(martes, 24 de octubre 2023)
フラメンコの本場スペインでは、一年を通して大小さまざまなフェスティバルやコンクールが各地で開催されています。またスペインのみならず、近隣のフラメンコ愛好国でも有名なイベントが行われています。
それらの特色や、さらには素晴らしいアーティストに贈られる賞について、30年以上スペインで活動を続けるフラメンコ・ジャーナリスト志風恭子さんに解説していただきました。
スペインや海外への旅行を計画するときには、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか?
文/志風恭子
Texto por Kyoko Shikaze
《1月》
●ニームのフェスティバル(フランス)
1991年から始まったフランスのフラメンコ祭。毎年1月中旬、フランス南部、ローマ時代の遺跡で知られるニームの街で開催されている。イスラエル・ガルバンやロシオ・モリーナ、エバ・ジェルバブエナといった一流アーティストが毎年出演し、マスタークラスや講演、展覧会なども行われる。現代舞踊先進国フランスという土地柄もあるのか、伝統的なものより現代的なアーティストの出演が多い印象。地元フランスのアーティストの公演もある。
●オランダのビエナル(オランダ)
2006年11月に始まったオランダのビエナル。アムステルダム、ユートレック、ロッテルダムなどで公演を行う。2011年からは1月開催に。
当初はディエゴ・カラスコやモライートなどヘレスのアーティストの出演が多く、ドキュメンタリー映画『エル・カンテ・ブエノ・ドゥエレ』も制作された。
【動画】
また、フラメンコとクラシックやワールドミュージックなど、他ジャンルのミュージシャンとの共演での舞台をプロデュースしたりするなど意欲的なプログラムを展開している。
パンデミックの影響で2021年は秋の開催となり、22年も12月にいくつかの公演が行われた。2023年は1月末から2月と12月に、そして24年の1月末に開催されるという。ビエナル(=2年に1回)という言葉がもはや無意味になっている感がある。
《2月》
●ヘレスのフェスティバル
1997年にカディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで始まった、フラメンコとスペイン舞踊に特化したフェスティバル。当初は4月に開催されていたが、2001年から2月末から3月にかけての2週間に変わった。
最大の特徴は第一線の舞踊家たちによる、初心者からプロまでを対象とした短期クラス。受講者はメイン会場であるビジャマルタ劇場公演を無料で鑑賞できることもあり、世界中からフラメンコ練習生たちが集まってくる。
劇場公演にも若手からベテランまで幅広い層のアルティスタが出演し、伝統的なフラメンコ舞踊からコンテンポラリー風のもの、アカデミックなスペイン舞踊等とバラエティにとんだプログラムをみせる。舞踊以外でも小さな会場でのカンテやギターのリサイタル、入場無料のペーニャ公演等、魅力的な演目を目当てに、毎年やってくるファンや関係者も多い。それを見込んでフェスティバル主催以外の短期クラス(舞踊、ギター、カンテ)や公演、イベントなども多く行われている。これまでに鍵田真由美/佐藤浩希、小島章司の日本人主演公演も行われている。
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2011年からの公演のダイジェスト映像視聴可能
●タコン・フラメンコ祭
2012年に始まったフラメンコ舞踊祭。毎年、アンダルシアの日2月28日近辺に行われる。2016年はアンヘリータ・バルガス、18年はマノロ・マリンというようにベテラン舞踊家らへのオマージュが行われている。2018年には林結花、萩原淳子が出演している。
《4月》
●ビエナル・デ・マラガ
2005年にマラガ県の主催でマラガ・エン・フラメンコとして始まり、第2回目の2007年には第一線のアルティスタをそろえ、1ヶ月に渡り開催。その後6年間中断し2013年に復活、以前からあるフェスティバルなども取り込み、地元アーティストを中心に、半年にわたる期間、ペーニャなどでの公演や展覧会なども含んだので本来の意味のフェスティバルとは少々違うかもしれない。2021年は7月から9月、23年は4月から5月と短い期間での開催に戻ったようだ。
