Flamencofan インタビュー
(jueves, 7 de noviembre 2024)
この度自身にとって5年ぶりの大きな公演となる、カデーナフラメンカ創立30周年記念公演『VIVIR EN FLAMENCO フラメンコに生きる』を主催するフラメンコ舞踊家、鈴木敬子さん。本番を今月下旬に迎えるというご多忙な中、これまでの道のりや特別ゲストのギタリスト、ファニ・デ・ラ・イスラの魅力、この公演の見どころなどを語っていただきました。
聞き手/金子功子
Entrevista por Noriko Kaneko
【INDEX】
――スタジオ創立30周年おめでとうございます。これまでを振り返って、今のお気持ちはいかがでしょうか。
「ありがとうございます。カデーナフラメンカというスタジオを作ったのが30年前でした。その前から、スペインにいた時から教える機会はありましたが、日本に帰国したときに「教えてください」という方がいらして、スタジオを借りて教え始めたのが最初です。次第に生徒さんたちが集まってくれるようになり、たくさんスタジオも借りていました。それと同時進行で、当時は自分のリサイタルなど舞台公演も毎年やっていたんですが、28か29歳のときに一番大きな節目として、アントニオ・カナーレスを初めて招聘することになりました。そのときにスペイン人アルティスタも7、8人くらい呼ぶことになって、これはスタジオが無いと思うようにリハができないなと思って。また生徒さんも増えてきたので、自分のスタジオを借りたいとも考えていたんです。その時にちょうど生徒さんで不動産屋に勤務している人がいて、渋谷区富ヶ谷にある物件を紹介してもらいました。賃料は少し高かったけど、床が木だったのでリフォーム代は低く抑えられるかな、と。そういう巡り合わせと、公演を成功させたいという強い気持ちがあって、思い切ってカデーナフラメンカというスタジオを作りました。そのおかげでリハも無事にできて、公演も成功しました。その後もカナーレスを何度も呼んだり、ハビエル・バロンも招聘したり、エル・フラメンコ(現ガルロチ)が呼んだアーティストとは毎回必ず1回は組ませてもらって、スペイン人と共演して自分を鍛えていきました」
――舞踊活動に教授活動にと、精力的に活動を続けられてきました。今のスタジオに移転したきっかけは。
「建替えでの立ち退きの話があって、今のスタジオに移転しました。でもその後はスタジオを維持することが最優先になったので、スペイン人を招聘しての大きな公演はなかなかできなくなりました。自分が主催の公演としては、5年前に上演した25周年記念公演『CARMEN CARMEN CARMEN』が一番大きかったです。大きな公演だったので、文化庁の助成金を申請したりいろいろと大変なことを乗り越えて、この公演も無事に終わったんですが、その2か月後に今度はコロナ禍が始まったんです。生徒さんも来れなくなってスタジオも一時期閉めて…、この4年間はスタジオを維持するのも本当に大変でした。ここ1年前くらいからようやく戻ってきましたけど、それまでの間はどん底まで落ちて、スタジオも閉めようかと追い詰められたりもしました。でも、だからこそやっぱり自分がやりたいのはこれだ、と思って今回の30周年公演に行き着きました。《フラメンコは音楽である》と。自分にできる範囲で、これまでやってきたことを凝縮して舞台を作っていきたいです」
――今回の特別ゲスト、ギタリストのファニ・デ・ラ・イスラとは以前に共演されていますね。
「ファニとは6~7年前、25周年公演の前に舞台で共演しました。当時日本に住んでいたアルバロ(アギラール・デ・ヘレス)の甥っ子で、家系的にもギターの腕前も素晴らしいんですが、日本ではこれまでソロで正式に呼ばれていないんです。CDもたくさん出していて良い音楽を作っているので、ここで日本に紹介したいな、と。同時にまた、平松さんと海沼さん達と私がやっていた曲をギターのパートで加わってもらうことで、今までの集大成ができるのでは、と思っています。彼のギターの魅力は、技術はもちろんですがパワーがあって、作曲する作品にも芯が通っていて、骨太な音楽を聴かせてくれるところです。根本的にフラメンコの土台がしっかりしているので、踊り伴奏も素晴らしいんです。直接聴いてもらうのがきっと一番伝わると思います」
