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スペインNews 9月号・2024

(miércoles, 4 de septiembre 2024)

 

文・写真/志風恭子

Texto y fotos por Kyoko Shikaze

 

フラメンコの熱い夏。というと、小説のタイトルのようですが、本当に小説が書けそうなくらい、大きな出来事やいろんな感情が交差した8月だったように思います。

 

【追悼ベティ先生】

 8月は悲しみの中で始まりました。7月31日、ベティ先生の愛称で親しまれた、ビクトリア・エウヘニア、本名ベニータ・ハバト・ムニョスが亡くなったのです。91歳だったので天寿をまっとうしたということなのかもしれません。それでもやはり哀しいです。

 1933年マドリード生まれで音楽舞踊学校に学び、グラン・アントニオの舞踊団で活躍。結婚で表舞台からは降りたものの、舞踊教授としてたくさんの後進たちを指導、また多くの振付を残しています。1993年から97年にかけては、アウロラ・ポンス、ナナ・ロルカと共に、女性初のスペイン国立バレエ団芸術監督をも務めています。現在活躍しているほぼ全てのスペイン舞踊家が彼女の門下だと言っても過言ではないくらい、たくさんの門下生が育っています。

 日本人でも、小松原庸子や小島章司をはじめ、たくさんの舞踊家が彼女のもとで学び、彼女の助言によって、プロとしての仕事を得ることができました。小松原が招聘し、舞踊団への教授活動も行なっていたことを懐かしく思い出す人もいるかもしれません。フラメンコ/スペイン舞踊の基本の基本、姿勢やカスタネットを使った振付などでお世話になった人もいることでしょう。ヘレスのフェスティバルでも初期にクルシージョを行っていました。

 振付では国立バレエ団に残した、アイーダ・ゴメスに振り付けたグラナドス作曲の『スペイン舞曲集第九番』や、マリベル・ガジャルドに振り付けた『チャコーナ』を代表作にあげてもいいかと思います。他にも、アントニオ・マルケスに振り付けた『闘牛士の祈り』、アイーダへの『ア・ミ・アイレ』など、いずれの作品も上品で美しく、格調高いものでした。

 偏見がなく、お茶目で可愛いところがあって、誰からも愛されたベティ先生。彼女が残した穴は大きすぎて埋まることはなさそうです。

A_2409志風_ベティ

若き日のベティ先生 Ballet Nacional de España

 

 また同じ日、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアの歌い手、アントニオ・プエルトも亡くなったそうです。本名アントニオ・グティエレス・ナバロ。1958年11月8日生まれというから、まだ65歳。私も彼を知ったのは今年のヘレスのフェスティバルでのことだったので、残念でなりません。その時のビデオがこちらです。まだまだ知らない実力者がいるんだな、と思ったことを覚えています。ご冥福を祈ります。


【カンテ・デ・ラス・ミーナス】

 スペインで最も有名なフラメンコ・コンクール、カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバルでのコンクールの舞踊部門で萩原淳子が優勝したことはすでにご存知だと思います。このコンクールでのスペイン以外の国籍を持つ人の優勝は、楽器部門のララ・ウォンに次いで二人目。舞踊部門では初めてです。全ての受賞者は以下のとおりです。

B_2409志風_萩原淳子

決勝でのカンティーニャス ©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

 

◎大賞/ランパラ・ミネーラ ヘスース・コルバチョ

C_2409志風_ヘスス・コルバチョ

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


◎楽器部門 優勝 ホセ・エル・マルケス/チェロ

     準優勝 ロレンソ・モジャ/ピアノ


◎舞踊部門 優勝 萩原淳子


◎ギター部門優勝 ジョニ・ヒメネス

     準優勝 マルコス・デ・シルビア


D_2409志風_授賞式

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


◎カンテ部門III

・低アンダルシアのカンテ トナ、シギリージャ。ソレアレス、カーニャ、ポロ、リビアーナ、セラーナス。

イバン・カルピオ(シギリージャ)


・低アンダルシアのカンテ ブレリア、カンティーニャス、タンゴス、ティエントス、ペテネーラ、ファルーカ、ファンダンゴ・ペルソナレスなど

ヘスース・コルバチョ(グアヒーラ)


◎カンテ部門II

マラガ、グラナダ、コルドバ、ウエルバの歌、アンダルシアのファンダンゴ由来の他の歌。

・マラゲーニャ、グラナイーナ・イ・メディア・グラナイーナ、グラナダ、ウエルバ、ルセーナのファンダンゴ、ベルディアーレス、ロンデーニャス、ハベーラ、ハベゴーテ、そのほかのフラメンコの要素のある、地方ファンダンゴ。

イバン・カルピオ(マラゲーニャ)


◎カンテ部門I

・ムルシアーナとその他のカンテス・ミネーロス(タラント、レバンティーカ、ファンダンゴ・ミネーロ、カンテス・デ・マドゥルガーなど

アンドレス・エレディア“アンドレーレ”


・タランタス

イスコ・エレディア


・カルタヘネーラス

アナベル・デ・ビコ


・ミネーラス

ヘスース・コルバチョ


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©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


受賞者のみなさん、おめでとうございます。

 

またコンクールに先立ち、7月31日は地元ウニオンのアーティストによる公演、

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ガロティンが絶品だったエンカルナシオン・フェルナンデス、伴奏はアントニオ・ムニョス ©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

 

ミゲル・ポベーダによる開会宣言と昨年の覇者による公演、

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ポベーダと彼が優勝した時のギタリスト、フアン・ラモン・カロ ©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

 

ミゲル・ポベーダ

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©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

 

スペイン国立バレエ団

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日本公演とは違う演目だけど素晴らしいフラメンコを見せてくれた ©︎ Kyoko Shikaze

 

カルロス・ピニャーナ

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交響楽団と言っていたものの弦楽だけ ©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

 

エドゥアルド・ゲレーロ

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彼ならではの舞踊言語がすごい。ダビ・パロマーレスら選りすぐりの共演アーティストたちとフラメンコの醍醐味を味わわせてくれた ©︎ Kyoko Shikaze

 

ピティンゴ

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純フラメンコからヒット曲まで多彩なプログラムで楽しませてくれました ©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

 

とガラ公演も行われました。他にも講演やクルシージョなどイベントもたくさん。

 

来年はぜひ、あなたも。

 

【筆者プロフィール】

志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。

 

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