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《6月》
●ポタヘ・ヒターノ
セビージャ県ウトレーラで1957年に始まったスペインで最も古いフラメンコ・フェスティバル。毎年6月に開催される。もともとはキリスト像の信者会で豆のシチュー、ポタヘを食べていたときにフラメンコの歌が始まったのが最初とされる。ここをお手本にモロン・デ・ラ・フロンテーラのガスパチョ、レブリーハのカラコラー等が始まったといわれる。毎年フラメンコのアルティスタや有名人などへのオマージュを行い、多くの観客を集める。
●アルグルグー
セビージャから東へ45キロ、人口2万の町で2003年に始まった比較的新しいフラメンコ・フェスティバル。グルグーという名はこの地ゆかりのニーニャ・デ・ロス・ペイネスの代表曲にちなんだもので、ニーニャ・デ・ロス・ペイネスの思い出に、と副題がついている。1週間弱に渡って公演や講演、展覧会などが開催されるが、メインとなるのは金曜土曜の公演。多くのアーティストが一夜に登場する伝統的なフェスティバルの形ではなく、1日の公演に出演するのは2人で野外公演にも関わらず劇場公演のようにじっくりとみせるのが特徴。毎年6月中旬に開催される。
©︎Kyoko Shikaze /2009年のフェスティバルで歌うミゲル・ポベーダ。今は野外ではなく劇場公演
●アルバカーキ・フラメンコ祭(アメリカ)
1987年に始まったというから現在も続いているスペイン以外の国で開催されるフラメンコ祭の中では最も長い歴史を誇るアルバカーキ・フラメンコ祭。スペイン人アーティストたちにはスペイン語読みの「アルブルケルケ」と呼ばれて親しまれている。アメリカのニューメキシコ、アルバカーキの、ナショナル、インスティートゥート・オブ・フラメンコとニューメキシコ大学が主催するこのフェスティバル、毎年スペインから第一線で活躍するアーティストを招き、公演だけでなくクラスも行う。
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●ラ・ノチェ・ブランカ・デル・フラメンコ
コルドバの町の広場など市内各所で夜を徹してフラメンコ公演があるという世界で唯一のこのイベントは2008年に始まった。公演は入場無料(一時一部有料になったこともあった)ということもあって、多くの市民があちこちの公演を観て歩く。有名なアルティスタだけでなく地元のアルティスタによる公演も開催される。毎年6月中旬の週末の開催。2010年には萩原淳子らの日本人クアドロも出演した。
©︎Kyoko Shikaze /2010年のクアドロ出演者。誰でしょう
●グラナダ国際音楽舞踊祭
1952年スペイン外務省と文化省の後押しで始まった、スペインで最も古い歴史を誇る音楽舞踊祭。毎年6月から7月にかけて3週間に渡って行われる。中心となるのはクラシック音楽とバレエだが、スペイン舞踊/フラメンコも第2回より必ずプログラムされている。アルハンブラ内のヘネラルフェ野外劇場、カルロス5世宮殿、アラヤネスの中庭をはじめ、サン・ヘロニモ修道院など市内の劇場だけでなくモニュメントが会場になるのも魅力で、世界中から観客が訪れる。またメインのプログラムのほかにもFEX の名で、グラナダ市内及び県内でこども向きの公演なども含むより幅広い公演も行われている。
©︎Festival de Granada/アラヤネスの中庭での公演。猫も聴いている
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《7月》
●コルドバギター祭
毎年7月上旬にコルドバで行われるギター祭。1981年にコルドバ出身でロンドン在住のギタリスト、パコ・ペーニャの主宰で開始されたものが、その後コルドバ市の主催と変わったもの。グラン・テアトロ、ゴンゴラ劇場、アセルキア野外劇場等を会場にフラメンコ、クラシック、ロック、ジャズと幅広いジャンルのギター音楽のコンサートを行うと同時に、トップアーティストたちによる短期クラスを開講。クラシックギターだけでなく、フラメンコもギター、バイレ、カンテのクラスが行われる。
