(miércoles, 5 de junio 2024)
文・写真/志風恭子
Texto y fotos por Kyoko Shikaze
かつては、フラメンコのイベントといえば、夏はフェスティバル、冬はペーニャと言われていました。今も基本は変わらないのかな? でも今は昔に比べると劇場公演も多くなり、フラメンコは一年中ハイシーズン、という気もします。また、パンデミックが落ち着いてからは観光ブームに拍車がかかり、新しいタブラオもでき、どこも繁盛しているようです。すごいメンバーが出演している時もあるようなので、タブラオに行く時は、Webで出演者を確認できるところも多いので、確認してから行くのがおすすめです。面倒だという人は、マドリードのコラル・デ・ラ・モレリアやセビージャのロス・ガジョスといった老舗が比較的安心なように思います。6月のプログラムを見ても、コラルがサラ・カレーロやベレン・ロペス、ロス・ガジョスはソラジャ・クラビホやロサリオ・トレド、ぺぺ・トーレス、ラファエル・カンパージョが日替わりで出演と、なかなかのメンバーです。
Tablao Corral de la Morería入口 ©︎ Kyoko Shikaze
【ギリホンド祭】
セビージャ近郊の小さな町、パロマーレス・デル・リオで、5月1日から4日までギリホンドというフラメンコ祭が開催されました。夏のフラメンコ祭というと元々は6月末のポタへ・ヒターノというフェスティバルから、という感じだったので、5月の開催というのはとても早いですね。昨年は4月12日からだったというから、これでも遅くなったということかも。
このフェスティバルは世界で唯一の、スペイン以外の国出身の人、ギリにフォーカスしているフェスティバルです。今年のテーマ国は日本、ということで、アルヘシラス在住の日本人写真家Tomoyuki Hottaさんの写真展が行われました。
初日はハポン(=日本)という苗字を持つ、アンダルシア州文化長官やアンダルシア国際大学総長などを歴任したフアン・マヌエル・スアレス・ハポンさんの講演とフランス人カンタオール、ホセ・デ・ラ・ネグレータの公演で始まり、2日目には、オランダ人ギタリスト、ユス・ウィエガーズのリサイタル、カルメラ・リケーニの舞踊公演に先駆け、志風がフェスティバル監督マヌエル・ボルケスとお話しさせていただきました。
3日目にはパケーラ・デ・ヘレスの日本公演の様子を記録したドキュメンタリーの上映と萩原淳子の公演、
そして小谷野宏司の公演がありました。
最終日にもオランダ人ギタリスト、ティノ・ヴァン・デル・スマンのリサイタル、エスペランサ・フェルナンデスの公演に先駆けて、ヘーレン財団留学中の瀬戸口琴葉が踊りました。
フラメンコはユニバーサルなアート、と言われながらも、実際問題スペインで外国人が活躍するのはスペイン人よりも難しいということはあるので、こういった催しで外国人アーティストにスポットライトが当たるのはいいことですね。外国人のフラメンコということで、全国ニュースにも取り上げられるなど注目されていました。来年はフランスがテーマ国になるそうです。
【アンダルシア・フラメンコ】
5月になって、アンダルシア州主催のフラメンコ公演シリーズ、アンダルシア・フラメンコも、16日グラナダでのエバ・ジェルバブエナ公演を皮切りに、グラナダ、アルハンブラ劇場とセビージャのセントラル劇場、二つの州立劇場で開催しています。
セビージャでは21日がダビ・コリアの『ロス・バイレス・ロバーダス』、23日にはホセ・アセド親子のニーニョ・リカルドへのオマージュ、25日にギタリスト、ダニエル・カサレスのオーケストラとの共演、28日にはセビージャ出身マカレーナ・ロペス『青い薔薇と赤い瞳』が上演されました。セビージャを代表するギタリスト、ニーニョ・リカルドの作品を取り上げた公演『レクエルド・ア・セビージャ』が、若い人たちに歴史に名を残す名人の曲を知ってもらうためにも良い企画だと思いました。
©︎ Kyoko Shikaze
前に進むためにも、まずは過去の名作を知る。これはギターに限らず、舞踊でも歌でも一緒だと思います。今はYouTubeでも色々手軽に見ることができるので、新しいものだけでなく、歴史的なアーティストの作品に触れると今のフラメンコを見る目も変わってくると思いますよ。
【フラメンコ・シグロXXI】
昨年は3月に開催された21世紀のフラメンコ・セミナーが、今年は5月24日からの3日間、セビージャ大学文化センターCICUSで開催されました。学者や識者の講演だけでなく、フラメンコの当事者であるアーティストの肉声を多く聞けるのが面白い試みです。
今年は24日午後には『フラメンコが直面している越えねばならない問題』というテーマで、歌い手のアリシア・ヒルやフルート奏者フアン・パリージャ、フラメンコもジャズも演奏するドラマーのギジェルモ・マッギルらが、
©︎ Kyoko Shikaze
25日の『フラメンコにおける創作の自由』ではギタリスト、トマティートとフアン、カルモナ、踊り手パストーラ・ガルバンらが登壇。
©︎ Kyoko Shikaze
フラメンコの歌やギターを教える公立音楽学校の講師の問題(アーティストとしての輝かしいキャリアがあっても講師になれない等)やフェスティバルにアーティストが“作品”を準備しなくてはいけない問題などについて語られました。
またこの座談会の最後には、24日にはマヌエラ・デ・モジャ、
©︎ Kyoko Shikaze
©︎ Kyoko Shikaze/ギターは父アントニオ・モジャ
フェルナンダ・ペーニャ
©︎ Kyoko Shikaze/ギターはペドロ・マリア・ペーニャ
という二人の若い歌い手、
25日にはアリシア・ヒルと
©︎ Kyoko Shikaze
ビセンテ・ソトのミニコンサートもあり、
©︎ Kyoko Shikaze
ビセンテのブレリアではフアン,パリージャらもパルマで舞台に上がるなど盛り上がりました。
©︎ Kyoko Shikaze
なお25日の公演前には、セラニート、ビセンテ・ソト、マヌエル・デ・パウラをこのセミナー主催者、21世紀フラメンコ協会の名誉会員とする授与式も行われ、ベテランたちも満足そうでした。
©︎ Kyoko Shikaze
ギタリストで一番踊りが上手いというセラニートは得意のブレリアも披露しました。
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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