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スペインNews 8月号・2024

(miércoles, 7 de agosto 2024)

 

文・写真/志風恭子

Texto y fotos por Kyoko Shikaze

 

 セビージャの夏は日本よりも気温は高いですが湿度がないので案外過ごしやすいというのをご存知ですか? 街角の温度計は50度近くを示すような日でも、日陰に入れば案外なんとかやり過ごせます。とは言っても1日で一番気温が上がる午後、3時頃から8時くらいまではできれば外出しない方がいいでしょう。そう、南スペインのシエスタ、昼寝の習慣は自己防衛なのですね。実際に眠りはせずとも、スペインの遅いお昼ご飯の後は暗くした部屋でゴロゴロするのは理由があるのです。

 

【マノロ・マリンへのオマージュ/ベラ・デ・トリアーナ】

 7月のセビージャといえばベラ。トリアーナの夏祭りです。毎年7月26日、聖母マリアの母、聖アンナの日までの1週間に渡って開催され、トリアーナ橋は白と緑の提灯で飾られ、川べりのベティス通りにはカセータ、テント小屋が立ち並び、多くの人で遅くまで賑わいます。

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©︎ Kyoko Shikaze

 

 カセータと言っても春祭り、フェリアのように入場制限があるわけでもセビジャーナスを踊るわけでもなく、政党や教会、趣味の協会などによるバルで、流行りの音楽などかけて飲食するのみ。キューバ広場よりにはアヒルのおもちゃを釣ったり、サッカーボールを蹴って商品をもらう屋台やチューロやハンバーガーの屋台が出ていたり、夏祭り感満載。

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ベティス通り ©︎ Kyoko Shikaze

 

 トリアーナ橋のたもとのアルトサーノ広場の特設舞台では毎夜、セビジャーナスやスペイン歌謡などの無料コンサートが日替わりで行われます。今年のフラメンコ公演は24日、ビエナルはトリアーナから始まる、というタイトルで、トリアーナ出身で今もトリアーナに住むマノロ・マリンへのオマージュという形で行われました。

 ホセ・メンデス、ホセ・バレンシアのカンテソロ、そしてコンチャ・バルガス、アンドレス・マリンという布陣。マノロとそれほど関わりがないようなメンバーのように思えますが、なぜこの人選? 生徒を一人選ぶとクレームがつくから?よくわかりません。

 でも広場にはかつてのマノロの生徒たちをはじめセビージャのアルティスタたちがたくさん。

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ラモン・マルティネス、アリシア・マルケス、ロサ・ベルモンテらとマノロ。 ©︎ Kyoko Shikaze

 

 他にもラファエル・カンパージョやホセ・オルテガ、カルメン・レデスマなども会場で見かけました。

 マノロもフィン・デ・フィエスタでは88歳とは思えない見事なブレリアを披露して、観客を喜ばせました。

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林結花さん撮影


【萩原淳子ラ・ウニオン準決勝進出】

 スペインで最も有名なフラメンコ・コンクールといえば、ムルシアのラ・ウニオンという小さな町で開催されるカンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバルでのコンクール。

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フェスティバルのメイン会場、かつての公設市場 ©︎ Kyoko Shikaze

 

 元々この地ゆかりのカンテ・デ・ラス・ミーナスと呼ばれる、ミネーラ、タランタ、カルタヘネーラなどの曲種の保存と普及のために始まったもので、始まった年こそコルドバのコンクールの後になるものの、3年に1度開催のコルドバに対し、毎年開催のこちらは今年で63回を数え、最も歴史の長いコンクールと言っても過言ではありません。当初はカンテのみでしたが、その後、ギターや舞踊、そしてギター以外の楽器部門も作られ、多くのアルティスタたちにスポットライトを当ててきました。今年のフェスティバルは、その一人、ミゲル・ポベーダが8月1日開会宣言をして始まり、前半はそのミゲルのリサイタルやスペイン国立バレエの公演などが行われ、後半がコンクールです。

 

 そのコンクール準決勝に、萩原淳子が進出することが発表されました。

 コンクールにはスペイン各地はもとより国外からも含め、300人もの応募があったそうです。そこから書類選考されたおよそ70人がマドリードやグラナダ、デニアなどスペイン各地で開催される予選に出場。そのパフォーマンスの審査により、ラ・ウニオンで3日間にわたって行われる準決勝に臨む人が選出され(今年は舞踊5人、カンテ10人、ギター4人、楽器4人の計23人)、フェスティバルの中で3日間にわたって行われる準決勝を経て、最終日、決勝に進む人が決まります。

 

 これまでに日本人では、舞踊部門で平富恵、南風野香、井上圭子、丹羽暁子、田村陽子、石川慶子、堀越かおり、カンテ、マラゲーニャ部門で大森暢子、楽器部門でベースの森田悠介が出場しています。

 コンクールの模様は例年通りだとYouTube(https://www.youtube.com/@CanteDeLasMinas/featured)で中継されます。スペイン時間22時開始なので、日本時間の早朝5時からです。

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ウニオンのコンクールに出場した日本人たち。左上から時計回りで丹羽暁子、井上圭子、大森暢子、堀越かおり、石川慶子、田村陽子 ©︎ Kyoko Shikaze

