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徳永兄弟 OCTET - NEO FLAMENCO

(martes, 28 de noviembre 2023)


2023年6月23日(金)

紀尾井ホール(東京・四谷)


文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko

写真/田頭真理子

Fotos por Mariko Tagashira

徳永兄弟OCTET_20230623紀尾井ホール

 クラシックホールとして有名な紀尾井ホールが、この日フラメンコに染まった。


 昨年のメジャーデビューアルバム発売からホールツアーを経て、その目覚ましい活躍で大きな注目を集めるフラメンコギターデュオ徳永兄弟のコンサートが行われた。

 テーマは「音とリズムのバトル」。共演には、昨年の夏にスペイン最大のフラメンココンクール、カンテ・デ・ラス・ミナスでセミファイナル出場という快挙を成したベーシスト森田悠介や、パーカッショニストとして様々な音楽ジャンルで活躍するKAN、同じくパーカッションで現在米バークリー音楽大学へ奨学生として留学中で、スペインの一流フラメンコアーティストらのツアーにも参加するラファエル・モイセ・エレディア、そして日本のみならず世界でも活躍するタップダンサーSAROと、フラメンコ界で今最も注目されている若手のホープ中原潤と鈴木時丹がパルマとダンスで出演という、贅沢なメンバー構成。OCTETの名が示すように、8人の精鋭による音とリズムの“八重奏”に期待が高まる。


 真っ暗な舞台の左側に置かれた1台のテーブル。それを囲むようにしてフラメンコアーティストの5人が立ち、各々の拳でテーブルを叩きながらリズムを刻み始める。これはヌディージョと呼ばれるフラメンコの演奏方法の1つで、テーブルとか壁など物を拳で叩いたり指で弾いたりして音を鳴らしながらリズムを奏でるもの。モイセが音の変化を加えながらリズム遊びをリードし、グルーヴの輪が熱く盛り上がっていく。純粋なフラメンコの楽しみ方だ。

徳永兄弟OCTET_20230623紀尾井ホール

 そのリズムの波に乗るように、中原と鈴木がテーブルから離れ、ひと振りずつ踊りステップを刻む。それに続いてタップダンサーのSAROが舞台中央に登場し、自慢のステップを披露する。

 リズムと足音による音楽の中で、次は森田がベースソロを聴かせ、そこにもう一人のパーカッショニストKANが打楽器のリズムを添える。こうして全員が己の技を挨拶代わりに披露。役者が揃った。


 そして徳永兄弟がギターを手に、改めて舞台へ登場する。彼らの代表曲「ブレリア・デ・パドレ」から演奏は始まった。活動初期から弾き続けているこの曲は、自身の成長とともに常に進化を重ね続け、今の自分たちにとっての最上級の形で演奏を聴かせてくれる。

 続く「魂の旅人」は、ダブルパーカッションで音の厚みを増し多彩な音色を演出。

 「アランフェス協奏曲~スペイン」では重厚なビート感溢れるベースが骨太な土台を固め、ソロパートでも深く渋い音色が存在感を放った。

 「アスーカル・モレーノ」は一転して陽気なサウンド。カホンやコンガ、パルマも叩いて二人のパーカッショニストによる白熱したリズム・バトルが繰り広げられた。


 後半ステージは、3人のダンサーによるダンス・バトルからスタート。タップとフラメンコ、踊りのスタイルは違うけど三者三様の凄技の連発には目を奪われた。

 「カルメンフラメンコファンタジー」では曲の構成に合わせて前半と後半でパーカッションをスイッチ。演奏の変化に合わせて照明も替わり、音楽とライティングが織りなすハーモニーが広がる。

 照明が暗くなると、今回初披露となる「ネオフラメンコ」へ。ベースソロから始まり、兄弟それぞれのギターソロから踊りのソロへと続く。しなやかでいて力強い中原の踊り、鈴木は自然と内から湧き上がるようなシンプルな踊りで魅了する。彼らの舞踊表現に、これから目指すフラメンコの新境地を見た。

 「ダマ・デ・ノーチェ」ではSAROのタップダンスにフォーカス。飛んだり跳ねたり全身を駆使して自在にステップを刻み、ベースとダブルパーカッションが生み出すグルーヴとともに熱いステージを演出。

 ギターデュオの「アレグリアス」は、ホールの素晴らしい音響と相まってフラメンコギターの美しい音色に酔いしれた。


 ここで挨拶とメンバー紹介。この場面でこの日初めてマイクを持ち、第2弾もこの形式でやりたいと今後への意気込みを語った。

 ラストの曲は8人全員による「リベルタンゴ」。ボリューム感のあるサウンドの中、タンゴでは3人が鮮やかなステップを披露。

 アンコールは「シェイプ・オブ・マイハート~コーヒールンバ」、そして最後はやはりこの曲「ブレリア・デ・パドレ」。6人のパルマに支えられ、熱い演奏でステージを締めくくった。


 「音とリズムのバトル」を様々な対戦スタイルで楽しませてくれた今回のコンサート。観客はもちろんだが、一番楽しんでいたのは何といっても出演者本人たちだろう。互いのプレイをリスペクトし、心の底から楽しむ彼らの熱量が観客にも伝わり、客席とステージが一体となって熱く沸き立つような時間を堪能させてくれた。


【出演】

徳永健太郎(フラメンコギター)

徳永康次郎(フラメンコギター)

森田悠介(ベース)

ラファエル・モイセ・エレディア(パーカッション)

KAN(パーカッション)

SARO(タップダンス)

中原潤(パルマ&ダンス)

鈴木時丹(パルマ&ダンス)


【プログラム】

イントロダクション

ブレリア・デ・パドレ

魂の旅人

アランフェス協奏曲~スペイン

アスーカル・モレーノ


ア・カペラ

カルメン フラメンコ ファンタジー

Ⅰ:アラゴネーズ

Ⅱ:ハバネラ~闘牛士

ネオフラメンコ

ダマ・デ・ノーチェ

アレグリアス

リベルタンゴ


(アンコール)

シェイプ・オブ・マイハート~コーヒールンバ

ブレリア・デ・パドレ


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