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カンテフラメンコ奥の細道 on WEB no.36

(lunes, 13 de mayo 2024)


文/エンリケ坂井

Texto por Enrique Sakai


Joaquín el de la Paulaのソレアー①


グラン・クロニカvol.34 カンテ奥の細道no.36 202405

 前回アルカラーのソレアーのグループの事について少し触れたが、今回はその核となるカンタオール、ホアキン・エル・デ・ラ・パウラ(パウラ家のホアキン、本名Joaquín Fernández Franco、セビージャ県アルカラー・デ・グアダイラ、1875~1933、ファン・タレーガ、マノリート・マリアらの叔父にあたる)のソレアー①を取り上げよう。


 ホアキンはキューバ戦争(1895~1898)に行った折に黄熱病にかかり、それが原因となったのか、やがて除隊して故郷に帰りアルカラーの洞窟の家で暮らしました。

 生活のためペラドールというロバや羊の毛を刈る、時には皮を剝ぐ仕事もしながら、その類い稀な歌の才能は地元のベンタ・デ・プラティージャや仲間内のフエルガ、カルナバルなどで評判を呼び、マイレーナを始めとする多くの歌い手達が聴きに訪れたのです。

 人間的にも純粋で温厚な人であったようで人望を集めたが、それと共にユーモアに満ちた愉快な人でもあったようで、カルナバルの祭りの際には自ら先頭に立ってグループを率いて自作のタンギージョを歌ったと言われます。


 創作力は歌詞にも及び、サエタ、ファンダンゴ(バジェーホがその詞を歌った)、トナー、シギリージャ、ブレリアなどに残されています。

 惜しむらくは、その性格故に活動が非常に限定的で舞台に立たず、録音も残さなかった事。

 最新のグラン・クロニカVol.34で特集したトマス・パボンが、ホアキンのソレアーを録音しています(18曲目)。

 

(Letra)

El pasito que yo doy,

ese no lo daba nadie,

yo lo hago por mis niños

que están pendientes del aire.

 

(訳)

私の歩くその歩みは

誰も歩んだ事のない歩み、

腹をすかせて待っている

私の子供達のための歩みなのだ。

 

◎están pendientes del aire ⇒空中でぶら下がっている⇒不安定な宙ぶらりん状態⇒子供達が不安定で宙ぶらりん、というのはこの場合、腹をすかせて自分を待っているという事だと思われる。


楽譜図 カンテ奥の細道no.36 202405

 歌い方は、8音節の4行詩を1-2-2-2-3-4行目と歌い進む一般的な方法。(3、4行目の繰り返しは必須ではなく、特にプーロ系の人達は繰り返さない事が多い)

 アルカラーのこのタイプ①のソレアーはその性格から、また最初に歌われる事が多いからか、ややゆったり歌われる事が多い。とはいえ、現在の踊りの際によく歌われる極端にゆっくりした歌い方は踊り歌独特のもので、カンテのみで歌う時は本来の速さにしないと間延びした歌になってしまうので区別する必要があります。


 

エンリケ坂井 プロフィール画像 カンテ奥の細道

【筆者プロフィール】

エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)

1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~34(以下続刊)。

 

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