(sábado, 12 de agosto 2023)
2022年12月2日(金)~18日(日)
Showレストラン「ガルロチ」(東京・新宿)
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko
写真/近藤佳奈
Foto por Kana Kondo
2022年5月から再開された、ガルロチでのスペイン人アーティストグループによるフラメンコ公演。その1年の締めくくりとなる舞台を務めたのは、フラメンコの名門家系に生まれ日本でも多くのファンから支持されるペペ・トーレスと、セビージャの名舞踊手イシドロ・バルガスの娘でスペイン国内外の舞台で活躍するマヌエラ・バルガスのグループだ。歌い手には、若手でありながら貫禄の歌声を持つヘレス出身のマヌエル・デ・ラ・ニナが参加し、ギタリストには数々の有名ダンサーとの共演実績があるベテランのエウヘニオ・イグレシアスが加わる。当初の予定ではここに来日経験の豊富なカンタオール、モイ・デ・モロンも加わるはずだったが、直前で体調不良となり残念ながら来日は叶わなかった。
今回取材鑑賞したのはAプログラム。通常より1名少ない編成でのステージとなったが、いざ舞台が始まるとその少なさを全く感じさせない密度の濃いパワフルなパフォーマンスが繰り広げられた。
第1部のオープニングの演目はマルティネーテ。マヌエルが張りのある歌声を会場いっぱいに響かせ、観客の心をつかむ。歌を感じたままに自然体で踊るマヌエラは、その佇まいにフラメンコに対する誠実さが表れる。ペペは持ち前のリズミカルで弾力のあるステップを披露し、ギターとカンテの白熱していく演奏とともにキレのある力強さを印象付けた。
ギターソロでは、エウヘニオが繊細な音色とゆったり情感あふれるメロディーのタランタを奏でる。中盤からテンポを上げると疾走感とともに新鮮な情景を楽しませてくれた。
また、第2部冒頭はカンテソロの予定だったが、4人によるフィエスタのような舞台を展開。踊り手のマヌエラから歌い始め、ステージ中央で意気揚々とブレリアを歌い踊りフェステーラぶりを発揮する。次いでペペもカンテを自在に歌い生き生きと踊り、ステージで際立った存在感を放つ。軽快なギター伴奏とともに、互いに息の合ったパフォーマンスで観客を楽しませた。
踊りのソロは、マヌエラが1部の即興プログラムでソレアを、2部はロマンセを披露。父親から受け継いだ名家のスタイルを大切にするような、歌やギターと調和がとれた踊りで観る者を魅了する。
ペペは1部がアレグリアス。チャコールグレーのスーツに少し緩めたネクタイが、小粋で格好いい。曲の冒頭から軽快なパルマを響かせ、飄々としながらキレの良い踊りと足さばきに観客の目は釘付け。2部のソレアでは抑揚のある踊りと超人的な足技で場内の空気を圧倒した。
対照的な持ち味が魅力の二人の踊り手の舞台を観て、改めてフラメンコの幅広い魅力と奥深さを堪能した。今回はイレギュラーな状況ではあったが、それでも個々のアーティストがその持てるパフォーマンスを最大限に発揮してくれたことで、人数に関係なくこんなにも素晴らしいステージが楽しめるのだということを証明した、心に残る公演だった。
【出演】
[バイレ]ペペ・トーレス(Pepe Torres)/マヌエラ・バルガス(Manuela Vargas)
[カンテ]マヌエル・デ・ラ・ニナ(Manuel de la Nina)
[ギター]エウヘニオ・イグレシアス(Eugenio Iglesias)
【プログラムA】
[1部]
・プレゼンテーション/マルティネーテ
・ギターソロ(エウヘニオ・イグレシアス)
・即興による演目(マヌエラ・バルガス)
・アレグリアス(ペペ・トーレス)
・フィン・デ・フィエスタ
[2部]
・カンテソロ
・ロマンセ(マヌエラ・バルガス)
・ソレア(ペペ・トーレス)
・フィン・デ・フィエスタ
【プログラムB】
[1部]
・プレゼンテーション/タンゴ&ブレリア
・ギターソロ(エウヘニオ・イグレシアス)
・カンティーニャ(マヌエラ・バルガス)
・即興による演目(ペペ・トーレス)
・フィン・デ・フィエスタ
[2部]
・カンテソロ
・タラント(マヌエラ・バルガス)
・セギディージャ(ペペ・トーレス)
・フィン・デ・フィエスタ
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