(lunes, 14 de octubre 2024)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai
Joaquín el de la Paulaのソレアー③、別の例
例によって前回取り上げたホアキンのソレアー③の別の例を紹介します。理由は前に書いたように、例が多い方が細部の変化を踏まえてひとつのスタイルというものを見極める耳と知識、経験を持つ事ができるからで、更にそれが、自分が歌う事にさまざまな意味で役に立ってくるのです。
今回はマノリートのPor dinero no lo hagas (金のためにそんな事をしないでくれ)と同じスタイルで、アントニオ・マイレーナが歌ったソレアーを取り上げます。原曲は1958年のLP「カンテス・デ・アントニオ・マイレーナ」、CDだとアントニオ・マイレーナ全集のCD3-10曲目。
このソレアーの題名は Promesa de ti(お前の誓い)となっていますが、普通ソレアーのタイトルというのは歌い始めの1行をそのまま付ける事がほとんどなのに、このソレアーの中にこの言葉を使った歌詞は無く、どうしてこのタイトルが付いたのかは謎です。
(Letra)
Quisiera ser como el aire,
pa yo tenerte a mi vera
sin que lo notara nadie ;
(compañerita mi alma,
sin que lo notara nadie.)
(訳)
空気のようになって
お前のそばにいたい、
誰にも気付かれないで。
※pa ⇒ para
※notara ⇒ notar(~に気付く)
8音節から成る3行詩で、1行目は「風のようになって~」と訳すと自由にお前のそばに行きたい、という恋の情熱の表現により近くなるかも…。
( )は繰り返しで、マイレーナは歌の形にこだわり、カンテをエッセンスだけでなく形としてもより大きく完成させるという意図を持っていた人ですから、こうして最後の行を繰り返す事が多いのです。
前回のマノリートと比べると出だしのメロディーはほとんど同じですが、その後のメロディーでは細部がかなり異なっている。
更にマノリートは繰り返し無しでもおよそ6コンパスの長さをかけてゆったり歌うが、マイレーナは繰り返しありで全体では同じコンパス。
この場合コンパスの数は重要ではないのですが、要するに歌い進め方にはかなりの個人差があるにもかかわらず、前回のものと今回のものは同じスタイルと見なされるのです。
大体において歌い始めは原型をあまり変えず、歌い進めていくに従って次第に自分の歌う癖や個性がはっきり出てくるが、やはり原型はいつも意識の中にありますから、型から大きく外れる事なく収まるのです。
こうしたことは歌ってみると、実感として感じられる事でしょう。
【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~35(以下続刊)。
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