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アシタ ワタシの『細雪』

  • norique
  • 21 時間前
  • 読了時間: 4分

石井智子スペイン舞踊団公演


(viernes, 25 de abril 2025)

 

2025年2月7日(金)~8日(土)

草月ホール(東京・赤坂)


写真/川島浩之

Fotos por Hiroyuki Kawashima

文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko


1O_2502石井智子細雪_四姉妹

これまで数々の映画やTVドラマ、芝居でも取り上げられてきた日本文学の不朽の名作をテーマに、スペイン舞踊家の石井智子が2日間3回にわたる舞踊団公演を行った。


今回題材としたのは近代日本の文豪、谷崎潤一郎が昭和初期に発表した長編小説「細雪」。この作品世界の中に、石井演じるひとりの日本人の踊り手である「ワタシ」が入り込み、その世界で生きる四姉妹をはじめとする人々の中を旅していくという設定だ。


作品の中心となる四姉妹の役は、石井を始めゲスト出演の舞踊家3名がそれぞれ担当。ソロを踊る彼女ら4人の個性が各登場人物の個性と偶然にもよく合っていて、うまい具合に絶妙な配役だ。

古い因習に捕らわれず自分の主張を大事にする四女の妙子を演じる中島は、自立した近代女性の姿をガロティンではつらつと表現。

三女の雪子役の井上は、言葉にならない苦悩やもどかしい気持ちを内面に抱える姿を、ペテネーラの曲に乗せてマントンを繊細に扱いながら美しく踊る。

二人の妹を優しく見守る次女、幸子役の南風野はアバニコを巧みに扱いながら、優雅で女性らしいグアヒーラを表情豊かに舞う。

そして長女・鶴子を演じる石井は、マラゲーニャ・ロンデーニャやパリージョでのシギリージャなど、強い想いと激しい感情を込めた渾身の踊りを披露した。

2C_2502石井智子細雪_石井ソロ
石井智子のマラゲーニャ・ロンデーニャ

それぞれ違う個性を持つ四姉妹だが、4人による群舞の場面では、息が合った統一感のある美しさを見せた。お花見の場面の風情あるセビジャーナスや、ラストのマントンとバタデコーラで舞ったアレグリアス。各人が持ち味を表現しながらも、揃えるところは揃えて細部まで行き届いたメリハリがあり、何より踊っている彼女たち自身が楽しそうだった。


3F_2502石井智子細雪_群舞
多彩な表現をみせた舞踊団の群舞

見事なソロ舞踊とともにとても印象的だったのが、各場面で登場する舞踊団員の群舞の素晴らしさだ。踊りだけでなく演劇のように台詞や口上も取り入れ、風や旅人に扮してひとつの有機体のようになってその場面を表現する。そこには今回の作品の演出に携わった演出家・加藤直の手腕によるところが大きいのだろう。群舞とはいえソロの存在感に匹敵するような、見応えのある場面を演出した。またフォーメーションのスムーズな展開や構成の豊富さも、舞踊団としての日々の活動の賜物だろう。中でも女中役の3人で踊ったバンベーラは、一体感のある濃厚な群舞を楽しませてくれた。

4H_2502石井智子細雪_3女中
3人の女中の場面

音楽面でも、日本語の歌詞として有名な短歌や、上方で流行したわらべ歌「優女(やしょめ)」を取り入れて作品世界を豊かに彩り、さらに歌い手の井上が得意とする笛の音色や、終章で朱雀が叩いた南米民族音楽の太鼓「ボンボ」の響きも、作品への印象的なスパイスとなった。


初日公演は大盛況の中で幕を閉じた。鳴りやまない拍手が、この作品の大成功を物語っていた。

出演者ひとりひとりの力が足し算ではなく掛け算を超えた相乗効果で、ひとつの素晴らしい舞台作品が誕生した瞬間だった。

5J_2502石井智子細雪_群舞4_月と三姉妹
お月見のシーン

[プログラム]

序章 ワタシ

1. 「細雪」

(ハレオ/マラゲーニャ・ロンデーニャ)

2. 「風」もまた旅をする

3. お花見 -幸子、雪子、妙子 そして鶴子

(セビジャーナス/バンベーラ)

4. 妙子 こいさん

(ガロティン)

5. 旅人「夢」

6. お月見

(ソロンゴ/ティエント)

7. 雪子 -夢は魔法

(ペテネーラ)

8. 蛍狩り

(タンゴ)

9. はるか昔の今

10. 幸子 -ヤショメ(優女)

(グアヒーラ)

11. 鶴子 -冬の旅

(シギリージャ)

12. 旅は無限

(ブレリア/アレグリアス)

終章 ワタシ


[出演]

主演 石井智子(長女 鶴子)

ゲスト 南風野香(次女 幸子)

   井上圭子(三女 雪子)

   中島朋子(四女 妙子)  


石井智子スペイン舞踊団

松本美緒 小木曽衣里子 清水真由美 福田慶子 杉浦桃子 樋口万希子 角谷のどか 梅澤美緒子 藤丸莉沙 藤浪典子 内海ゆかり 鏑木優子


ギター:鈴木淳弘 菅沼聖隆

カンテ:川島桂子 井上泉 遠藤郷子

バイオリン:三木重人

パーカッション:朱雀はるな


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