(miércoles, 2 de agosto 2023)
文/志風恭子
Texto por Kyoko Shikaze
暑いですね。最高気温が40度を超えることも珍しくないセビージャです。
気温は高くとも湿度が少なくて過ごしやすい、とはよく言われることですが、体温を超える暑さはやはりきついです。涼しい朝のうちに用事を済ませて、日中は鎧戸も降ろし陽光が入らないように家の中は暗くして過ごし、夜気温が低くなってきてから外に出る、という人が多く、一番暑い午後の14時から18時くらいまでの時間帯、街中はひっそり。反対に子どもたちは、一杯飲んでる親のそばで夜中の12時過ぎまで遊んでいたり。シエスタ、昼寝の必要性、アンダルシアの夏を体験すると実感すると思います。
【野外公演の季節】
5月の終わり頃から10月くらいまでの半年間、多くの野外公演が開催されます。この時期は雨も少なく、各地で開催される野外での公演はジャンルも様々。入場料だけで何万円もするイベントもあれば無料のものもあったりするので、好みと予算で誰でも楽しめる夏のお楽しみと言えるでしょう。
【イタリカ国際舞踊祭】
6月のグラナダ国際音楽舞踊祭、7月のコルドバのギター祭と、フラメンコに特化しているわけではないフェスティバルでもフラメンコ公演はあります。セビージャだと6月から7月にかけて行われるイタリカ国際舞踊祭。その名の通りダンスのフェスティバルで、今年のプログラムはコンテンポラリーとフラメンコ系が半々くらいの感じでした。「フラメンコ系」と書いたのは、伝統的なフラメンコ曲を踊るだけのものではない作品が多いから。フラメンコをベースとしているアーティストでも、その作品には伝統的なフラメンコ曲を一曲きちんと踊らない作品もあります。
今年の同フェスティバルの閉幕作品となったロシオ・モリーナ『カルナシオン』もそんな作品。本人もこれはフラメンコではない、パフォーマンスよ、と言っているくらいですが、昨年のビエナルで上演されて、ビエナルはフラメンコのビエナルとうたっているだけに、フラメンコじゃない、などとも評されたのですが、それ本人がもともと言っています。フラメンコ・アーティストの作品ということで広い意味ではフラメンコに入れてもいいのかも、と個人的には思いますが、伝統的なフラメンコが無いとフラメンコじゃないという人も多いのですね。その点、これは舞踊のフェスティバルなのでその辺の問題からも解放され、出演者はより自由に公演ができたのではないでしょうか。
Italica FestivalInternacional de Danza ©︎José Antonio de Lamadrid
今年のフラメンコ勢は、マヌエル・リニャン『ピエ・デ・イエロ』に始まり、
Italica FestivalInternacional de Danza ©︎Lolo Vasco
フェルナンド・ロメロ
Italica FestivalInternacional de Danza ©︎Lolo Vasco
マリア・モレーノ
Italica FestivalInternacional de Danza ©︎Lolo Vasco
フロレンシア・オス
Italica FestivalInternacional de Danza ©︎Lolo Vasco
サラ・カレーロ
Italica FestivalInternacional de Danza ©︎Lolo Vasco
ダビ・コリア
Italica FestivalInternacional de Danza ©︎Lolo Vasco
そしてロシオという布陣。なかなか強力です。今回は既に見ていたリニャンやマリア・モレーノ、フロレンシア以外を観てきました。オヨス舞踊団やアンダルシア舞踊団などで活躍したフェルナンドはピカソの言葉にインスパイアされた作品。サラ・カレーロは有限/死を、コリアは舞踏伝染病をテーマにした作品。いずれも実力派による意欲作でありました。
フラメンコをベースに持っていながら、フラメンコの技術や要素を使いながらも、フラメンコを表現するのではなく、その先なのか後ろなのか、自分がイメージしたものを、フラメンコの決まりに縛られることなく、自由に表現していくという流れは明らかにあるのだけれど、その中で頭角を表すということは多彩な才能が跋扈する舞踊全体の世界だけに、フラメンコの世界で一歩抜きん出る以上に難しいと思います。やはりそこはフラメンコという唯一無比のアートを上手に使うのも戦略としてありじゃないか、他の舞踊の文法を借りてのフラメンコ表現という形はできないのだろうか、など色々考えさせられたことでした。
【コンクール】
フェスティバルのほか、各地でコンクールも開催されています。
マドリードでは歴史ある、スペイン舞踊とフラメンコの振付コンクールが開催されました。1992年に始まったこのコンクール、初期の受賞者にはアドリアン・ガリアやスペイン国立バレエ監督を務めたエルビラ・アンドレスらの名前も見え、若手の登竜門的意味合いもあります。今年の優勝はダビ・アセロ・デルガード、マドリードの舞踊学院出身。アイーダ・ゴメスなどの舞踊団で活躍した人だそうです。なお、ソロ振付2位のイレネ・モラーレスがヘレスのフェスティバル賞も受賞し、来年のフェスティバルに出演予定のようです。
先月カンテの結果をお知らせしたへーレン財団のコンクール。7月10日にはコルドバでギター伴奏の決勝が行われ、コルドバ県ルイシアナ出身のペドロ・ヘスス・ルナが優勝。2位はバダホス出身ホセ・アンヘル・カスティージョ、3位はマドリードのガブリエル・ゴンサレス・タピアとなりました。また、奨学金は1位のペドロ・ヘススとともに、ヘレス出身のホセ・ケベド“ボリータ・イーホ”に授与されました。名前の通りギタリスト、ボリータの息子で現在19歳。将来が楽しみです。
©︎Fundación Cristina Heeren
また舞踊の決勝は18日セビージャで行われ、優勝はグラナダ出身のノエリア・カルボ、2位はウトレーラ出身16歳のルシア・べナビデス、3位はセビージャ県アルカラ・デ・グアダイラのジャイサ・トリゴ、奨学金はノエリアとジャイサに贈られました。
©︎Fundación Cristina Heeren
なおコンクールの様子はYouTubeで視聴可能です。
ギター
舞踊
【訃報】
ヘレス出身の舞踊家、フェルナンド・ベルモンテが7月19日亡くなりました。
©︎Kyoko Shikaze
1942年生まれというから81歳。グラン・アントニオ舞踊団で活躍しマリア・ロサの相手役を踊り、1980年、あるバリスエラ少年少女舞踊団を設立。この舞踊団からはホアキン・グリロ、ミゲル・テジェス、エドゥアルド・クラビホ、ドミンゴ・オルテガなど多くの踊り手たちが世に出ています。それまで歌い手やギタリストは多数輩出していても舞踊が手薄だったヘレスを変えた人、と言ってもいいでしょう。2010年にはグリロがオマージュ公演をヘレスのフェスティバルで上演しました。
©︎Kyoko Shikaze
今年のヘレスのフェスティバルではこれまでの功績を表彰されるなど、晩年に再評価されたことは幸いでした。
ご冥福をお祈り致します。
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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