(viernes, 23 de agosto 2024)
2024年6月24日(月) ・25日(火)
渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
写真/北澤壯太
Fotos por Sohta Kitazawa
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko
圧倒的。それ以外に形容し得る表現があるだろうか。
2009年にイベリアが招聘して以来の、15年振りの来日公演。座席数700を超える東京・渋谷のさくらホールが、ほぼ満席に近い数の観客で埋め尽くされた。
子供のころから踊り始め、「バイレフラメンコの女王」として認められるまでに踊り手としての風格と存在感を備えたマヌエラ・カラスコの日本ファイナル公演が、2日間に渡り上演された。
昨年5月に最愛の夫であるギタリストのホアキン・アマドールが亡くなり失意と悲しみに暮れていたが、今年3月のフェスティバル・デ・ヘレスで素晴らしい舞台を見せ、観客から大絶賛を浴びた。
オープニングは、マヌエラのモノローグとともにスクリーンに映される過去の映像によるプロローグ。
そして始まりの曲はブレリア・アル・ゴルぺ。ペドロ・シエラの研ぎ澄まされたギターの響きが、一瞬で会場を包み込む。そこに公演直前に出演が決まった森川の美しいバイオリンが加わり、豊かなハーモニーを醸し出す。 紫のマントンをまとったマヌエラが登場、会場の全員が待ちに待った瞬間。その風格ある佇まいに、感動とともに魅入ってしまう。タニェの熱い思いが込められた歌を受け止め踊る場面は、まさにフラメンコに満ち溢れている。
特別ゲストとして出演したエンリケ "エル・エストレメーニョ”は、マラゲーニャを披露。慈愛に満ちた深く力強い歌声が場内に響き渡る。
ブレリア・フェステーラではルイス・ペーニャと、マヌエラの娘サマラ・カラスコがそれぞれの持ち味を楽しませてくれた。サマラは歌も踊りも素晴らしいがパフォーマンスも見事で、客席に向けての掛け合いがとても生き生きとして、彼女のエンターテイナーとしての素質も一級品だ。
もう一人の娘マヌエラ・カラスコ・イハは、凛としたアレグリアスを披露。踊る前に母マヌエラが娘にジャケットを羽織らせるシーンは、親から子へと伝統が受け継がれるセレモニーのようで、優しさに満ちていた。
最後の曲はソレア。大輪の花の刺繍が鮮やかなマントンを高く掲げ、舞台の奥からゆっくりと一歩ずつ踏み締めるように登場する。誇り高く堂々とした姿。エンリケが全身全霊を込めてマヌエラに歌いかける。華奢な足で刻むサパテアードは軽やかでいて力強く、万感の思いが込められているように思えた。
人の一生は長い。そしていつまでも同じままではあり得ない。移り変わる現実を引き受けながら、気高く舞台の中心に立つ姿には踊り手としての覚悟が見られ、それはマヌエラの生き様を写し出しているかに見えた。
カーテンコールは両日とも、観客のスタンディングオベーションで迎えられた。
フラメンコへの愛と敬意を大切に踊り続け、世界中のファンから愛される「バイレの女王」。その精神は娘たちに受け継がれ、それぞれの大輪の花を咲かせることになるだろう。
【出演】
バイレ:
Manuela Carrasco (マヌエラ・カラスコ)
Manuela Carrasco Hija (マヌエラ・カラスコ・イハ)
カンテ:
Manuel Tañé (マヌエル・タニェ)
Zamara Carrasco (サマラ・カラスコ)
ギター:
Pedro Sierra (ペドロ・シエラ)
パーカッション:
José Carrasco (ホセ・カラスコ)
フェステーロ:
Luis Peña(ルイス・ペーニャ)
バイオリン:
森川拓哉(恭敬出演)
特別ゲスト:
Enrique “El Extremeño” (エンリケ "エル・エストレメーニョ”)
【プログラム】
Prólogo
Bulería al Golpe
Malagueña
Bulería Festera
Fandango
Caña
Alegría
Bulería Festera
Soleá
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