スペインNews 4月号・2025
- norique
- 3 日前
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(domingo, 6 de abril 2025)
文・写真/志風恭子
Texto y fotos por Kyoko Shikaze
ヘレスのフェスティバルも無事終了。グラナダの国際音楽舞踊祭やコルドバのギター祭など、これから夏にかけてのフェスティバルのプログラムも次々に発表されています。こうしてフラメンコのイベントは休むことなく続いていくのですね。
ヘレスのフェスティバル後半から3週間続いた雨もようやく上がって、いつもの太陽さんさんのアンダルシアが戻ってきました。アンダルシアも例年、冬は雨の日が多いとは言っても今年は異常なほどの雨続き。おかげで夏の水不足の心配はなさそうです。

©︎ Kyoko Shikaze
《INDEX》
【フラメンコの生きる歴史】
3月14日、セビージャパテ劇場で、セビージャ県主催による『フラメンコの生きる歴史』と題された公演が行われました。
フラメンコの歴史の生き証人であるベテラン・アーティストたちにフォーカスしたこのフェスティバルも、今年で3回目。今年は、94歳の超ベテラン、トリアーナのソレアを得意とした歌い手マルケス“エル・サパテーロ”へのオマージュということで告知されていたのですが、サパテーロが3月9日、その生涯を終え、彼の代わりにサパテーロの生まれ故郷、ビジャヌエバ・デル・アリスカルの市長やペーニャ会長が舞台に上がりました。

公演はトリアーナ出身ローレ・モントージャの歌で始まり、レブリーハのクーロ・マレーナの妹イサベルがシギリージャとブレリア、舞踊伴唱で何度も来日した歌い手ディエゴ・カマチョ“エル・ボケロン”のソレアとファンダンゴへと続き、最後はアントニオ・カナーレスが登場。今年で舞台から引退と言っている彼、確かに最盛期のようなキレのある動きこそありませんがそれでもところどころに、これぞカナーレス!というような、なんとも言えない間合いの良さなどが感じられ、サパテアードの太い音と相まって、やはりカナーレスはカナーレス、フラメンコ舞踊に一時代を築いただけのことはあると再確認したのでありました。ボケロンが共演したのもうれしかったです。
実はカナーレスは私と同じ61年生まれなのですが、いつの間にか、ベテランと呼ばれるようになってしまったのだなあ、と感慨深いことでした。

©︎ Kyoko Shikaze
最後は最近のフェスティバルでは珍しいフィン・デ・フィエスタも行われ、ローレ以外の出演者が全員登場。それまで台本を見ながら司会を務めていた踊り手トロンボもすごいパタイータをみせてくれて、大満足で家路を辿ったのでありました。

©︎ Kyoko Shikaze
【中田佳代子『TOHOGU』スペイン公演】

岩手出身、バルセロナ在住のバイラオーラ、中田佳代子が日本から邦楽のミュージシャンを招聘し、バルセロナ、セビージャ県コリア・デル・リオ、ウエルバで公演しました。3月13日の公演には昨年日本で共演したギタリスト、アルフレド・ラゴスが、また15日のセビージャでの公演には2020年の『東北』初演の時からの共演者であるギタリスト、ラファエル・ロドリゲス、そして歌い手モイ・デ・モロンも出演しました。
オープニングの和風ファルーカ、南部牛追歌からのシギリージャではフラメンコと和太鼓や篠笛が違和感なく共演し、赤いバタ・デ・コーラのソレアでは即興で歌を踊りつくす。

©︎ Kyoko Shikaze
ルーツである日本、東北の民謡と、彼女が人生を賭けて取り組んでいるフラメンコ。二つの音楽、文化、土地の狭間で揺れ動く彼女の心をそのまま映したような作品と言えるように思います。私が見たセビージャ公演では会場や技術の問題がたくさんあったということですが、それにめげず、エネルギッシュに前進し、観客を楽しませていたのは見事としか言えません。まさにプロ。またぜひその舞台作品を観たいと思わせるアーティストです。

©︎ Kyoko Shikaze

©︎ Kyoko Shikaze
【ペーニャ、トーレス・マカレーナでの鈴木時丹】
3月28日、セビージャのペーニャ、トーレス・マカレーナに鈴木時丹が出演しました。
スペインでの初舞台はヘレスでしたが他の日本人ダンサーたちとの共演だったので、カベサ・デ・カルテル、自分の名前でソロでのデビューとなりました。
第一部はメキシコ出身ダニエル・メヒアのギターソロ、カンテソロに続いて、アレグリアス。

©︎ Kyoko Shikaze
生き生きとして全身でリズムを楽しんでいる感じのブレリアにワクワクさせられました。

©︎ Kyoko Shikaze
休憩を挟んでの第二部ではカンテソロでタンゴに続いてソレア。歌のところでは足を入れない、昔ながらのスタイル。しっかり歌を聴いてそれに応えようとしています。歌を踊る、ある意味、根源的でプリミティブなフラメンコ。歌とは関係なく怒涛のサパテアードてんこ盛りの若手が多い中、かえって新鮮フラメンコへの愛と敬意が感じられ、観てるこちらも引き込まれ、歌い手もどんどん本気になっていく…そんな感じ。

©︎ Kyoko Shikaze

©︎ Kyoko Shikaze
スペイン人、日本人とか関係なく、本当に、真摯な、いいフラメンコを見せてもらいました。
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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