(lunes, 12 de junio 2023)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai
前回取り上げたグローリアのアレグリアスは、すでに述べたが、アレグリアス・デ・カディスのスタイルではなくホティージャ・デ・カディスと呼ばれるカンティーニャスのひとつ。
カディスのアレグリアスの名人というのはカディスとその周辺ロス・プエルトス出身の歌い手が殆どで、それはこのカンテがカディスの文化的背景や伝統を色濃く持っているからだろう。
CD「グラン・クロニカ・デル・カンテ」vol.32より
㉕ Antonio Mairena(アントニオ・マイレーナ)の Alegrías(アレグリアス)
というわけで今回も引き続きアレグリアスを取り上げよう。カンティーニャスというのは12拍子系の長調の歌をまとめてカンティーニャ属(または族)という形式名にしているのだが、その中で中心を成すのはアレグリアス・デ・カディスだ。しかしそれは、数の上ではカンティーニャスの中ではほんの一部分にすぎない。LPレコードの時代まではアレグリアスと題が付いていても、実はカディスのアレグリアスは一つか二つで、あとはカンティーニャスということが多い。つまりアレグリアスは、以前はカンティーニャと同じ意味で、いろいろなカンティーニャスを含めた形式名として使っていたわけだ。
形式名としてちゃんと分ける傾向になってきたのはマイレーナ以来カンテの研究・分類が進み、それをCDの時代になって形式名としてより詳しく書くようになったからで、そんな古い話ではない。
グランクロニカvol.32の19曲目のアレグリアスの1曲目は、アレグリアス・デ・カディスの低音型。ただし後半のメロディーを少し変えているので、マイレーナのバージョンとも言える。
2曲目はカディスのカンティーニャ(アレグリアスとは異なる)の一つだが、踊り歌としてもよく歌われるので何かの機会に耳にした人も多いと思う。以下にその歌詞を紹介する。
(letra)
(que te la da un marinero...)
Toma, niña, esta esmeralda
que te la da un marinero,
si no la quieres la cambia
por un barquito velero.
(船乗りからの贈り物…)
娘さん、このエメラルドを取りなよ
船乗りの男の贈り物さ、
もしも気に入らなきゃ
帆かけ船と換えてもいいさ。
コレティージョは最も一般的な「Cuando te vengas conmigo dónde te voy a llevar ~」の歌詞とメロディーなので、スペースの関係もありここでは割愛させてもらう。
あらためてCDを聴いてほしいが、この歌はアレグリアスのように1行を1コンパスで歌っていくタイプであり、カンティーニャと言っても詩型(8音節から成る4行詩)や歌い進め方(2行目から始まり1行目→2行目→3行目→4行目へと歌う)、リズムの乗り方はほとんどアレグリアスと変わらない。
このようにカンティーニャにもいろいろな歌い方や乗り方があり、この歌はアレグリアスの踊りの伴唱に使えるような、アレグリアスに非常に近いタイプだと言う事ができる。
ピニーニのスタイルを歌うベルナルダや母親(パペーラ)のスタイルを歌うペルラ・デ・カディスを聴いた人は、これは乗り方が違うと感じられた事だろう。その乗りとは?と質問されたので、次回は少し横道に逸れるがその事について書いてみよう。
【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~32(以下続刊)。
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