©︎ Kyoko Shikaze/2010年のパコ・デ・ルシア公演アンコール。踊っているのはカルペータ
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※2013年までで、それ以後の更新はない。
●カラコラー
毎年7月に開催されるレブリーハのフラメンコ・フェスティバル、カラコラー。1966年秋に始まったこちらのフェスティバルも、もともとは1日だけのものだったが今は1週間に渡り、コンサートや講演、展覧会が開催されるようになった。地元出身のアルティスタが出演することが多い。2019年には萩原淳子が出演している。
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(※フェスティバルオフィシャルではないがレブリーハのフラメンコ専門チャンネル)
●ベラーノス・デ・ラ・ビジャ
マドリードの夏の夜を彩るフェスティバル。主催はマドリード市。クラシックからポップス、バレエ、ジャズ、フラメンコと様々な公演が行われる。90年代にはレティロ公園でフラメンコ公演が行われ、その後もコンデ・ドゥーケ、サバティーニ公園などの野外特設劇場での公演が中心となっている。
●フエベス・フラメンコス
カディスのペーニャ、エンリケ・エル・メジーソが主催する、7月下旬から8月に渡る夏の木曜の夜の公演。バル アルテ・デ・ラ・カンデラリアを舞台に、ベテランから地元の若手までカンテとバイレで毎週、数人のアルティスタが登場する。
●フラメンコ・フェスティバル(アメリカ、イギリス)
2001年アメリカ、ニューヨーク、ワシントン等を舞台に始まった“フラメンコ・フェスティバル”。スペインからのプロデュースで04年からはロンドンでも始まり、東京、パリ、モスクワなどで開催されたことも。ニューヨークは3月から4月、ロンドンは7月の開催。舞踊中心のプログラムだがギターやカンテのコンサートも。また、フェスティバルがプロデュースする作品もあり、ヘレスのフェスティバルで上演されたこともある。
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●モン・ド・マルサン フラメンコ芸術祭(フランス)
フランス南西部、スペイン国境からもそう遠くない山間にある人口3万人ほどの街で行われる、海外フラメンコ祭の中では屈指のフェスティバル。1989年にスペイン国外で最も大規模なフラメンコ・フェスティバルを、という思いで始まったという通り、毎年、第一線で活躍するアーティストが登場する。これまでにパコ・デ・ルシアやマヌエラ・カラスコ、エバ・ジェルバブエナらも出演している。初期はウトレーラ、レブリーハのアーティスト中心のプログラムを組むなど、ニームに比べるとどちらかというと伝統的なタイプのアーティストの公演が多かった印象だが、近年はイスラエル・ガルバン(23年は怪我のため出演できず、ヘスス・カルモナが公演)をプログラムに入れるなど、より幅広いプログラムになっているようだ。
《8月》
●カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル
ムルシア州のラ・ウニオンで毎夏、8月初旬に開催される。かつて鉱山の町として栄えたこの町で公演した故フアニート・バルデラマが自分の公演でタランタを歌おうとした時、地元の人がその美しさを忘れていることに気づいたことがきっかけで、1961年にカンテ・デ・ラス・ミーナス(=鉱山の歌)といわれるジャンルのカンテ・コンクールとして始まった。3回目から8月開催となり、やがて審査中に舞踊団などが公演するようになり、その後、コンクールとは別の日に公演が行われる今の形になっていった。
1983年にギター部門が、94年に舞踊部門、2009年にギター以外の楽器部門も新設され、現在では11日間に渡り開催、その最後の4日間がコンクール。最終日の決勝はテレビで全国中継されたこともあるなど、広く一般にも注目されている。