 

【ビエナル並行プログラム】

 偶数年の今年はセビージャのビエナルの年。すでに劇場公演の入場券は発売され、開幕ガラやミゲル・ポベーダやメルセデス・デ・コルドバの公演など満員札止めの公演もあります。ミゲルは翌日の1公演追加されこちらの入場券はまだあるようですが、全国を回っている公演でもセビージャでは特別ゲストにエバ・ジェルバブエナやディエゴ・デル・モラオとヘレスのおばさまたちを迎えるなど特別な趣向があるようです。日本公演が大好評だったマヌエラ・カラスコもゲストにアントニオ・カナーレスやエル・ペレを招くとか。

 7月11日には並行プログラムも発表されました。フラメンコ関連映画の上映や、セビージャの各地区での公演、講演会など、多彩な催しが行われる予定です。

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©︎ La Bienal

 

並行プログラム

プレゴン・イ・フラッシュモブ

9/11(水)11時

[場]トリアーナ橋

20時30分

[出]〈プレゴン〉サラ・バラス、フラッシュモブ/アンダルシア舞踊団

[場]アメリカ広場

 

マルテス・デ・シネ

9/3(火)20時30分

パコ・ミジャン監督『アントニオ・マイレーナ。ラ・ライス・デル・カンテ』スペイン、2023年 70分 世界初公開

9/10(火)20時30分

パロマ・サパタ監督『ラ・シングラ』スペイン、2023年95分

9/17(火)20時30分

ロシオ・マルティン監督『フェルナンダ・イ・ベルナルダ・デ・ウトレーラ』スペイン、2023年 95分 

9/24(火)20時30分

『カルメン・イ・マリア』

10/1(火)20時30分 

スサンネ、ツェリンガー。ナタリア・アジャ監督『パライソ・デ・クリスタル』オーストリア、2022年 73分

[場]セビージャ トレス・クルトゥーラ財団

[料]無料(事前に予約)

 

並行プログラム/フラメンコ・ア・ピエ・デ・カジェ

9/14(土)22時『フィエスタ・エン・セビージャ』

[出]〈c〉アナベル・バレンシア、コラル・デ・ロス・レジェス、サマラ・カラスコ、マラ・レイ、〈g〉クーロ・バルガス、〈b〉フェルナンド・ヒメネス

[場]セビージャ セビージャ・エステ クエバ・デ・メンガ通り

9/20(金)22時『オノレス・ア・トーレス・マカレーナ。50アニョス・デ・ソレーラ・フラメンカ』

[出]〈b〉カルメン・レデスマ、ミゲル・エル・ルビオ、〈c〉ナタリア・マリン、ガブリエル・デ・ラ・トマサ、〈g〉ラモン・アマドール、〈palmas〉エミリオ・カスタニェダ、マヌエル・パハレス

[場]セビージャ アラメーダ・デ・エルクレス

9/21(土)22時『アラメダ・ビバ』

[出]〈c〉ホセ・エル・ペチュギータ、ホセ・エル・ベレンヘーノ、ルイス・ペーニャ、ハビエル・エレディア、〈g〉ヘスース・ロドリゲス、〈b〉マヌエラ・カラスコ・イーハ

[場]セビージャ アラメーダ・デ・エルクレス

9/27(金)22時『プロメサ・イ・グロリア』

[出]アララ財団生徒

[場]セビージャ ムリーリョ公園

9/28(土)『スエニョス・エン・トリアーナ』

[出]〈b〉ルイサ・パリシオ、ヤイサ・トリゴ、サイラ・プルデンシオ、アナ・オロペサ、フアン・トマス・デ・モリア、〈c〉ニーニョ・デ・ヒネス、マリアン・フェルナンデス、エスペランサ・ガリード、〈g〉ヘスース・ロドリゲス、フアン・アンギータ、マルコス・デ・シルビア

[場]セビージャ ムリーリョ公園

10/4(金)『グランデス・マエストロス・デル・バイレ・デ・セビージャ』

[出]〈b〉イニエスタ・コルテス、フアン・デ・ロス・レジェス、フアン・パレデス、フアン・ポルビージョ、アリシア・マルケス、〈c〉ホセ・アニージョ、モイ・デ・モロン、〈g〉ラファエル・ロドリゲス、アントニオ・ガメス

[場]セビージャ パセオ・エウロパ公園(ベルメハレス)

 

並行プログラム/エンクエントロス“ラ・ウニベルシダ・デル・フラメンコ”

9/23(月)

11時講演『ニーニョ・リカルド、ウン・フェノメノ・エスパニョル』エル・パジョ・ウンベルト、〈g〉アレハンドロ・ウルタード

12時30分『ディアロゴス・デ・マエストロス』

参加者セラニート、マノロ・フランコ、リカルド・ミーニョ、アントニオ・ボニージャ

9/24(火)

11時講演『エル・リカルディスモ』ノルベルト・トーレス

12時30分『オノーレス・ポル・トダ・ウナ・トラジェクトリア・ア・セラニート』〈g〉ジョニ・ヒメネス

[場]セビージャ  CICUS

 

なお、日本語でのすべてのプログラムはこちらにもアップしてあります。

 

【筆者プロフィール】

志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。

 

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