあれ二人とも伝統的な踊りで、これぞフラメンコの満足感がありました。

 

 また、ハビエル・ロマノスのちょっと枯れた味わいのギターに乗って繰り出されるサウル・キロスの、いかにもマドリードのそのノリが、とても心地よかった。彼は私が昔から好きな歌い手で、久々に遭遇して「変わらないなあ」と聞き惚れてしまいました。

 

 小さなステージで観る、大きな可能性に心弾ませた夏でした。

 

 

【筆者プロフィール】

東 敬子 (ひがし けいこ)/フラメンコ及びスペインカルチャーのジャーナリストとして、1999年よりマドリード(スペイン)に在住し執筆活動を続ける。スペインに特化したサイト thespanishwhiskers.comを主宰。

 

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