そのコンクールからはマイテ・マルティン、ミゲル・ポベーダらが巣立ち、公演では故パコ・デ・ルシアをはじめ、サラ・バラスやエストレージャ・モレンテといった人気スターやスペイン国立バレエ団など大物が数多く出演する。日本人ではかつて小松原庸子が開会宣言をし、舞踊団公演も行われたほか、コンクールにも何人かの日本人が出場している。
©︎ Kyoko Shikaze /2009年コンクール決勝での井上圭子。これまでに平富恵、南風野香、丹羽暁子、石川慶子らが準決勝で踊っているが、決勝に進んだのは井上だけ
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古い映像もたくさん。現在活躍中のアルティスタの若き日も見られます。
●ヘレスのブレリア祭
1967年に始まった、ブレリアの故郷、カディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで開催されるフラメンコ祭。ブレリア祭り、というその名からブレリアを歌い踊る祭りと誤解されることもあるが、決してブレリアに特化したフェスティバルではない。ただし、ブレリアを歌い踊る地元のアルティスタによるクアドロが出演したり、スター格もブレリアを歌ったりなどする。長らく闘牛場が会場だったが14年はマメロン広場で、入場無料で開催された。以降、アルカサルやアラメーダなど開催場所は何度か変わっているし、以前は毎年収穫祭期間中の9月の第一土曜日の開催だったものが8月中旬、3日間にわたっての開催となり、それぞれ若手、国際、ヘレス、のテーマのもと行われる。2018年にはヘレス・コン・ハポンというテーマで小島章司、鍵田真由美、佐藤浩希、森田志保、今枝友加らもヘレスのアーティストとの共演で出演している。
なお、この年からブレリア祭とビエルネス・フラメンコス(8月にヘレスで、その名の通り金曜日に毎週行われるフラメンコ公演。ヘレスのアルティスタの幅広さ、奥深さが感じられるプログラム。2023年はアタラジャ庭園で行われた)、フラメンコ以外のポピュラーも含むノチェス・デ・ボエミア、7月考古学博物館でのインプロ公演(フラメンコもあり)MIMAなどの公演シリーズをまとめてカロー・フラメンコというイベント名をつけている。
©︎ Kyoko Shikaze /2018年8月24日 ブレリア祭、ヘレスと日本。アンコールにて
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ヘレス市主催のフラメンコのイベントの映像が盛りだくさん。日本人公演のビデオも
●フラメンコ・オン・ファイア
2023年で10年目となった北スペイン、パンプローナで8月末に開催されるフラメンコ・フェスティバル。牛追い祭で有名なこの街はフラメンコギターの巨匠サビーカスの生まれ故郷ということで、アメリカ在住だった彼のアルバムのタイトルからこの名となった。1週間に渡り、大劇場公演を中心にホテルでの公演、無料で聴ける広場のバルコニーからのライブ、講演など様々な催しが開催される。その充実したプログラムで、歴史は浅くとも今やスペインでも屈指のフェスティバルと認識されている。
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《9月》
●アントニオ・マイレーナ・カンテ・ホンド祭
20世紀中盤のフラメンコを支えた歌い手アントニオ・マイレーナの生まれ故郷セビージャ県マイレーナ・デル・アルコールで毎年9月に開催されるフラメンコ祭。メインとなるのは最終日、土曜日のガラ公演だが、その前日にはカンテ・コンクールの決勝があり、それまでも公演や講演、展覧会などが1週間に渡って開催される。1962年から行われている古い歴史を誇るもののひとつ。
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●ビエナル・デ・フラメンコ
