第2回 吉田智宏
【バイレソロ部門/奨励賞】
(jueves, 22 de febrero 2024)
フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。
昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。
第2回目は、バイレソロ部門で奨励賞を受賞した吉田智宏さんです。
舞台写真/一般社団法人日本フラメンコ協会 提供
編集/金子功子
Edición por Noriko Kaneko
新人公演には2007、2009、2010、2012年と出場し、当時はそこで挑戦を終わりにしました。そこからは自分のペースで亀の様に歩んでいましたが、仕事が忙しくまともに練習もできない時期が長く続き、このままフラメンコから離れていくのかなと感じていた時にコロナ禍となりました。在宅で過ごす日々が増えたため、とりあえずジョギングを始めました。ジョギングも一生懸命やっていると色々と意欲が湧いてきまして、フラメンコの練習も少しずつ再開するようになりました。フラメンコの練習も続けていると意欲が湧いてきまして、目標を持って取り組みたいと思うようになりました。それには時間をかけ創りあげることが出来る新人公演だろうと、前言撤回で出演の意思を固めました。子供達にも自身が真剣に取り組んできたことをきちんと見せたい想いもありました。
それが2021年の新人公演で、自分の中では出し切った、これで終えようと思いましたが、無観客開催だったこともあり、どこか燃焼し切っていない気持ちもありました。時間がたつにつれ、子供たちにも生で見せることが出来ていない、どうせなら、今自分の持っているものを全てぶち込んだ踊りを踊ってから終わりにしたいと思い、2023年の出演となりました。どんな結果であろうと、新人公演は今度こそ最後と決めていました。
本番を迎えるまでに大変だったのは、7月初旬に尿管結石をこじらせ腎盂腎炎となり約1週間入院したことです。腎盂腎炎は治癒したものの、結石を取り除くには再入院・手術が必要でしたので、尿を通すための管を尿管に残置した状態で退院しました。さすがに新人公演は無理かなと思いましたが、医師に事情を話したところ運動は問題ないとのこと、やれるだけやってみることにしました。そこからは尿意との闘いで、管が入っているため踊るとすぐに尿意をもよおし、しかも血尿という始末。新人公演当日にも何回トイレに行ったことか……。私の身体の状態を知っていた大渕さんや容昌さんが本番中“トゥーボ!”とハレオをかけていましたが、スペイン語のtubo=管 です。なんのこっちゃですね。シモの話、かつ何の参考にもならずスミマセンがホントに苦労しました……。
結果を出すために心がけたことなどは特にないのですが、どんな結果が出たとしても後悔しないように今の自分が持っているものを全てぶち込む、かつ、技術・体力的に限界に近いチャレンジングなものも取り入れるという姿勢で臨みました。
本番当日は、舞台上で練習できる時間がありました。細かい足になればなるほど板によって感覚が変わってきますので、事前に確認できたことは大変有難かったです。
選考結果が届き、自分の名前を見た時には、当然嬉しい気持ちはありましたが、なんだかほっとしたという感覚の方が大きかったかもしれません。感謝の気持ちも自然と沸いてきました。受賞後もスタンスは変わらないですが、あきらめず、泥臭く、限られた中でいかに全力を尽くすか、という姿勢で今後も取り組んでいきたいです。
新人公演に挑戦される方にお伝えしたいこととして、私からあれこれ申し上げるのもおこがましいですが、あまりシリアスになり過ぎず続けていく、ということでしょうか。自身の経験で言うと、遠回りをしたり、亀の歩みだったり、立ち止まったり、あれやこれやウジウジ考えたりしましたが、それもまた人生。50歳の今は、これでよかったんだろうなと思うようになりました。
何事も真剣に取り組めば、自分の望んだ形とは違うかもしれませんが、得るものは必ずあると信じています。
【プロフィール】
吉田智宏(Tomohiro Yoshida)/広島県三原市出身。大塚千津子氏に師事しフラメンコを始める。現在、サラリーマン、フラメンコ、子育ての3足の草鞋を履き絶賛奮闘中。
横浜を拠点にひたすら自主練、たまにライブ出演。第32回新人公演(2023年) 奨励賞、ANIF会員賞(会場)受賞。
【新人公演とは】
一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。
プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。
バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。
(*一部、ANIF公式サイトより引用)
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