(miércoles, 7 de febrero 2024)
文・写真/志風恭子
Texto y fotos por Kyoko Shikaze
1月6日に東方から三人の博士が12月25日に生まれたイエス様を祝福にやってきたという話から、博士が魔法の王様たち、レジェス・マーゴスとよばれ、子供にプレゼントを持ってくるという、スペイン版サンタクロースのような存在となっていて、スペインのクリスマスシーズンはこの日まで続きます。レジェスの日は子供にだけでなく家族間でもプレゼントを贈ります。また前日5日夜や6日にはレジェスのパレードが行われ、レジェスに扮した人が乗ったフロートなどから集まった人たちにたくさんの飴が投げられます。またフランスのガレット・デ・ロワのように小さなおもちゃが隠されたロスコンとよばれるドーナツ型のお菓子を食べます。日本のお節料理じゃないけれど、この時期は皆伝統を大切にしているようです。
トリアーナのレジェスのパレード。これは随分前のものです。
クリスマスシーズンが終わって、お屠蘇気分も抜けたという感じでしょうか、フラメンコ界も動き出しました。
【ビエナルのポスター発表】
1月16日、セビージャ市役所において、今秋のビエナルのポスターのお披露目が行われました。現代スペイン美術界を代表する一人、ミケル・バルセロが描いたもので、カマロンやパコ・デ・ルシアといった歴史的に重要なフラメンコ・アーティストの名前が散りばめられています。
昨年、27歳という若さでビエナル監督に就任したルイス・イバラは、この日、今年の出演予定者などプログラムの一部を発表。舞踊ではマヌエラ・カラスコ、イスラエル・ガルバン、エバ・ジェルバブエナ、ファルキート、歌ならミゲル・ポベーダ、アウロラ・バルガス、イスラエル・フェルナンデス、ギターではラファエル・リケーニやペドロ・シエラなどベテランから若手まで満遍なく出演するようです。
出演予定アーティストの一部が監督、市長と共に ©︎La Bienal de Sevilla
《ビエナル公式サイト》
そのほかの出演予定アーティストの名前はこちらに書きました。https://noticiaflamenca.blogspot.com/2024/01/2024.html
なお、記者発表の最後には若手の歌い手、マヌエル・デ・ラ・トマサ、レラ・ソトと出演予定のダビ・デ・アラアルが美しいギターソロを聴かせました。
【ギリホンド】
その翌日、セビージャ郊外のパロマーレス・デル・リオという町では5月に行われるフラメンコ・フェスティバルの記者会見が行われました。昨年始まったこのフェスティバル、スペイン以外の国出身のアーティストにフォーカスした世界で唯一のフラメンコ祭です。
今年は日本に焦点を合わせ、5月1日から4日まで開催されます。3日には萩原淳子、小谷野宏司が出演予定ですが、他にオランダ人ギタリストのリサイタルや、フランス人歌手の公演があります。最終日には日本と縁の深いエスペランサ・フェルナンデスの公演もあるとのこと、この時期セビージャにいらっしゃるならぜひ足を運んでみてください。
©︎ Kyoko Shikaze
【訃報】
訃報が続きます。12月31日、カルメン・アマジャなど20世紀を代表するフラメンコ・アーティスト達の写真でフラメンコ界とも縁が深い写真家コリータが腹膜炎のため83歳で亡くなりました。
映画『バルセロナ物語』撮影中のカルメン・アマジャや、73年に出版されたカバジェロ・ボナルの本『フラメンコの光と影』の写真で知られる彼女、2022年のビエナルでは写真展を行い、トークショーに出演するなどお元気だっただけに寂しい限りです。
2022年ビエナルでの写真展で ©︎ Kyoko Shikaze
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1月22日にはセビージャのギタリスト、ミゲル・ペレスが亡くなりました。突然の心臓発作だったそうです。
1960年セビージャ生まれ。ギタリストだった同姓同名の父のもと8歳からギターを手にし、マティルデ・コラルやマノロ・マリンの教室伴奏や、ロス・ガジョスなどセビージャのタブラオで活躍。
1981年マノロ・ソレール、83年ロシオ・ロレート、89年ラ・トナーなど新宿『エル・フラメンコ』に出演したほか、小松原舞踊団の招きでも何度か来日している。ハビエル・バロン、ラファエラ・カラスコをはじめ多くの舞踊家達を伴奏。萩原淳子や石川慶子ら日本人舞踊家達のコンクール挑戦も支えてきました。
ソーシャルメディアには、あまりにも急な旅立ちを惜しむアーティスト達の声があふれました。それを読むにつけ、分け隔てなく、セビージャのフラメンコを支えてきた彼の偉大さを痛感したことでした。
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翌23日には歌い手ディエゴ・アグヘータが亡くなったとの知らせが。年末の、アントニオの訃報に続いての悲しいニュース。
1945年カディス県ロタ生まれ。ビエホ・アグヘータの息子、マヌエルの弟で、故堀越千秋画伯との縁で何度か来日も果たしており、日本公演のライブ盤や、2006年来日公演が縁で、2003年に録音されたパリージャ・デ・ヘレス伴奏の録音が日本でCDとして発売されたこともありました。
2020年にはペペ・デル・モラオとの録音もリリース。昔ながらのカンテ・ヒターノを聴かせる人がまた世を去ってしまいました。ご冥福を祈ります。
堀越画伯によるジャケット。
【筆者プロフィール】
志風恭子(Kyoko Shikaze)/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。
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