1980年4月にセビージャ県のペーニャ協会の後押しにより、セビージャ市の主催で始まった世界最大のフラメンコ・フェスティバル。ビエナルとは2年に1度という意味であり、以来偶数年に約1ヶ月に渡り開催されている。第2回目からは秋の9月開催となった。90年までは毎回、カンテ、バイレ、ギターそれぞれを主役にし、第一線で活躍中のプロによるヒラルディージョのコンクールも行われた。セビージャで万博が行われた92年は8作品のみというイレギュラーな形だったが、結果としてこれ以降アーティストが提案する作品を監督が選ぶという形が定着し、それが他のフェスティバルのお手本となっていった。
一流アーティストが数多く出演するのでフラメンコの見本市的意味もあり、世界中から関係者やファンが集まる。また小松原庸子、小島章司を始め日本のフラメンコ・アーティストたちも複数出演している。
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※2020年フラッシュモブ振り付けまでで、その後の更新なし。
《10月》
●シウタ・フラメンコ
1994年バルセロナ旧市街のある地区で始まったシウタ・ベリャ・フラメンコ祭を引き継ぐ形で2012年に始まったフェスティバル。毎年5月下旬にバルセロナの舞踊の殿堂メルカ・デ・フロルを会場に行われ、フラメンコ以外のジャンルとの共演や外国人アーティストの起用、またパフォーマンスの実験的な作品も取り上げるなど多角的なアプローチをしていた。2018年以降は舞台が様々なホールやライブハウスなどに変わり、コロナ禍で20年21年は10月の開催。30年目の2023年も10月の開催となった。これまでに小島章司や中田佳代子も出演。
●スーマ・フラメンカ
2006年に始まった、マドリード州によるフラメンコ・フェスティバル。メイン会場といえるのは2009年に落成した州立のカナル劇場だが、ほかの市内の劇場やエル・エスコリアルなど州内の町の劇場での公演も行われる。また、マドリード市内にあるタブラオでは期間中特別プログラムが組まれることもある。2019年までは毎年6月の開催だったが20年は12月になり、21年以降、10月から11月にかけての開催となった。日本人では2007年に瀧本正信が出演している。
●ミステーラ・フラメンコ祭
セビージャから南へ22kmの農業の町、ロス・パラシオス・イ・ビジャフランカ市とその地のペーニャ“エル・ポソ・デ・ラ・ペーナ”の共催によるフェスティバル。2020年から10月の開催となったが、かつては毎年6月上旬に開催されていた。
この町の名産のひとつである甘口ワイン、ミステーラの名を冠し1973年に始まった。その後、規模を大きくし1週間に渡るものとなった。2011年には経済危機の影響で1年休止されたが、翌年復活。2014年は水曜から土曜までの劇場公演のほか、写真展なども開催。また注目の若手アーティストにベネンシア-フラメンカ賞を贈り、授賞式と合わせそのアーティストのリサイタルを開いている。これまでにマヌエル・バレンシア、パロマ・ファントバ、ホセ・バレンシアらも受賞し、最近では21年レジェス・カラスコ、22年アゲダ・サアベドラ、23年はアントン・ヒメネス(ピアノ)が受賞している。
《11月》
●コルドバのコンクール
1956年に始まった最も古い歴史を誇るフラメンコ・コンクールで、3年に1度の開催。正式名はコンクルソ・ナショナル・デ・アルテ・フラメンコという。以前は歌、舞踊、ギターそれぞれのジャンルが、いくつかの曲目ごとに細かく部門が分かれ、それぞれアルティスタ名のついた賞が贈られていたが、2010年に大幅に規則が改変され、現在は歌、舞踊、ギターに一人ずつの優勝者のみとなった。現在は11月の開催で、コンクールの前後にはフラメンコ公演がグラン・テアトロでいくつか行われるほか、予選、決勝とも観覧可能。
【フェスティバル以外の定期的なフラメンコ公演】
一定の期間と場所で公演が集中して行われるフェスティバルのほかにも、より長期に渡り行われるシクロとよばれるものがある。
アンダルシア州によるフラメンコ・ビエネ・デル・スールは1996年にセビージャのセントラル劇場で始まったフラメンコの公演シリーズ。現在はセビージャ以外でもグラナダのアルハンブラ劇場、マラガのカノバス劇場など各地で行われている。2023年からはアンダルシア・フラメンコと名前が変わったが現在も継続中。2023年は9月の週末に10公演とロシオ・モリーナとの対話会などがセントラル劇場などで行われた。
