第7回関口京子フラメンコリサイタル
(sábado, 13 de julio 2024)
2024年1月27日(土)
Showレストラン・ガルロチ(東京・新宿)
写真/近藤佳奈
Fotos por Kana Kondo
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko
フラメンコ舞踊家の関口京子が、7回目となるリサイタル公演を8年ぶりに開催した。今回の作品は、フラメンコの故郷であるアンダルシア地方へ至る音楽の道をテーマとした「CAMINO DE ANDALUCIA」の2作目。今作ではジプシー(ロマ、ヒターノ)が辿ったと言われるインド、シルクロード、東欧などアンダルシアへと続く地域の音楽に焦点を当てた。
中でも関口が注目したのは、東欧に伝わるジプシー音楽の中で重要な役割を果たしているジプシーバイオリン。それをフィーチャーした舞台にしたいと思い、1年前から平松と曲選びから始め、一緒に作り上げていったという。
(写真1)ジプシーのルーツと言われるインド北部民族の民謡を音楽と踊りで表現
公演は2部制で、前半はジプシーが辿った国々の音楽と舞踊によるステージ。
プロローグでは、ステージ正面のスクリーンに砂漠の風景が映し出される。真っ暗な客席の合間を、黒装束の3人がゆっくりと歩いて回る。フィンガーシンバルを鳴らし、ランタンを手に提げさすらう放浪者たち。場内には海沼が音源を制作したという砂漠を吹く風の音が聞こえ、ドキュメンタリーを観ているかのような臨場感だ。
スクリーンが上がると、ジプシーのルーツと言われるインド北部の民族舞踊が始まる。踊り手たちはインド舞踊で見られるようなラメやスパンコールで彩られたオリエンタルな衣装で登場。ミュージシャンらはナチュラルな白系の衣装で、ラバーバというアラブ遊牧民の民族楽器なども取り入れ、音楽と踊りで賑やかな宴を繰り広げる。
アゼルバイジャンの音楽では、海沼がカヌーンという日本の琴の先祖と言われる楽器でソロを披露。ハープのような音色の中にオリエンタルな響きを醸し出す。
(写真2)ジプシーバイオリンの名曲Ninaのワンシーン
ハンガリーの音楽はジプシーバイオリンの作品が多く、その中から3曲を披露。舞踊曲、歌唱曲、バイオリン曲とそれぞれの曲を、奥濱のマントンやパリージョを使った踊り、川島の素朴で温かみのある歌、そして平松の雰囲気溢れる演奏でハンガリー音楽の豊かな魅力を表現した。
フランスでは当時流行していたジャズをジプシーたちが取り入れて誕生したマヌーシュ(ジプシー)ジャズというジャンルが生まれ、その中から有名な2曲を披露。旅の始まりを連想させる演技シーンや、それぞれの楽器がフリージャズ形式でソロを演奏するなどで当時の雰囲気を表現。また椅子を演出に使っての群舞は独創的で、それぞれの個性も光り統一感があった。
最後のルーマニアの音楽では、海沼がダウルというトルコの大太鼓を抱えてのダイナミックなプレイ。客席も盛り上がり、そのリズムに合わせて手拍子も上がった。
(写真3)海沼がダウルというトルコの大太鼓でステージを盛り上げる
後半の第二部は、旅の終着点アンダルシアを舞台とした本格的なフラメンコステージ。
高野はレバンテ地方の代表曲タラント。自身の得意とするレパートリーでもあり、情感あふれる踊りと女性らしい身のこなしは思わず見とれるほど。
奥濱のシギリージャは力強さとキレの良さが際立ち、独自の美学が細部にまで貫かれていた。終盤はタンゴにスイッチするという構成もユニークで、それがあまりにも自然だったのには目を見張った。
関口はカディスのアレグリアスをバタ・デ・コーラとマントンで披露。笑顔で踊る姿に喜びやうれしさが自然と表れていて、自身の想いにふさわしい一曲であった。
終演の挨拶で、関口は今回の公演を2022年12月に亡くなった恩師の岡田昌巳に捧げたいと語った。
長い時間を掛けて、出演者ひとりひとりが丁寧に作り上げてきた今回の作品。舞踊も音楽もそれぞれにこだわりが光り、あまり聴く機会の無いジプシー音楽の魅力を存分に堪能し、フラメンコという文化の豊かな側面に触れることができた。
【出演】
踊り 関口京子 奥濱春彦 髙野美智子
ギター 今田央
歌 川島桂子
バイオリン 平松加奈
パーカッション 海沼正利
【プログラム】
[第1部]
1. プロローグ ~砂漠の放浪者~
2. インド ~宴・出奔~
Banna Maharo Kesariyo
3. アゼルバイジャン ~郷愁~
Qanun Taqsim
Ay Qiz
4. ハンガリー ~流浪~
Nina
Nora luca
Maneana lui kemal
5. フランス ~融合~
Tchavolo swing
Made in France
6. ルーマニア ~熱狂・旅は続く~
Gypsy sahara
[第2部]
1. タラント 髙野美智子
2. シギリージャ・ポル・タンゴ 奥濱春彦
3. アレグリアス 関口京子
4. フィン・デ・フィエスタ 全員
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