第6回 LLAMAS DE FRAGUAS
【バイレ群舞部門/奨励賞】
(jueves, 21 de marzo 2024)
フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。
昨年の入賞者に、本番までの道のりや自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。
第6回目は、バイレ群舞部門で奨励賞を受賞したLLAMAS DE FRAGUAS(ジャマス・デ・フラグアス)のメンバー、鰐部恭江さんのエッセイをご紹介します。
舞台写真/一般社団法人日本フラメンコ協会 提供
編集/金子功子
Edición por Noriko Kaneko
私たちは今枝友加先生クラスの仲間です。仕事も違えば住まいも愛知、岐阜、奈良、京都と離れています。みんなで揃って稽古してもらう時間は限られていましたので、本番まではそれぞれに次のような事をしていました。
・振りは動画で共有し各自稽古する。
・先生主体の長時間特訓では振付以外にも、基礎に立ち返る、ゆっくり確認する事を重視。筋トレもとても有益でした。
・ホールでの練習
・暗闇に慣れる練習(電気をつけない)
・リモートミーティングでの話し合い
・日本フラメンコ協会で過去の受賞作品のビデオ鑑賞
先生から繰り返し注意された事は、群舞ならではの一糸乱れぬまとまりでした。あらゆる角度、腕の位置、指の形、視線、タイミング、意志や方向性。それらが一つの大きな渦となること。ソロや個性とはまた違った大きなテーマの一つでした。
体調管理の難しさも痛感しました。知らず知らずのうちに蓄積された疲労でケガをしたり、数週間前に感染症に罹患してしまったり等々、気を付けても防ぎ切れませんでした。仲間に心配かけまいと誰も口にはしませんでしたが平均年齢51歳の私たちは、皆、身体も心もギリギリの状態だったのだろうと思います。
メンバーが全員に買ってくれたお守りと共に誰一人欠ける事なく、東京入りできた喜びはこの先も忘れることはありません。
東京入りしてから本番までで、よかった事がいくつかありました。
・皆で同じホテルに泊まり、ホテルでゆっくりメイクをして会場入りできた。
・前日にガルロチで素晴らしい舞台をみてフラメンコを再確認。
・当日は美味しいお弁当をデリバリー。
・バックのアルティスタもテーマカラーを衣装に取り入れてくれて一体感が増した。
とにかく少しでもリラックスでき、元気で楽しい気分になれるように心掛けました。
本番はそれぞれに思うことはあったにせよ、今までの一番が出せたはずです。私たちの合言葉「本番は身の程知らずになれ!」が発揮できたのではないでしょうか。
奨励賞は本当に嬉しかったものの、あの日、あの舞台に立った他の群舞も本当に素晴らしかった。地方組も多く、台風による交通機関の乱れなど様々な苦労はどこのチームにもあったと思います。賞はたまたま私たちが頂けただけ。きれい事のようですが、出演した人にしかわからない、特別なものが新人公演にはあると思います。
それよりも全員で舞台に立てた事、全力で支えてくれたアルティスタと共に有観客で踊れた事、立派な照明を当ててもらい先生や応援してくれた方々や多くのお客様に見て頂けたこと、そこに至るまでの道のりすべてが何よりの宝です。
また嬉しいことに2月、京都で群舞を踊らせ頂きます。今は稽古の真っ最中で(※編集部注:執筆時は1月末)、新人公演では気付けなかった発見が沢山あります。あの時に知りたかった(笑)! でもあの時はあれが精一杯。フラメンコは果てしなく遠い存在です。それでも先生の言葉にある「いつだって途中経過で良い」のでしょう。
これからも今枝先生の作品「Abandoraos」を大切にしていきます。
ありがとうございました。
【プロフィール】
LLAMAS DE FRAGUAS(ジャマス・デ・フラグアス)/今枝友加名古屋クラス所属の7名で構成。
石井あゆみ(愛知)、清田惠子(愛知)、平和美(奈良)、服部亜希子(京都)、新美左智子(愛知)、渡辺なおみ(岐阜)、鰐部恭江(愛知)
【新人公演とは】
一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。
プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。
バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。
(*一部、ANIF公式サイトより引用)
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