また同じくアンダルシア州の主催でマドリードの国立音楽堂の室内楽ホールでアンダルシア・フラメンカ(https://www.cndm.mcu.es/ciclo/andalucia-flamenca)シリーズも秋から春にかけて月1回行われている。
そのほか、セビージャの銀行カハソルの財団主催によるフエベス・フラメンコス(https://fundacioncajasol.com/tag/jueves-flamencos/)はその名の通り、木曜日に行われるフラメンコ公演で2001年に始まった。会場はセビージャの中心部にあるホアキン・トゥリナ・ホールだったが、閉鎖に伴い市役所側のカハソル劇場に変更された。
スペイン北部バスク地方のビルバオでも、BBK という銀行によるフラメンコの公演シリーズBBK フラメンコ(https://salabbk.bbk.eus/)が行われている。
【フラメンコの主な賞】
◎プレミオ・ナショナル(スペイン文化省)
プレミオ・ナショナルという名の賞は、フラメンコ関係でもコルドバのコンクールでの賞やヘレスのフラメンコ学会の賞などあまたある。が、中でも「国家賞」と訳されるものはスペイン文化省が毎年贈るもので、文学、演劇、造形美術など様々な分野のものがあるが、フラメンコに関係するのは音楽と舞踊であろう。音楽ではエンリケ・モレンテ、マノロ・サンルーカル、舞踊ではアントニオ・ガデス、クリスティーナ・オヨス、ロシオ・モリーナらが受賞している。
◎プレミオ・ナショナル(フラメンコ学会)
1958年、フラメンコ学者らによってヘレスに創立されたフラメンコ学会も、1964年から80年までは年1回、以後は不定期に研究書やアルティスタに賞を贈っており、こちらもプレミオ・ナショナルという。ナショナルという言葉は国家の、という意味とともに国内の、国民の、という意味もあるので、こちらは「国内賞」とでも訳すべきかと思われる。なお、フラメンコ学会と呼ばれるものはコルドバ、グラナダ、セビージャ大学にもある。
◎マックス賞
1998年にスペイン著作権者協会のイニシアティブで始められた舞台芸術の賞。アメリカのトニー賞や英国のローレンス・オリビエ賞などを参考にしたもので、演劇やミュージカル、舞踊を対象にする賞。アントニオ・ガデス、エバ・ジェルバブエナ、イスラエル・ガルバンら多くのフラメンコ舞踊家たちも男女別のダンサー部門、振付部門、舞踊作品部門などで多数の賞を受賞している。
◎ロルカ賞
アンダルシア舞台芸術アカデミーによる舞台芸術を対象とした賞で、2013年に始まった。舞踊部門では振付を除いてコンテンポラリーとフラメンコ部門が分けてあり、フラメンコ作品、女性フラメンコ舞踊手、男性フラメンコ舞踊手の3つの賞がある。
◎タリア賞
2023年に第一回の授賞式が行われたスペイン舞台芸術アカデミーによる賞。舞踊部門で、男性舞踊手、女性舞踊手、舞踊作品、振付、オリジナル舞踊音楽の部門があり、第一回は男性がイスラエル・ガルバン、女性がロシオ・モリーナ、作品がマリア・パヘス『デ・シェヘレサデ』という結果だった。
◎フラメンコ・オイ賞
2000年に当時「フラメンコ・オイ」というビデオ・マガジンを企画販売していたジャーナリスト、アルフォンソ・エドゥアルド・ペレス・オロスコによって創設された賞で、フラメンコ関係の批評家/ジャーナリストらの投票によって賞が決定する。歌やギターは基本、その年度に発表されたCDを基準にして選ばれるが、書籍やプロモーション、また男女別の舞踊家に対する賞もあった。2015年頃が最後になったようだ。
◎コンパス・デル・カンテ賞
セビージャのビール会社クルスカンポの財団がフラメンコの功労者に贈る賞。1984年から2002年までは毎年、以後は不定期に授与されている。これまでの受賞者はピラール・ロペス、フェルナンダ・デ・ウトレーラ、パコ・デ・ルシアらいずれもフラメンコの歴史に名を残すアルティスタばかりだ。2019年のマヌエラ・カラスコ以降、行われていない。
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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