第10回 地紙直美
【バイレソロ部門/準奨励賞】
(jueves, 18 de abril 2024)
フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。
昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。
今期最終回となる第10回目は、バイレソロ部門で準奨励賞を受賞した地紙直美さんです。
舞台写真/一般社団法人日本フラメンコ協会 提供
編集/金子功子
Edición por Noriko Kaneko
新人公演は初挑戦でした。
エントリーした理由はいくつかありますが一番大きかった事は、とある感情をフラメンコに乗せて昇華させたいという思いからでした。日本の多くのフラメンコ関係者が注目してる「新人公演」を目標に定め、これに打ち込もうと思いました。
若い頃、当時の師匠に「新人公演に出てみない?」と声を掛けていただいたのですが、その頃の私は「そんな大それた事、絶対に無理」と思いました。
主婦業と育児とフルタイムで保育士をしながら、フラメンコにも没頭していた頃でした。時間も体力もいっぱいいっぱいで、自由になるお金もないから無理だと決めてしまっていました。
あれからの長い年月、ずっとフラメンコを追いかけ続けてきました。フリーになりフラメンコライブを企画しては踊り続け、教室を立ち上げて13年が経っていました。
そして時々ですが、新人公演を観に行っては、プログラムにコメントを書いたりして勝手に奨励賞を予想したりしていました。
その受賞者予想が、いつもかなりの確率で当たっていたんです。
それも出場してみようと思った理由の一つでした。
私が良いと思うフラメンコに真摯に取り組んで、選考委員の先生方に講評していただきたいと思いました。憧れの先生方からダメ出し、今後の課題をいただいて、もっと前進したかった。
私は愛媛県からの参加だったので、本番の2日前に東京入りし、スタジオを予約して疲れない程度に練習しました。
本番のタイムスケジュールを見た時は待ち時間が長いなと思っていたんですが、終わってみればそんな事無かったです。
ゆっくりヘアメイクして、出演者用に開放していただいた二階席でストレッチと瞑想をする時間が取れました。
これがとても良かったです。暗くてほとんど人が居ない場所なので、集中できる時間がとれて気が整いました。
楽屋がピリピリしてるかもと思っていましたが、それもそんな事なかった!
周りの出演者の方々とも少しお話しをして、皆さん親切でファスナー上げや安全ピン付けなど、衣装の事も助け合いました。
リハでは、様子を見る感じで踊ったら、バックの方々からそれぞれにアドバイスをいただきました。
あの3人の素晴らしいアーティスト達が後ろにいてくれた事がとても心強かったです。心内は倒れ込みたいくらい怖くなる時があり、お兄さん達(と呼んでます)にもたれたいくらいでしたが、全ては私の責任。私がしっかりと自分で立って踊らないと。
軸、呼吸、体幹、自然体でいる事、集中集中集中、と自分に言い聞かせました。
新人公演で願った事は、最後まで集中力が続くこと、エネルギーが満ちる事、バックのフラメンコが自分の根幹まで沁みる事でした。
この願いは、だいたいは叶いました。特にシギリージャは自分の奥深くまで浸透して痛いほどだった。
終わってみて「新人公演楽しかったですか?」と聞かれる事がありました。
新人公演は楽しいものと評判なのでしょうか?
私は、本番は決して楽しかったとは言えません。ですが、とても幸せな経験でした。
離婚して子ども達が成人し、やっと自由に好きな事に没頭して挑戦する事が出来ました。ありがたく、幸せな時間でした。
関係者の皆さま、応援して下さった皆さま、支えあった友達、心から感謝致します。
ギターのエミリオさん、カンテの有田さん、素晴らしいフラメンコをありがとうございました。
指導や構成のアドバイス、本番のパルマでも支えてくれた三枝雄輔さん、沢山の学びをいただきありがとうございました。
【プロフィール】
地紙 直美 (Naomi Jigami)/沖縄県出身
1996年 愛媛県にて加地恵理氏に師事
短期渡西を重ね多くのスペイン人アーティストに学ぶ 公演やライブに多数出演
2011年 地紙直美フラメンコ教室を開講し、後進の育成に励む
2023年 日本フラメンコ協会新人公演バイレソロ部門準奨励賞受賞
2024年6月より沖縄へ移住、愛媛と両県で活動予定
【新人公演とは】
一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。
プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。
バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。
(*一部、ANIF公式サイトより引用)
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