――今回は草月ホールとガルロチ、会場のスタイルを変えて2公演行われます。
「草月ホールでは、大きな舞台でファニの曲での大群舞を見せたいと思いました。ガルロチでは大人数は舞台に乗れないけど、近い距離で臨場感のあるフラメンコを感じてほしいと思っています。それぞれ違う方向から見せたいと思っているので、伴奏形態や音楽もちょっと変えてもらう予定です。また先日決まった話ですが、草月ホールでは歌い手のマヌエル・デ・ラ・クーラが出演します。かつてカナーレスのグループで彼のファミリアを呼んだことがあるので、歌が上手いのは間違いないですから、きっと盛り上がると思います。こんな感じで草月とガルロチとで舞台が変わってくるので、ぜひ2種類を味わってほしいと思います」
――今回の公演についてSNSの動画で、《Bulería del Jazz》という曲で踊られてましたね。
「これは平松加奈さんの曲で、そこにカスタネットを入れて振り付けました、自分のリサイタルで10年前に初めて披露しましたが、今回はさらに深く練り込んで、そこにファニのギターが加わります。平松さん、海沼さん、進藤さんの3人がいないとできない曲なので、彼らの音楽との共演をぜひ楽しんでいただきたいです。プログラムは、最初にプレセンタシオンで《Esencias》というファニの曲を、踊りも入れて全員でやります。群舞は草月が9人で、ガルロチでは3人です。形態はブレリアと最後に少しシギリージャが入って、それに振付を行いました。2曲目はギターソロをたっぷり聴いてもらって、さらに加奈さん達の曲を楽しんでもらって、群舞や私のソロで締めます。後半となる2部は、最初がファニのタンゴの曲で、ブレリア・デル・ジャズ、そしてもう1曲ブレリアをやって、最後はシギリージャでフィナーレとなります。大枠の流れは決まっていますが、音楽の詳細な部分は彼が来日してから話し合うことになります」
――最後に、読者の皆様に一言お願いします。
「かつての公演では、当初ファニの音楽中心のライブに私が加わる形でしたが、その1週間前にアルバロが亡くなり、もう一人お願いしていた歌い手も出演できなくなって、代わりのミュージシャンをお願いしたりと、困難が重なって大変な思いをしたけどやり抜いたライブでした。今回はそういう時期を一緒に乗り切ったメンバーと一緒に《フラメンコは音楽である》というテーマでお届けしたいと思っています。観ている人がワクワクするような、そして終わった後に爽快な気分になるような、そういう舞台にしたいです。ここまで簡単に来たわけではなかったし、いくつもの困難を乗り越えてここまで来ているので、それを全部出して、自分というものを伝えられるように、それがフラメンコなので、本当に大勢の人に観ていただきたいです。草月ホールとガルロチで、ぜひお待ちしております」
*スタジオ創立30周年記念公演のチケット情報などは、こちらをチェック!
【プロフィール】
鈴木敬子(Keiko Suzuki)/フラメンコ舞踊家。高校卒業と同時に渡西しスペイン舞踊全般を6年間学ぶ。20歳でスペインにてプロデビュー。国立劇場でのサルスエラ主演を皮切りに、各地の劇場・タブラオ・テレビ等で活躍。1988年フラメンコ最大の祭典「ビエナル・デ・アルテ・フラメンコ」にソリストとして出演した。帰国後は、スタジオ「カデーナ フラメンカ」を主宰し、同時に公演活動を展開。1993年・1996年アントニオ・カナーレス、1998年ハビエル・バロン等、著名なアルティスタと多数共演する。2011年~2019年にアントニオ・カナーレスと6度の共演を果たす。2019年11月にはスタジオ創立25周年記念公演「CARMEN CARMEN CARMEN」において好評を博す。その他、多くの教則ビデオを出し、テレビ・CM・舞台などにも多数出演。日本フラメンコ協会理事。
[公式サイト]https://cadenaflamenca.jp
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