(miércoles, 10 de enero 2024)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai
Jilica de Marchenaのソレアー
今回はある人から質問を受けたヒリーカ・デ・マルチェーナのソレアーを取り上げる。
ややマニアックなテーマではあるが、カンテ人口が増え、内容も深まってきた現在ではこういったさまざまな疑問を持つ人が増えてきているからだ。
その答えはどこにも書いてないので、この奥の細道で私のこれまで調べて来た事を書いてみようと思う。
こうしたマニアックなカンテ愛好家が増えることは私にとっても嬉しいし、スペインとの関係に於いても日本に多くの本物の愛好家がいることは、これから交流を活発にする大切な要素になってくると思う。
さて、通称ヒリーカ・デ・マルチェーナというカンタオーラ(一般にはJilica、時にはGilicaとも書かれる)は、本名María del Carmen Reyes Torres(マリア・デル・カルメン・レージェス・トーレス)でヒターナ。
生まれたのは1866年、セビージャとグラナダの中間にある「アンダルシアのフライパン ~夏はもの凄く暑い~」と呼ばれるエシハという町だが、幼くしてマルチェーナ町に引っ越しそこで1950年に亡くなるまで過ごした。
マルチェーナはメルチョールやペペ・マルチェーナという大物アーティストを生んだフラメンコの盛んな町で、ヒターノたちも多く住んでいる。
アルカラーにも近く、ヒリーカのファミリーにアルカラーの歌い手たちがいた事から交流が続き、ヒリーカはその影響を受け二つの独自のスタイルのソレアーを創り上げた。それを聴いたであろうパストーラ(ニーニャ・デ・ロス・ペイネス)が「ソレアレス・マルチェネーラス」と題して1948年SP盤に録音して、そのスタイルは残り、ヒリーカの名前も永遠に歴史に刻まれることになった。(グランクロニカvol.3に収録)
スタイルその①の歌詞
(Letra)
Cuando paso por tu puerta,
cojo un 〈puñao〉de papeles
que〈tos〉se me volvieron mosquetas;
*cogí un〈puñao〉de papeles
que〈tos〉se me volvieron mosquetas.
(訳)
お前の家の戸口を通った時
ひと握りの紙を掴み取った、
それはバラに変わって見えた。
*puñao⇒puñado
*tos⇒todos
*mosqueta⇒ジャコウバラ
ヒリーカのソレアーは基本的に3行詩で、繰り返し部分は*の部分です。
意味は恐らく、恋人の家の前で相手から手紙を受け取った。嬉しさのあまり、その手紙がまるでジャコウバラのように感じられた、という事でしょう。
【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~33(以下続刊)。
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