アルテ イ ソレラ舞踊団 新作公演
(sábado, 4 de enero 2025)
2024年11月6(水)・7日(木)
東京・渋谷区文化総合センター大和田 4階 さくらホール
写真/川島浩之
Fotos por Hiroyuki Kawashima
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko
今回のアルテ イ ソレラ舞踊団公演は、フラメンコという文化が形成される上で中心的存在であるロマ民族(ヒターノ)の歴史に焦点を当て創作された。
ゲストには、スペインでフラメンコ伴唱家に贈られる最高賞を2度受賞しているヘレスの歌手アントニオ・デ・ラ・マレーナを約20年ぶりに招聘。そして現在日本とスペインを往来して活躍する兄マヌエル・デ・ラ・マレーナとともに、兄弟共演を実現させた。
彼らは両親や祖父母からフラメンコの伝統を受け継ぎ、辛く貧しい生活を強いられ苦難の時代を生き抜いてきたロマ民族の「飢えの時代」を知る最後の世代の歌い手として、スペイン国内でも尊敬される存在だという。
舞台は、ステージ下手側に置かれたテーブルを囲んでのフエルガから始まった。アントニオが自身のルーツであるヘレスとレブリーハのエッセンスを込めたオリジナル曲「パリトロケ」を歌い出す。村人に扮した衣装姿の踊り手たちが集い、彼の歌にソロやパレハで踊って応えていく。活気と生きる喜びに満ちたヒターノの祭りだ。
ゆったりと流れるノスタルジックな旋律を豊かな声量で歌い上げるサンブラ。そこから女性群舞のティエント、そしてタンゴへ。二人のカンテと掛け合いながら代わる代わる楽しそうに踊り、華やかで賑やかな場面。
佐藤がソロで踊るゆっくりしたソレア・ポル・ブレリアのような曲は、コリードというフラメンコが生まれる前に歌われていた古謡だ。シンプルな構成がその曲の素朴な魅力に光を当てる。
鍵田が情感豊かに踊るマラゲーニャは、母を失った悲しみを切々と歌う曲。後半はアバンドラオに転じ、生き生きと生命の躍動を表現した。
男女の群舞による陽気な明るい曲調ロメーラ。権のバタ・デ・コーラや工藤のマントンを使った舞踊技術も華やかさを加えた。
男性群舞のマルティネーテでは、足音も揃いキレの良い踊りを披露。二人のカンテが圧倒的な存在感を示し、会場を大きく包み込む歌声は圧巻だった。
究極の孤独を歌うシギリージャ。アントニオから託された想いを、佐藤が大切に受け取るように踊る。また二人のギターが奏でる、骨太な芯を秘めた繊細な音色にも心を揺さぶられた。
ステージ中央に置かれたマントンを掛けたテーブルを囲んで繰り広げられるブレリアは、まさにカンテのためのスペシャルステージだ。テーブルを叩きながら互いに歌いつなぎ、踊り手たちもパルマやハレオで盛り上げ、とてもムイフラメンコな濃密な時間が流れていく。
ラストは鍵田のソレア。アントニオの歌を全身で受け止めるしなやかで力強い踊り。神々しさすら覚えるその神聖な光景は、舞台の最後を飾るにふさわしい一幕だった。
スペインに生きるロマ民族の歴史は、確かに苦難に満ちた過酷なものであった。しかしそこから生まれたフラメンコという芸術文化が表現するのは、絶望の中でも希望を失わない逞しさや生きる喜び、家族や同胞への愛情といった、純粋な魂の叫びだ。だからこそフラメンコは、それを観る者に勇気や希望を与えてくれるのだろう。
【プログラム】
1.パリトロケ(アントニオ・デ・ラ・マレーナ作)
2.サンブラ ~ティエントイタンゴ
3.コリード(古謡)
4.マラゲーニャ
5.ロメーラ
6.マルティネーテ
7.シギリージャ
8.ブレリア
9.ソレア
【出演】
[主演]鍵田真由美
[演出・振付・構成・主演]佐藤浩希
[カンテ]アントニオ・デ・ラ・マレーナ マヌエル・デ・ラ・マレーナ
[フラメンコギター]マレーナ・イーホ 斎藤誠
[パルマ・パーカッション]アレ・デ・ヒタネリア
[パルマ] 関祐三子
[客演]
矢野吉峰
権弓美
松田知也(小島章司舞踊団)
山本海
鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
柏麻美子
東陽子
工藤朋子
小西みと
中里眞央
小野寺麻佑
山﨑嬉星
辻めぐみ
溝口千恵
三四郎
中根信由
瀬崎慶太
[主催・企画・制作・招聘]
株式会社ARTE Y SOLERA
【ARTE Y SOLERA 公式サイト】
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